女子サッカーは面白い! その魅力を中村憲剛さんら3人が語る

女子サッカーが提示した、私たちの可能性

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2022年7月31日、UEFA欧州女子選手権の決勝戦。イングランド代表はドイツを破り、1966年以来トロフィーを逃してきた「サッカーの母国」の悲願をかなえた。延長戦で決勝点を決めたクロエ・ケリーはシャツを振り回し、スポーツブラ姿でピッチを駆け回った。この写真にはSNSやメディアで「歴史的」「アイコニック」「これは見せるためじゃない女性の体だ、純粋な喜びだ」といった言葉が寄せられる。それは「女性ができること」が鮮やかに提示された瞬間だった。

その前から欧州では女子サッカー人気が年々高まっていたが、コロナ禍を経ても各国リーグや代表戦には観客が集まり、世界中でさまざまな取り組みのもと、熱が高まっている。2023年はワールドカップ・イヤー。長年あきらめずボールを蹴り、このスポーツを愛し、育ててきた人々の成果を、誰もが目にする機会になる。女子サッカーは面白い。そして知れば知るほど、力をもらえる。

だから、女子サッカーを応援してる

なぜ、女子サッカーを支持するのか? 同じプロの立場から、実況・解説の経験から、そして熱いファン目線で。三者三様の着眼点とともに、その理由をガイド

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中村憲剛さん/元男子サッカー日本代表

細やかな技術、一体感と熱量のある戦い

女子サッカーと出合った契機は澤穂希さんです。小学生のときに所属していたクラブの二つ上の先輩。すごくうまくて、その影響で、女子はみんなサッカーが上手だと思い込んでいたほど。澤さんが活躍したなでしこジャパンのW杯優勝はやはり強く印象に残っています。

僕にはサッカーをやっている娘や息子がいますが、男子のカタール大会を観ても、W杯で勝ち進めばプレーしている子どもたちは、あそこに到達したいと願うようになるもの。その途上としてWEリーグができ、プロ化したことは少女たちにとって非常に大きな前進です。僕もJリーグがあったからプロを目指せたし、きっと彼女たちもWEリーグを目標にするようになる。ただ、僕が見る限り少女サッカーと少年サッカーはまだ並列ではないのが現状。それはサッカーをやりたいという少女が少ないせいもある。数が増えれば、受け皿になるチームもできていくんじゃないかな。
近年は浜野まいか選手や長野風花選手など、海外に出るプレーヤーも増えています。今、欧州の女子サッカー人気が沸騰していて、立ち位置もぐんぐん上がっているから、WEリーグを経て海外へという流れは今後も続くはず。日本もレベルアップしているのは間違いないけれど、選手の質以外の部分、リーグの集客や運営、メディア露出の面などはまだまだなので、世界と比較しすぎず、こつこつ続けていく段階ですね。
日本の女子サッカーの魅力の一つとして、先日娘のサッカーを観に行ったときに感じたのは、技術力の高さ。WEリーグを観てもテクニックの細やかさをすごく感じます。海外のクラブでも、日本人はテクニカルな選手が重宝されている。やはりそこは武器だと思うので、引き続き磨いていくべきですね。

もう一つは、W杯で優勝したときのチームが僕には印象的で、あのメンバーには一体感があった。限界を超えて走ったり、負けるかもしれないけど球際で強く当たりに行ったりと、泥臭く戦う選手に胸打たれた人は多かったと思います。サッカーにはそういうひたむきさという魅力もある。スポーツは全力で立ち向かっている姿に胸打たれるもの。W杯では貪欲に勝ちを求める姿、一体感のある熱量に満ちた戦いを期待しています。

中村憲剛 KENGO NAKAMURAプロフィール画像
元男子サッカー日本代表中村憲剛 KENGO NAKAMURA

1980年生まれ、東京都出身。中央大学卒業後、2003年に川崎フロンターレ入団。ワンクラブマンとして18年間プレーし’20年、現役引退。’10年に南アフリカW杯に出場した。現在はサッカーに携わる仕事をしながらS級ライセンス取得に挑戦中。

西 達彦さん/アナウンサー

競争力が上がり、コンテンツとして面白い

欧州ではスペインとイングランドで女子サッカーに投資する意識が高まっています。たとえば、イングランドのマンチェスター・ユナイテッドは、歴史ある超名門クラブですが、女子チームはWSL(ウィメンズ・スーパーリーグ)に2019年から参加したばかりの新興組なんです。でも女子サッカーに投資を始めて、上位の3強に食い込んでいる。それによって同じ地域の対抗戦、ダービーにも熱が入り、人が集まる。そういう変化が間違いなくあります。

長谷川唯選手がマンチェスター・シティに移籍した背景にも、競争がある。海外から戻った先駆者で紹介したいのは、大滝麻未さんと安藤梢さんですね。大滝さんは産休から復帰してアスリートであり続けるロールモデルであり、FIFAマスターも修了。安藤さんは40歳で現役バリバリで、しかも筑波大学の助教。浦和レッズでセンターバックの怪我人が続出したときにはなんと彼女が務め、攻撃的な選手がディフェンダーとして結果を出したんです。
女子リーグが社会を変えていく部分は確実にありますね。WEリーグはチームの参入基準に女性登用を義務づけていますが、映像の現場でもその意識は浸透しています。歴史的に女性はレポーターで男性が実況という時代が長く、それを前提とした暗黙の了解が女性の実況への進出を阻んできた側面もあります。ただ、今はWEリーグでは女性実況者の割合が多くなっています。審判でも、フランスにはステファニー・フラパールというパイオニアがいて、普通に男子のリーグアンで笛を吹いている。暗黙の了解を疑い、前提と行動を変えれば、それが普通になっていくはずです。

西 達彦 TATSUHIKO NISHIプロフィール画像
アナウンサー西 達彦 TATSUHIKO NISHI

1976年生まれ、神奈川県出身。北海道大学法学部卒業。旅行代理店、コミュニティ放送局勤務を経て、ボイスワークス所属。サッカー、プロ野球、ラグビー、格闘技などで多岐にスポーツ実況を担当。DAZNで欧州女子サッカーを実況している。

三原勇希さん/タレント、ラジオDJ

女子の試合こそ、現場で観てほしい

最初は仕事がきっかけです。埼玉のラジオ局、FM NACK5の番組で毎回、浦和レッズと大宮アルディージャの試合結果を伝えるのですが、「勝ちましたね〜」と何気なく言っていたら、ある日SNSで浦和レッズのサポーターが「泣いた」とポストしていて。一回の試合で勝って泣くほどなんだ、私の伝え方じゃ全然ダメだと思い、より真剣に試合を観始めたんです。
コロナ禍もあり、1年たってやっとスタジアムに行ったときには、そこに選手がいるだけで「きゃーっ!」って、興奮が湧き上がりました。こんなにサッカーが好きになっていたんだ、と。WEリーグの埼玉ダービーにも行きました。女子こそ、現場で観たほうがいい。ラフプレーが少ない分、パス回しや戦術も見やすい気がします。男子選手に「かっこいい」と感じるのとはまた違う、キュンとした気持ちも生まれて(笑)。

私の推しは浦和レッズレディースだと清家貴子選手と猶本光選手。大宮アルディージャVENTUSでは、スタンボー華選手にひと目惚れしました。仲田歩夢選手はリーグについてSNSで発信しているところも素敵。海外ではミーガン・ラピノー選手が社会的な発言をしていたり、WEリーグでもチェアが「日本のジェンダー平等を前に進める、覚悟のリーグです」と明言していたりと、単純にプレーが面白いだけでなく、女子サッカー界の意志にも共感しています。
今はWEリーグ友達が欲しいな。W杯も楽しみですね。サッカーを観始めてから最初のW杯だったカタール大会も面白さが全然違ったので、夏に向けて女子の代表選手をもっと知りたいです。

三原勇希 YUKI MIHARAプロフィール画像
タレント、ラジオDJ三原勇希 YUKI MIHARA

大阪府出身。雑誌『nicola』モデルとしてデビュー。現在は音楽、映画、スポーツ、ライフスタイルと多彩に発信し、ラジオパーソナリティや番組MCを務める。NACK5「N-FIELD」などに出演中。共著『令和GALSの社会学』(主婦の友社)を出版。

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