パク・ソジュンとIUの共演に加え、ヒット作を次々と生み出しているイ・ビョンホン監督が指揮を務める最新映画『ドリーム 〜狙え、人生逆転ゴール！～』がついにNetflixで配信開始！ そんな話題の韓国最新映画に加え、一度は観ておきたい不朽の名作をセレクト。次の休日は、泣いて、笑って、ときめく、韓国エンターテインメントの世界にどっぷり浸かってみては？
【韓国ドラマ ナビゲーター】
さすらいのライター 山崎敦子
『最高の愛 〜恋はドゥグンドゥグン〜』より韓国ドラマに魅せられ、日々最新ドラマをリサーチするさすらいのライター。さまざまなジャンルを渡り歩き、今では美容記事に携わること多し。サバイバルオーディションも大好物で、今の推しはENHYPEN。推しの俳優は絞りきれないほど多数。エクラwebでも韓流連載執筆中。
韓ドラ追っかけ班／エディターK
母の影響により、第１次韓流ブームの火付け役となった『冬のソナタ』から韓国ドラマの世界へ足を踏み入れる。「寝不足だけど幸せ」を合言葉に、約20年間あらゆるジャンルの韓流ドラマを観続けている。ドラマに加え、アイドル、コスメ、ファッションなど、日々韓国まわりの情報をキャッチアップ。永遠の推しは俳優ソン・ジュンギ。若手俳優の発掘が趣味の領域に。
『ドリーム ～狙え、人生逆転ゴール！～』／感動と笑いが降り注ぐ!? 最新サッカー×ヒューマン作品
パク・ソジュンとIUというビッグネームの共演。しかもあの隠れ名作『メロが体質（原題）』や『エクストリーム・ジョブ』を手がけたイ・ビョンホン監督とのタッグ！とあれば個人的にも胸が高鳴って仕方ないわけでして。さらに本作は、社会復帰を目的に2003年以降毎年開催されているサッカー大会「ホームレス・ワールドカップ」の頂点を目指すアツ〜いスポーツ映画であり、ヒューマンドラマでもあります。2010年に開催されたブラジル大会をベースにしているんですが、感動とギャグの見せ方が秀逸。ソジュンの小憎たらしい顔芸や、アイス独り占めシーンが個人的に大ヒットです（笑）。コミカルな要素が多いので、ポジティブな気持ちになれる映画をお求めの方はぜひ。
逃亡中の詐欺者。そんな母を持つサッカー選手のユン・ホンデ（ソジュン）は、自身のスランプも相まって選手生命の危機に直面中。とある試合後の会見で執拗なまでに母親への質問を続ける記者に、ついに堪忍袋の緒がブッチン！ 殴る・蹴るではなく、必殺“目潰し”を食らわせ、「目潰しホンデ」の異名が瞬く間に世間に広がるとともに、活動休止に。イメージ回復のためにホームレス・ワールドカップに出場する国家代表チームのコーチに任命されたものの、とてもサッカーとは呼べないレベル。メンバーもくせ者揃いです。最初こそやる気なしだったホンデが少しずつ変わっていくさまや、ドキュメンタリー制作のPDイ・ソミン（IU）との掛け合いも面白く、全体を通してリズムがいい。ド定番ではあるものの、やっぱりひとつのチームがどん底から這い上がっていく姿っていいなあ〜と心震える瞬間が多々。
ただ各キャラクターの人生を繊細に描くことを得意とする監督だけに、正直これはドラマで観たかった……！という想いも沸々。IMF危機で家族を失い、やっと大切なことに気づけたひとりのハラボジ。優しい心につけ込まれて多額の借金を背負うことになったアッパ。幼少期の残酷な記憶を癒してくれたひとりの彼女をひたすら待ち続ける少年etc.。彼らの辿ってきた道のりをもっと知りたかったし、ホンデとソミンの過去も細かく知りたかった。多くを語りすぎない演出も映画の醍醐味かなと思いつつ、ドラマ脳になってしまっているのでしょうか。いい意味で物足りない。もっと見せてーーー！とおかわりが欲しくなる最後でした。（エディターK）
『別れる決心』／パク・チャヌク監督が描く“愛”の末路とは
この春、日本で上映されるや否や多くの話題を集めたパク・チャヌク監督の最新作。早速、劇場に駆けつけていた韓流ファンも少なくなく、とはいえその感想は賛否両論で、最初から最後まで釘付けだったという意見もあれば、最初から最後までわからなかったという意見も。なるほど。で、私はといえば、ノアール苦手派ではあるのですが、これが“賛”だったのですね。『オールド・ボーイ』然り、『お嬢さん』然り、パク・チャヌクの愛の描き方はやっぱり強烈で、でも優しく、そして、しみじみリアルだなあと。重要なピースを裁ち落とした物語の断片を絶妙なカット割りでつなぎ合わせていく彼の手法自体が、もともと謎解きミステリーのようなものではありますが、最新作の本作は、そもそもが山頂から転落死した男の事件を追う刑事ものミステリー。
転落したのは60歳の男性で、捜査を担当したのが、この物語の主人公となる刑事へジュン（パク・ヘイル）。礼儀正しく誠実、かつ史上最年少で警視に昇格したエースで、週末婚中の妻との仲も良好。そんなヘジュンが、転落死した夫を見ても表情を変えずに「ついに死ぬかと……」と呟く若い妻ソン・ソレ（タン・ウェイ）に疑惑を抱くところから始まります。実は、彼女には命からがら中国から移民してきた過去があり、そのため結婚前は貧しく孤独な生活を強いられていたのですが、韓国語も辿々しく、それゆえの言い間違いか、はたまた……。そして、事件を捜査するうちにヘジュンが美しいソレに惹かれていき……という内容です。そう、主軸はロマンス。つまり、最大のミステリーは事件よりも、ソレの本心がどこにあるかということ。そのピースをバッサリと切り捨てた断片の組み合わせ方がやっぱり絶品で、チャヌクが仕組んだ迷路に否応なく引きずり込まれてしまうというか。
エリート男と貧しく孤独な女という何度となく使い古されてきた構図のメロドラマは、通常であれば、気恥ずかしくてまともに向き合えなかったりもするのですが（私の場合）、むしろ今、新鮮。ソレの毅然とした品性をナチュラルに表現したタン・ウェイの神秘的な存在感にも魅了されますが、特に目を引いたのがヘジュンの描き方。エリートであればあるほど、実は儚げな女子とどこまでも堕ちていきたいという心の奥に眠っているであろう男の願望（あくまで、個人的見解です）を、滑稽な部分も含めて正直に映し出しているところが逆にリアルで、そんな究極の男のロマンにもバリバリ共感しちゃったという次第。シンプルなセリフ一つ一つに組み込まれた真実を読み解く面白さも格別です。（さすらいのライター山崎）
『エクストリーム・ジョブ』／笑いなしには到底観られない、韓国映画の名作といえば
イ・ビョンホン監督と聞いて、「え？監督もするの？」と思う人は、もはや日本でもいない（!?）のではと思われます。今回ご紹介の『ドリーム ～狙え、人生逆転ゴール！～』も期待通りの大ヒット。ウィット効きまくりのセリフに、洒脱すぎる笑いのセンス。おかしみに満ちた人間の魅力を、独特の愛あふれる視点でリアルにユーモラスに描き出す表現力には、圧倒されずにはいられないというか。韓国エンタメ界の気鋭とも呼ばれるそんなイ・ビョンホン監督の代表作が本作。韓国では1600万人を動員した大ヒット映画。
とにかく、その発想からして奇抜というか大胆というか。体を張って捜査に駆けずり回る麻薬捜査班が物語の主人公となるのですが、ある大物麻薬密輸犯を追ってとある事務所の張り込み捜査を開始。ところが、その張り込み場所のチキン店がなんと閉店。聞けば事務所からの配達注文もあるようで、麻薬捜査班の面々は、なんと、そのチキン店を買い上げて、引き続き営業することに。もちろん偽装工作なのではありますが、なのに、なのに、あろうことか絶対味覚を持つメンバーの一人が作り出すチキンが評判に評判を呼んで、行列のできる名店に！ はてさて、張り込み捜査はどうなるのか？ チキン店はどうなるのか？ 奇想天外なこの設定だけでも、すでに抱腹絶倒ものですが、コメディの奇才が放つ笑いのエッセンスは、もう至るところにふんだんに散りばめられていて、開始早々から最後まで思わず声を上げて爆笑してしまう場面の目白押し。
そんな奇抜ストーリーをさらに盛り上げているのが、もちろん俳優陣でありますが、そのキャスティングもまた痺れるというか。麻薬捜査班を取り仕切る万年班長を演じるのは地味めなおっさんと思いきや韓国を代表する演技派リュ・スンリョン。絶対味覚を持つマ刑事役は、強面にもお笑いにも変幻自在のチン・ソンギュ。紅一点のチャン刑事にはコメディエンヌとしても多才ぶりを発揮するイ・ハニ。チキン店に翻弄されずに孤独に張り込み続けるヨンホ刑事には、チョン・ホヨンとの交際も順調な個性派イ・ドンフィ。ド直球の情熱だけで勝負するマンネ刑事ジェフンには、優男風イケメンだけれど一風変わった役も多いコンミョン。さらに、悪役はコメディの神オ・ジョンセに、演技の神シン・ハギュン。もう、一癖も二癖も三癖も四癖もありすぎるキャストの面々が、渋い、渋すぎる！ 大いに笑いながらも、きゅんきゅんと愛さずにはいられないそのキャラ、その演技。まだ観ていない人は、ぜひ！（さすらいのライター山崎）
『リトル・フォレスト 春夏秋冬』／疲れているときこそ観たい、エナジーチャージ作
「ああ、ちょっと疲れてるな」と感じるときに必ずこの映画が観たくなります。まさに視聴者に休息の時間をくれるような作品。2014年に橋本愛主演で映画化された人気漫画『リトル・フォレスト』が韓国でも大きな反響を呼び、主演キム・テリ（『二十五、二十一』）でリメイク版が公開。大きな見せ場があるわけでも、大事件が起こるわけでもない。抑揚はそんなにないけれど、丁寧な暮らしの素晴らしさを改めて感じさせてくれるんですね。自給自足の尊さとか、ご飯をおいしいと感じられる幸せとか、そこかしこにヒーリングパワースイッチが仕込まれていて、観終わる頃にはまるで憑き物が祓われたかのようにクリーンになっているはずです。少なくとも私はそう……！
地方から抜け出すためにソウルの大学に進学したものの、教員試験に落ちたことがトリガーとなり、就職、恋愛、都会の街、すべてに疲れ果ててしまったヘウォン（テリ）。そんな日常から逃げるかのように再び足を踏み入れた故郷・ミソン里。そこで果樹園を営む幼馴染のジェハ（リュ・ジュンヨル『恋のスケッチ〜応答せよ1988〜』）と、農協に勤めるウンスク（チン・ギジュ『ここに来て抱きしめて』）と再会を果たしたことにより、自分の人生をゆっくりと見つめ直していくんですね。ソウルではラーメンやコンビニのおにぎりで済ませていた食事も、野菜を畑から収穫するところからはじまる。衣食住、3つの観点から丁寧な暮らしが映し出されるのですが、そのなんでもない日々を観ているだけで凝り固まった心が浄化されていくようなんですよ。この爽快感をぜひ味わってほしい。これこそ体も心も喜ぶ食事だなあとしみじみ感じます。家を出た母（ムン・ソリ『クイーンメーカー』）の記憶を辿りながら作られる韓国料理は、どれもこれも本当においしそう。「こんなに食欲を掻き立てられることある？」と思うくらい“食”に真っすぐに向き合いたくなるんですよ。
ミソン里での生活は、買い物に行くにも自転車で往復１時間はかかるし、巨大な芋虫は出るし、蛙の合唱はけたたましいしで、とても便利とは言い難い。けれど不便さのなかにある幸せの本質というものを思い出したような気分になるんです。心のエナジーチャージが足りていないなと感じるときには、騙されたと思って本作に手を伸ばしてみてはいかがでしょうか。（エディターK）
