中島健人「今このタイミングで『SとX』をやってよかった」
──まず、完成した作品をご覧になって、改めてどんなところに魅力を感じましたか?
中島健人(敬称略、以下中島)「僕がセックスセラピストという役のオファーをいただいた時点で、すごく驚きはあったんですね。いざ脚本を受け取ってみたら、決して刺激的な内容というものではなくて、自分自身をどう愛したらいいのかだったり、他者に対してどういうふうに気持ちを伝えればいいのかということが、脚本にしっかりと描かれていて。それを画にして、僕と優子ちゃんの二人でこのドラマの世界を歩んでいる映像を見たときに、今このタイミングで僕自身も俳優として『SとX』という作品をやってよかったなと、改めて感じました」
新木優子(敬称略、以下新木)「出演のお話をいただいて原作を読んだのですが、本当に面白くて。センシティブな内容ではあるものの芯が通っていて、誰もが抱える悩みや、心の中では感じていてもなかなか表に出せない感情が描かれているんです。とても読みやすく共感しやすいですし、ストーリーだけでなく、人と人との関わり合いや支え合いの大切さを描いている作品だというのが印象的でした。
これが映像になったらどうなるんだろうという、漫画の一ファンとしての楽しみな気持ちから入りました。さらに、霜鳥先生を中島さん、ケンティーが演じると聞いて、すごく面白い作品になりそうだなという安心感もありましたし、この作品に挑戦してみたい、一緒に作っていきたいという思いになりました。原作ファンとして完成した映像を見られるのも楽しみでした」
──中島さんは、脚本からどのようなことを感じましたか?
中島「僕自身が脚本を見て思ったことでもあるし、一人の人間としても、セックスってその人の人生そのものを表すものだと解釈していて。自分の愛し方だったり、誰かの愛し方だったり、自尊心だったり、いろいろなものが『SとX』の脚本にはしっかり含まれている。それを霜鳥壱人として一人ひとりと対話していって、答えに導くというよりも、導いていくプロセスというものが、セックスセラピストという職業の美しいところなんだなと脚本を読んで感じました」
「聞くこと」を大切に。中島健人がセックスセラピスト役で意識したこと
──お二人はそれぞれ共感する部分や、役作りではどんなことを意識しましたか?
中島「やっぱり聞き馴染みがないんですよね、セックスセラピストって。僕自身も、配信されるまでいろいろな方に『セックスセラピストとは』ということを説明する日々を過ごしているんですけど(笑)。
セラピストは対話が大事で、そこに来るクライアントの方の“セックスという言葉のフィルターの中にある本音”をどうくみ取っていくかということが大切だと思って。俳優として『聞くこと』を、霜鳥壱人を演じるうえではかなり意識しました。
実際、僕自身も誰かの話を聞く機会が結構あるんですね。答えを出したり、何かを断定したりするというよりも、セックスに対して悩むことは別に特別じゃないというか、ある種もっとカジュアルにしていきたいなと、脚本に対しても、演じるうえでも思っていました。
相手の話を、台詞ではあるんですけど、ちゃんと相手の目を見て、顔を見て。でもずっとじっと見るのではなく、とにかく話を聞いて、柔和な空間を作るということを意識していました」
新木「私はアナウンサー役ということで、まず発音の練習だったり、早口言葉の練習だったり、皆さんがアナウンサーになるためにやっている基礎から教えていただきました。
普段からお芝居をするうえでも意識してきましたが、お腹からの発声だったり、腹式呼吸を意識するポイントだったり、滑舌、語尾の落とし方、濁音の出し方だったり。本当に細かいテクニックを一から学ばせていただいて。すぐにできるものではないんだなと。コツコツと積み重ねるものなんだなと実感しました。
講習会というより新人研修のような雰囲気で、久しぶりに学校で学ぶ生徒に戻ったような感覚になり、それも新鮮で楽しかったです。何より、撮影現場で監督に『ちゃんとアナウンサーになってたよ』と声をかけていただけたときは本当に嬉しくて。自分では、積み重ねてきたことがどう映っているのか実感できていない部分もあったので、その言葉に励まされました」
実際のセックスセラピストから学んだ「何でも話せる空間」の作り方
──中島さんは、実際のセックスセラピストの方から学んだこともあったそうですね。
中島「実際にセックスセラピストの方は、日本にはまだそんなに多くいらっしゃらないんです。今回監修してくださった先生にご協力いただいて、カウンセリングの空気を味わいたいということで、実際にセラピストの方と監督がカウンセリングしているところを目の前で見ました。
やっぱり相手の話を聞くときに、ずっと目を見るわけではなくて、ときどき視線をそらしたり。安心できる空間を作るために、腕を組むのではなく、腕を開いて『何でも話していいよ』という姿勢を見せる。そういうことを実際のセックスセラピストの方から学びました」
──オープンな雰囲気を作るのは、実際難しそうですよね。
中島「そうなんです。特に性に関することは、日本の中でまだおそらく自己開示できないんですよね。でもこの作品によって、セックスというものがカジュアルに話せるようになったらいいなと思いました」
初共演で発覚! 新木優子の“シール交換”に中島健人も仲間入り⁉︎
──今回お互い初共演ですが、共演する前と後で、お互いの印象に変化はありましたか?
中島「もちろん同世代なので、昔から優子ちゃんのことは知っているんですよ。でも、バラエティで一度お会いしたくらいだったよね。やっぱり外見的に、クールなイメージじゃないですか。でも、めっちゃシール帳やってました(笑)」
新木「うわー(笑)」
中島「僕の中でパリジェンヌなイメージなんですけど、めっちゃシール帳やってました(笑)」
新木「作品に入ってから、ちょっと無になりたいとか、何も考えないで真っさらな気持ちになりたいときに、無心でシールを貼り替える時間がメディテーションみたいな感じですごく楽しくて。何も考えずに目の前のものに没頭できる時間がよかったんです」
中島「結構分厚めの、肉厚なシール帳が毎回現場に存在していて。『じゃあケンティーもやってみる?』って誘われて。『え、いいの?』って(笑)。シールブームだから、探したんですけど店舗にはどこにもなくて。ネットで『残り1個』みたいなのを買ったんですよ」
新木「そうだったんだ(笑)」
中島「それで『次の現場で交換しようね』と言っていたから持っていった日に、優子ちゃん、シール帳を忘れてたんですよ」
新木「(笑)」
中島「そこが最後の日だったから、次いつ会えるかもわからない。僕のしずくちゃん(のシール)が泣いてました(笑)。しずくちゃんはずっといますよ。誰とも交換せずに。僕の書斎にずっと眠ってます。この悩み、誰かに聞いてほしいです」
新木優子が語る中島健人。「信頼できて、安心してついていける」
──新木さんから見た中島さんはいかがでしたか?
新木「私自身もずっとテレビで拝見していましたし、私も10歳からこの芸能界にいるんですけど、私が入るよりもずっと前から第一線で活躍されているイメージがあって。どこでもプロフェッショナルというイメージが本当にありました。
だから『人間味がどれくらいあるんだろう?』というのをすごく楽しみにしていたんです(笑)。でも本当にプロフェッショナルなところはずっとプロフェッショナルで、作品に対する向き合い方や姿勢だったり、現場での立ち振る舞いだったり。『やっぱりケンティーだ』と。
初めて会ったときから『ケンティーって呼んじゃおう』というくらい、私の中のイメージともマッチして、この方はすごく信頼できて、安心してついていける方なんだなという印象がありました。
それでいて自然体で、私の好きな趣味にもナチュラルに参加しようとしてくれたり。佑美と霜鳥先生との関係性っていうのも、昔ちょっと気持ちがお互いにあって、それでも離れなきゃいけないという人間関係があって。でもまた再会するという。
そういった関係性を深めていった方が、よりよくなっていくような作品だなと思っていたので。そういった関係性を率先して作ってくれて、作るというか、ナチュラルに進めていってくれたなと思います。そういったところも、ちゃんと『しずくちゃんが泣いてます』っていうところも、内側に留めておくだけでなく、こうやって砕けた感じで(笑)」
中島「言わないと心の中がずっと湿ったままなので(笑)。今日たぶん持ってきてないですもんね?」
新木「持ってきてない(笑)。え、持ってきてるの?」
中島「そりゃ持ってくるって言わないと持ってこないですよ」
新木「次会う機会があったら」
中島「インターナショナルプロモーションのときかな」
新木「そうですね。まずシール交換をしましょう」
「恋愛にはいろいろな形がある」。心に残ったエピソードとは?
──お二人が特に印象に残っているエピソードは?
中島「第2話ですね。『推しとセックスできませんか?』という、二次元のキャラクターに恋をしていて、リアルな恋愛がちょっと苦手という方のお話です。
恋愛にはいろいろな形があるんだと、逆に教えてもらった気がします。恋愛の対象が人間以外にあるということも、この時代では当たり前だと僕は思うので。
もちろんセックスというものは人と人で行われていくものだけれど、推しとしっかり心を通わせることで、自分の心の充足感みたいなものが生まれてくるんだなと。新たな恋愛の形を教わった気がしました」
──新木さんのお気に入りのシーンは?
新木「霜鳥クリニックで働く3人の空気感と、やり取りと、関係性が本当に好きです。もちろんセラピーをしているシーンにも霜鳥先生らしさが出ていて好きなんですけど、霜鳥先生って一風変わっているところがあるというか、ちょっと抜けているところもあったりして。
周りのみんなが支えながらも、それぞれに個性があって、悩みがあって。セックスセラピストのいる霜鳥クリニックということで、周りから少し不思議な目で見られている立ち位置でもあるけれど、その仕事を3人がすごく真剣に、なくてはならない大切なものとして捉えて奮闘している姿もジーンとします」
「悩んでいることは特別じゃない」。『SとX』から届けたいメッセージ
──最後に、この作品を通して視聴者にどんなメッセージを届けたいですか?
中島「重複するんですけど、セックスに対して悩んでいることは別に特別なことじゃないというか、誰しも一人ひとり、性に対する考え方や悩みは存在していると思うんです。
でも、性というテーマはどうしても触れづらい。僕たちが俳優として『SとX』をやることに何か意味があるとしたら、僕らやこのドラマを通して、セックスに対する見方を、触れづらいものではなく、もう少しカジュアルなものにしていけたらと思っています。
そうすると、もっといろいろな方が人生を生きやすくなるかもしれないし、誰かに話しやすくなるかもしれない。もちろん、誰かに話さないままでも全然幸せになれると思うんです。開示しないままでも。
ただ、少し開示することで肩の荷が下りるのであれば、悩みに対してずっと考えている時間が長いのであれば、どこかに自分が息抜きできる場所がきっと必要だと思う。このドラマが、ちょっと心が重いなと思っているいろいろな方に伝わってほしいです」
新木「本作を通して感じたのは、人と人とのコミュニケーションだったり、人との関わりや支え合いがすごく大切だということです。一人で生きていけないというか、一人で悩むのではなくて、誰かと一緒に解決していくことでどれだけ救われるのかというのを実感しましたし、霜鳥先生みたいにずっと聞いてくれる人の存在が、悩みを抱えている人にとって救いになるんだなと思いました。
(作品の中で)霜鳥先生も言っていますが、『セックスに悩んでいない人なんていませんから』。本人にとってはすごく大きなことだったとしても、意外と話して相談してみたら、すぐに解決できるような小さな悩みだったりもする。
自分の中で大きくなる前に、誰かに話してみる勇気を与えられるような作品になったらすごく嬉しいなと思っています」
中島健人「作品を見たあと、きっと誰かに優しくなれる」 新木優子「誰かに話してみる勇気を与えられる作品に」
──最後に、世界配信を控えた今の気持ちと、メッセージをお願いします。
新木「世界に配信されるということで少し緊張しています。去年の夏、本当に暑い中、スタッフの皆さん、キャストの皆さんと一丸となって撮影しました。
些細な悩みであっても、決して些細ではなく、その人にとっては大きな悩みだったりする。そういう一人ひとりの悩みに寄り添って、真摯に向き合いながらコツコツ頑張っていく霜鳥先生の姿を見て、私自身もすごく勇気をもらいました。
見てくださる皆さんにも、そういう気持ちになっていただける作品になっていることを願っています。たくさんの方に届いて、見ていただけたら嬉しいです」
中島「性に対する悩みは、世界共通のテーマだと思っています。僕自身も俳優として、この作品に真正面からしっかり向き合いました。
一見するとセンシティブな内容に思われるかもしれませんが、僕というフィルターを通して、性に対する悩みが少しでもカジュアルになって、誰かに話しやすい世界が生まれたらいいなと思っています。
刺激的なタイトルではありますが、中身は本当に優しいドラマです。セックスという非常にプライベートなテーマのその先にある、自分自身の愛し方だったり、誰かの愛し方だったり、そういうものをこの作品を通じて皆さんに伝えていけたらと思っています。
作品を見たあと、きっと誰かに優しくなれる。そんな作品です。ぜひこの作品が世界中に広がっていったら嬉しいです」
Netflixシリーズ『SとX』
麻生みことによる同名漫画を原作に、セックスセラピスト・霜鳥壱人(中島健人)と、中学時代の同級生で初恋の相手・市之瀬佑美(新木優子)を中心に、性の悩みを通して「愛すること」に向き合う大人たちを描くヒューマン・ラブストーリー。
2026年8月20日(木)よりNetflixにて世界独占配信。