女性の健康とウェルネス向上のために誕生したフェムテック市場。今年も2月9日から3日間にわたり「Femtech Fes!(フェムテックフェス)」が開催された。4度目の今回は一般来場者が5,000人超、フェムテックプロダクトは23か国から200点以上が出展という最大規模。24企業44名の起業家たちも集結して、これまでにない盛り上がりを見せた。
そんな熱気あふれる会場でSPUR.JPは、“Femtech(フェムテック)”という言葉の産みの親であるイダ・ティンさんと、日本・アジア市場をリードし、フェスの企画運営も行うフェルマータCEO・杉本亜美奈さんを直撃。フェムテック市場の現在地と未来、そして今後フェムテックが私たちにとってどんな存在になり得るのかなど、コロナ禍を経て今回がリアルで初対面というお二人に語ってもらった。※1
※1 本記事は独自取材に加えて「Femtech Fes!」でのトークセッションの内容をもとに執筆
2013年、ドイツの月経管理アプリClue(クルー)をリリース。「フェムテック」という言葉の産みの親。前述した「Clue(クルー)」の共同創業者で前CEO、現会長。
2019年、fermata(フェルマータ)を創業。DrPH/公衆衛生博士。日本医療政策機構にて世界認知症審議会の日本誘致を担当。国内外の医療・ヘルスケアスタートアップへの政策アドバイスやマーケット参入のサポートが専門。
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―― まずはイダさんご自身のことを教えてください。
イダ:私はデンマーク出身の起業家で現在はドイツに住んでいます。もともとはバースコントロールやファミリープランニングに関心があり、2012年に創業し2013年に「Clue(クルー)」アプリをリリース。現在では190カ国以上、1,000万人もの方々に利用されている月経管理機能を持ったトラッキングサービスを立ち上げました。10年ほどクルーのCEOを務めた後、現在は会長として関わっています。
―― 「フェムテック」という言葉を生み出したきっかけについてもお聞かせください。
イダ:2016年に、クルーのCEOとしてサンフランシスコでのテック企業が集う会議に参加したときのことです。女性の健康に関する初のパネルディスカッションに登壇した際、私たちの事業について男性ばかりの投資家たちに説明する難しさを実感したのがきっかけでした。
“女性の身体には健康上の様々な課題があり、それらを解決するために私たちは非常に大きなことをやり遂げようとしている——” そのことを投資家に認識してもらうには、何か橋渡しとなる言葉が必要だと思いました。そこでこの領域のビジネスカテゴリを「フェムテック」と名付け、ウィキペディアに掲載し、商標登録もしました。「会議ではフェムテックと呼びましょう」と男性にも知ってもらい、共通言語にしたかったのです。
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―― お二人はフェムテックの必要性について、どうやって投資家を説得したのでしょうか?
イダ:データ、マトリックス、ユーザーパフォーマンスといった、テック言語を使うことを意識しました。男性の投資家に話すときに“生理”や“授乳”という言葉は使いにくいこともある。そういうときは「“フェムテック”を支援する会社を探している」と訴えた方が伝わりやすいですね。一方で、自分の経験や女性のストーリーも語るようにしました。例えば「月経が重い」「妊娠したい、したくない」など、すべての女性にはストーリーがありますよね。女性の身体のことがわからなくても、感情で理解し合える部分は必ずある。そう信じて、相手が共感してくれるような会話を心がけました。
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―― 続いて現在のフェムテック市場について伺います。以前と比べて規模や一般の認知度は変わってきていますか? お二人にとって今の景色はどのように見えていますか?
イダ:ドイツで創業した2013年頃は「女性の健康に投資をするのはニッチ」と言われていました。それが今では大勢のプレイヤーがこの領域に参加し、投資されていると同時に、女性の健康に特化したファンドや大型IPO(新規上場株式)も登場するなど、急速に拡大してきています。









