2026.09.28

「セックスセラピー」では何をする? 性の悩みの約7割はセックスレス。費用やカウンセリングの流れを専門医に聞いた

友人や家族、ときにはパートナーにも話しにくい性の悩み。セックスレスや性交痛、性欲の低下といったモヤモヤに向き合う場として、「セックスセラピー」が少しずつ注目を集めている。けれど、その実態はまだ広く知られているとは言い難い。
そこで今回は、Netflixオリジナルシリーズ『SとX』の医療監修を務めた木村将貴先生に、「セックスセラピー」の役割やカウンセリングの内容、通院回数や費用についても聞いた。

▶︎Netflixオリジナルシリーズ『SとX』 詳細はこちら

友人や家族、ときにはパートナーにも話しにくい性の悩み。セックスレスや性交痛、性欲の低下といったモヤモヤに向き合う場として、「セックスセラピー」が少しずつ注目を集めている。けれど、その実態はまだ広く知られているとは言い難い。
そこで今回は、Netflixオリジナルシリーズ『SとX』の医療監修を務めた木村将貴先生に、「セックスセラピー」の役割やカウンセリングの内容、通院回数や費用についても聞いた。

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INDEX
「セックスセラピー」では何をする? 性のの画像_1

▼お話を伺ったのは……

木村 将貴先生プロフィール画像
セックスセラピー「カウンセリングルーム Esolve」代表 性機能専門医木村 将貴先生

泌尿器科専門医・指導医/生殖医療専門医/医学博士/セックスセラピスト。弘前大学医学部医学科を卒業後、現在は男性不妊や性機能を専門とする泌尿器科医師として、杉山産婦人科生殖医療科に勤務。また、帝京大学医学部泌尿器科非常勤講師として男女の様々な問題にアプローチしている。自身が代表を務める「カウンセリングルーム Esolve」では、セックスセラピストとして、さまざまな性の悩みに医学的アプローチで応えている。

「カウンセリングルーム Esolve」公式サイト

1. 「セックスセラピー」とは、有資格の医師や臨床心理士が行う性治療のこと

──まず、「セックスセラピー」とはどのようなものでしょうか?

日本性科学会が認定した「セックスセラピスト」の資格を持つ者が、性的な悩みに対して、医学的なアプローチを用いて解決を目指す性治療のことです。

「セックスセラピスト」は、医師や臨床心理士といった医療的な専門資格を持つ人のみが取得できる資格で、日本性科学会の研修を受講し、症例報告を発表するなど、資格を取るまで5年以上学ぶ必要があります。現在は、日本に32名のセックスセラピストがいて、私もそのうちの一人です。

▶︎日本性科学会に認定されているセックスセラピスト一覧はこちら

2. 性の悩みを整理して分解し、望む性生活を目指す

──どのような悩み相談が多いですか?

性欲の低下や勃起不全、性交痛など原因はさまざまですが、約7割が「セックスレス」に関する悩みです。私たちの「カウンセリングルーム Esolve」にいらっしゃる方の男女比は同等くらいで、お一人の方だけでなくカップルでいらっしゃる方もいます。

私自身としては、セックスセラピーはもっとカジュアルであるべきという思いがあるので、どんな些細な悩みでも相談してもらいたいです。とくに「パートナーと行為をしたいのにできない」または「セックスをしているが望み通りではない」という悩みに応えることが、セックスセラピーの意義ではないかと考えています。性機能の問題なのか、心理的な要因なのかを見極め、性の悩みを整理することで、望む性生活を送れる人を増やしたいと考えています。

カウンセリングルームEsolveの室内の様子

実際に「カウンセリングルーム Esolve」のカウンセリングルームに伺い、お話を聞いた。木目調のランプシェードによるあたたかな光で、自然と心が落ち着く空間だった

──実際には、どのような治療を行うのでしょうか?

悩みによってさまざまですが、ベースは行動療法と心理療法、科学的指導の三位一体でアプローチします。私たちの場合は、対話をしながらクライアントの悩みの背景を探り、行動療法をもとにしたオリジナルの性機能改善プログラムをメインに行います。診療を進める中で、心理カウンセリングをするなど、それぞれの悩みと背景に合った適切な指導をしています。相談内容によっては、より適切な治療を受けられる専門機関をご紹介することもあります。

──相談者が安心して話をできるように、どのようなことを大切にされていますか?

プライバシーを守ることは大前提として、日本性科学会の倫理規定にのっとって、相手を利己的に利用しないことが第一です。無理に性的な関係を結ぶための知識を教える場所ではありませんし、我々もクライアントに対して性的に誘導したり身体に触れたりしない。
一口に“セラピスト”と呼ばれる人の中には、国家資格を持つ医療・心理の専門職もいれば、資格要件のない民間サービスの従事者もいます。そのため、相談先を選ぶ際は、「セラピスト」という肩書だけでなく、資格の有無や専門性を確認することが大切だと思います。

カウンセリングルームEsolve 本屋CDの棚の様子

リラックスして話をできるよう、部屋の中はウッディな香りに。棚には、カウンセリング中に流すCDや、参考図書がずらりと並ぶ

──カウンセリングルームにはどのようなこだわりがありますか?

他者に聞かれたくない非常に個人的な話をしますので、安心して話せる空間を作ること。大きな病院の一角ではなく個室にして、外に声が漏れない安全性の高い部屋を用意しています。クライアントがリラックスした状態で話していただけるように、音楽をかけることもあります。心地よく過ごせるような音響にこだわり、家具はグリーンのソファに暖色系のライトで揃えました。

機密情報のため住所を公表していないので、クライアントの中には「ここに来るまで不安でした」という方もいて。セックスセラピーの扉を叩くのは、相当勇気が必要なことだと私自身も思います。海外ではセックスセラピーという文化が浸透していますが、日本だとまだまだなので、もっと浸透させて気軽に来られるようにしたいです。

──日本に暮らす人々がセックスに関する悩みを抱え込みやすいのは、なぜだと思われますか?

性にまつわる「これが好き」「あれは嫌」といったセクシュアリティを話す機会や習慣がないですし、そもそも自分のセクシュアリティがどんなものなのか、自覚もあまりないですよね。性に対して興味がなくても、パートナーと関係性を持ててしまう。

欧米圏の場合は、人と人が関係を構築するリレーションシップの根幹にセクシュアリティの開示や共有があります。そのため関係を維持していく過程で問題が起きたら、セックスセラピーを受けるのは自然な流れです。日本だとそうはならないので、性について話せる場がなく、自ずと性の悩みを抱え込みやすいのだと思います。

3. 予約からカウンセリングの流れ、費用に期間まで。セックスセラピーの全体像

カウンセリングの内容や流れは、悩みに応じて異なるもの。Netflixオリジナルシリーズ『SとX』でも、さまざまなスタイルのカウンセリングが見受けられた。ここでは、「カウンセリングルーム Esolve」での基本的なセックスセラピーの流れを紹介したい。

「SとX」出演時の中島健人さん Netflixシリーズ「SとX」独占配信中

Netflixシリーズ『SとX』では、中島健人さんがセックスセラピスト役を熱演した (Netflixシリーズ「SとX」独占配信中)

①予約後、カウンセリングまでにアンケートに回答

──ウェブの相談・予約フォームから予約をしたあとは、カウンセリングまでどのような準備が必要になるのでしょうか?

受診前に、アンケートに答えていただいています。カウンセリングが90分という限られた時間になるので、有効に活用するために、年齢やパートナーの有無、ピルの服用、性行為の頻度や性交痛などを事前にヒアリングします。Esolveには男女ともに複数のセラピスト・カウンセラーが在籍しており、最初にウェブのフォームに記入いただいた内容を加味して、担当のセラピスト・カウンセラーを決定。その担当者よりアンケートをご案内しています。

プライバシーに関わることなので、話したくないことは事前に相談してもらって構いません。気兼ねなく話していただけるように、そしてプライバシーを守るため、セックスセラピーの承諾書を事前に取り交わしています。

──漠然と性について悩んでいて、アンケートに答えられないという方もいらっしゃいますか?

いらっしゃいます。そのため、例えば「セックスレス」といっても原因はさまざまなので、よくある原因を並べてチェックボックスに印をつけてもらっています。なるべく答えてもらいたいですが、任意回答なので答えられる範囲での回答で大丈夫です。

②オンラインでのカウンセリングも選択可能

──カウンセリングは、オンラインでもできますか?

日本全国から相談が寄せられるので、オンラインと対面、どちらも選んでいただけます。受診はひとりでもカップルでもOKですが、僕のおすすめは対面かつカップルでの受診です。メインの取り組みである行動療法は、ふたりでスキンシップをしながらステップを踏んでいくので、カップルでの受診が一番効果的だからです。ただ、パートナーにオープンに話せないという方は、まずひとりで来ていただいています。

「セックスセラピー」では何をする? 性のの画像_5

③カウンセリングはまず、自分のセクシュアリティを見つけるところから

──どのようにカウンセリングは進んでいくのでしょうか?

初回ではアンケートをもとに、さらに詳しく聞いていきます。どんな生活をしているのか、パートナーとはどういう関係か、仕事やプライベートといった生活状況から性機能や性行為の話まで。

必ず聞くのは「自分のセクシュアリティをどう思っていますか?」という質問です。パッと答えられない方が大半ですが、自分の性について何が好きで嫌いなのか、カウンセリングをしながら紐解いていき、最終的に「性生活の目指すところ」を決めます。そして、相談内容に合わせて行動療法を提案し、進捗を確認しながらステップを進めていきます。

──以前「気乗りしないセックス」の記事で、行動療法の大まかなステップを教えていただきました。あらためて、どのような方法があるのか教えてください。

具体的な行動療法の一つに「カップル用行動療法」というものがあります。スキンシップからはじまり、ペッティング、性器同士のスキンシップ、挿入という段階を踏みながら関係を構築するためのものです。

細かな目標を設定してスモールステップで進めていくことで、性的な不安が解消されるようにしています。うまくいったからといって、約束を破ってステップを飛ばしてしまうと、また機能不全に陥って性的不安が悪化することもあるので、順番をきちんと守ってもらっています。

④一人でカウンセリングを受けた場合

──カップルではなく、一人で受診した場合はどういう流れになりますか?

いずれかのタイミングでカップルカウンセリングを受けてもらうか、カウンセリングでの内容をパートナーに共有していただきます。とはいえ相手に話すのが難しいという方もいらっしゃるので、その場合はお悩みに関係する性科学的な知識をお伝えすることも。性機能障害の原因と対策を知るだけでも、心配事が解決することもあります。

──カウンセリングの頻度や費用を教えてください。

回数は人によりますが、平均2〜3回です。中には1回目で悩みが解消して終わった方もいらっしゃいます。軽度な勃起障害だと1〜2回で終わり、挿入障害だと時間がかかることも。頻度は2ヶ月に1回ほどですね。料金体系はHPに明記していますが2026年9月現在、Esolveでは対面セッション1回(90分)15,000円、オンラインセッションは1回(45分)7,000円です。

──どのような目安でカウンセリングは終了するのでしょうか?

決めてもらった「性生活の目指すところ」によりますが、例えば性交痛があり、パートナーがしたくてもできない場合。共通のゴールは性交できるようになることかもしれませんが、手前の目標としては、まずふれあいを持つことや、ボディータッチングになります。細かなステップでそのような取り組みを重ねて、性的な不安がなくなり、自然と身体が反応できるようになったら、最終ゴールが近くなります。

できれば問題を解消してカウンセリングを終えたいのですが、中にはセックスがうまくいかないことで別れる方も。私としては、目の前の人と向き合わずして別の人にいく前に、二人が歩み寄るための手法としてセックスセラピーを気軽に活用してもらいたいです。