2026.08.14

茨木のり子さんの詩を読む、終戦記念日

太平洋戦争が終結して、81年目の夏です。実際に戦争を体験した人が紡いだ言葉に触れようと思い、茨木のり子さんの詩やエッセイを読み返しています。

太平洋戦争が終結して、81年目の夏です。実際に戦争を体験した人が紡いだ言葉に触れようと思い、茨木のり子さんの詩やエッセイを読み返しています。

INDEX

『茨木のり子集 言の葉』全3巻

『茨木のり子集 言の葉』全3巻

『茨木のり子集 言の葉』全3巻(筑摩書房)

戦時中の軍国主義教育に洗脳され、皇国少女だった茨木さんは、戦争で青春を失い、19歳で敗戦を迎えました。戦後、価値観が180度転換するなかで詩を書き始め、その後半世紀以上にわたる創作活動の中で発表した詩は、数百編にのぼると言われています。

茨木さんの詩が多くの人に愛され続けるのは、どの作品も凛として力強く、それでいて温かいからだと思います。社会に対する鋭い批判を内包しながらも、優しさとユーモアにあふれ、読むたびに励まされる。生きる希望が湧いてくるものばかりです。

『茨木のり子集 言の葉 2』の裏表紙

「わたしが一番きれいだったとき」(1957)「自分の感受性くらい」(1975)「倚りかからず」(1999)などの名作もさることながら、終戦記念日を前にあえて一編をあげるとすれば、「それを選んだ」をセレクトしたい。

「退屈きわまりないのが/平和」と始まるこの詩には、平和を維持することの難しさが綴られています。「フレッシュに持ち続けてゆくのは/難しい/戦争をやるより/ずっと」と続き、「けれど/わたくしたちは/それを/選んだ」と結ばれます(出典:宮崎 治『茨木のり子全詩集 新版』、岩波書店、2025)。この最後の言葉に心が奮い立たされると同時に、平和とは当たり前にあるものではない、と突きつけられます。

私たちは、平和を選んだ

茨木のり子さんの詩集『自分の感受性くらい』の書影

茨木のり子『自分の感受性くらい』(岩波書店)

日本は80年以上戦争をしていない「平和国家」だと言われていますが、私たちはこの先もずっと「戦後」と言い続けられるでしょうか。気がつけば世界中で、戦争や侵略が当たり前のように行われています。「戦争をやめよう」「命を守ろう」「差別をなくそう」といった当たり前のことを、これまで以上に強く訴えなければならない時なのではないかと思います。

「戦争をやめろって、今日本は戦争をやっておりません。平和国家としての歩みを戦後ずっと続けてきたのは日本国の誇りでございます」と、為政者は言いました。確かにその通りです。でも、それじゃあ日本が戦争をしなければ、日本さえ平和なら、それでいいのでしょうか。個人的には、その言葉に悶々としてしまいます。

8月9日の長崎の平和祈念式典で、被爆者の本村チヨ子さんはこうおっしゃいました。

「あの日から81年、被爆当時は焦土と化し、動くものは何ひとつなかったここ浦上の丘一帯も見事な復興をとげました。一見平和な光景ですが、一方世界はどうでしょうか。新聞やテレビでは、毎日のように争いのニュースが絶えません。ロシアとウクライナの戦争は、いまだに終息が見えません。こうした国々の指導者の方々には、毎日の暮らしにあえぐ人々の姿が目に入らないのでしょうか。幼い子が泣きながら裸足でさまよう姿が見えないのでしょうか。祖母の命と引き換えに81年間、十字架を背負って生きてきた私の記憶は、ただの昔話なのでしょうか」

広島平和記念公園内に飾られている折り鶴

毎年8月になると、「広島では約14万人、長崎では約7万人が亡くなりました」と伝えられますが、人の死を数で表すだけでいいわけがありません。犠牲になった一人ひとりに人生があったことを、物語があったことを、私たちは絶対に忘れてはならないと思います。戦争を生き残った人たちの語りを直接聞くことのできる今だからこそ、耳を傾け、対話し、受け継いでいかなければならないのだと思います。

茨木さんの「内部からくさる桃」(1954)という詩に、「内部からいつもくさってくる桃、平和」という一行があります(出典:『茨木のり子集 言の葉 1』、筑摩書房、2010)。平和は一人ひとりの心で守るものだという、茨木さんからの警鐘のメッセージだと受け取っています。

2026年度の日本の防衛関係費は、過去最高の約9兆円に達しました。さらに今年4月には、武器輸出を事実上「原則解禁」する制度改定が行われました。本当に、今の政治のままでいいのか、真剣に考える必要があると思います。「ひとびとは/怒りの火薬をしめらせてはならない」と茨木さんは言います(出典:『茨木のり子集 言の葉 1』、筑摩書房、2010)。日本に暮らす者として、ひとりの人間として、強く訴えたい。戦争には反対です。絶対に、反対です。

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『茨木のり子集 言の葉』全3巻(筑摩書房)

商品名

『茨木のり子集 言の葉』全3巻(筑摩書房)

価格

¥2,640 ※各880円

茨木のり子『自分の感受性くらい』(岩波書店)

商品名

茨木のり子『自分の感受性くらい』(岩波書店)

価格

¥700

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エディターHAYASHI

生粋の丸顔。あだ名は餅。長いイヤリングと丈の長いスカートが好き。長いものに巻かれるタイプなのかもしれません。