【憲法9条】を守るためにできることは? 本田由紀さんに聞いた

世界各地で戦争が続き、日本では改憲の動きが活発になっている。何が起きているのか、本田由紀さんに話を聞いた。平和が大きく揺らぎそうな中で、私たちにできることは何かを考える。

世界各地で戦争が続き、日本では改憲の動きが活発になっている。何が起きているのか、本田由紀さんに話を聞いた。平和が大きく揺らぎそうな中で、私たちにできることは何かを考える。

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日本国憲法の刺しゅう

平和憲法の象徴である9条。改憲阻止の方法と、若者たちへの影響を考える。

諦めたら終わりだから、できることは何でもする

本田由紀

2026年5月29日、国会前で行われた「せんそうさせない緊急アクション」でのスピーチが大きな反響を呼んだ本田由紀さん。

「すべての人々の生命、生活、尊厳は守られるのが原則。それが守られない社会は地獄であり、その最たるものが戦争だ。原則を守れない、守ろうとしない者がなぜ国のトップとしてのさばっているのか。その汚い手で憲法をいじることなど許さない。そこをどけ」と、強い口調で語りかけた。

「有志の市民グループ『WE WANT OUR FUTURE』からの依頼で、お話しさせていただきました。これまで9条を全面に掲げた団体や集会でもスピーチすることはありましたが、今回なぜこれほど反響があったのかはわかりません。デモの参加者は女性が多かったようですが、これまで皆さんが気持ちを表明できなかったり言葉にならなかったりするなかで、鬱憤をためているのは確か。戦争へと向かいそうな現政権の様子から、さすがに何か行動を起こさなければと思っている人が増えているのかもしれません」

本田さんが「憲法をいじるな」と言っているのは、現政権が憲法9条を変えようとしていること。彼らの目的は、改憲して日本が戦争できる国にすることであり、与党の自由民主党はそのための準備を時間をかけて着々と進めてきたという。

「憲法9条は戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を定めた条項です。つまり日本は戦争をしないと宣言している。しかし、この条項が変更されてしまうおそれがある。なぜこんなことになっているのか。それにはさまざまな理由がありますが、一番はアメリカの思惑によるものです。長く政権を握っている自民党に対し、もっと戦争に加担しろと圧力を強めている。でも今の日本は経済成長率1%未満、少子化も重なって衰退の一途をたどっています。なのに、保守派の勢力は家父長制の家族構成に固執し、戦前の大日本帝国に戻したいという妄想にとらわれている。端的に言って、こんなに国がぼろぼろでは、いくら9条を取り払っても戦争なんてできるはずがないんです」

しかし高市政権はそのような状況を黙殺し、威勢のいい言葉で国民を惑わせている。すべては茶番です、と本田さん。

「戦前の大日本帝国は近隣のアジア諸国を侵略し、多くの人々を死に至らしめました。今中国との国力の差を考えると、けんかなどする状態になったら日本はおしまいです。であれば、歴史を引きずりながらも、東アジアや東南アジアの国々と仲よくしていくしかないんです。外交や対話で、お互いの強みを生かして仲よくしていたほうがいいよね、という相互理解をつくっていくのが、まともな政権のすることだと思います」

駄目なことをやった場合は駄目だと言い続ける

国民投票法改正案や国会の発議についての発言を行い、憲法改正に意欲を示す首相。もし戦争ができる国になったら、真っ先に前線に送り込まれるのは若い人たち。しかしこの差し迫った状況に対して、改憲反対デモに集まる人や、本田さんが日々大学で接している若い人たちの間に流れている空気感には、当然ながらグラデーションがある。

「若い人が置かれた状況を考えると、みんな生きていくので精一杯。『WE WANT OUR FUTURE』の集会には、自分たちの苦しさをもっと大きな状況に結びつけて考えている方々が来てくれていますが、それは俯瞰するとごく一部の人たち。日本にはたくさんの若い人がいて、中には体を売らないと生活できない女の子、闇バイトに巻き込まれる男の子もいます。こうした運動を目にすることもない、今の生活に希望が持てないくらい鬱屈しているような、本当に届いてほしい人のことも考えなくてはなりません」

憲法9条を守るために、私たちができる一番のことは、NOと言い続けること。

「高市首相をはじめ現政権の首脳陣のような、どうしようもない人が権力の座に就いていること自体が駄目。誰が出てこようが駄目なことをやった場合には駄目だと言い続けなければいけません。国民が、疲れたしバカみたいだからやめたとなったら、彼らの思う壺です。諦めてしまったら終わりだから、言い続け、踏ん張り続けて、できることは何でもする。私たちはそれぞれの仕事や生活の中で可能な振る舞いをしていく。たとえばSNSで、ネトウヨっぽくなっている父親と正面対決することを決意した、と投稿している人がいました。あるいは選挙に行くことも大事です。身近でできることからやっていく。私は怒る役を担っているところもあるので、怒り続けます」

本田由紀プロフィール画像
東京大学大学院教育学研究科教授本田由紀

1964年生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(教育学)。『「日本」ってどんな国? ──国際比較データで社会が見えてくる 』(ちくまプリマー新書)、『教育は何を評価してきたのか』(岩波新書)など著書多数。