【Netflix】【Hulu】【Prime Video】A24が手がけるオリジナルドラマ、木村拓哉の海外ドラマ初出演作、プレスリーの孫の主演作まで、話題の3作品をレビュー

ハイクオリティな映像、豪華な出演者、プロフェッショナルなスタッフ。日々白熱する海外ドラマ前線。今回は、【Netflix】【Hulu】【Prime Video】の3大動画配信サービスより、話題の3作品をピックアップしてご紹介します。

A24が手がけた【Netflix】のオリジナルシリーズ『BEEF / ビーフ ~逆上~』、【hulu】からは『ゲーム・オブ・スローンズ』のプロデューサと木村拓哉ら世界各国の豪華俳優陣が挑むSFサスペンス『THE SWARM/ザ・スウォーム』、プレスリーの孫のライリー・キーオの演技と歌声が話題の【Prime Video】発の『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』まで、イッキ観確定の作品をお届けします。どれも「海外ドラマはここまできたか!」と思わせる、全方位でバランスのとれた傑作ばかり。まだなら、必見ですよ!

Netflixシリーズ『BEEF/ビーフ 〜逆上〜』独占配信中
Netflixシリーズ『BEEF/ビーフ 〜逆上〜』独占配信中
Huluオリジナル「THE SWARM/ザ・スウォーム」 Huluで独占配信中
Huluオリジナル「THE SWARM/ザ・スウォーム」 Huluで独占配信中 ©Staudinger-Franke
Amazon Original『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』 Prime Videoで独占配信中 ©Amazon Studios
Amazon Original『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』 Prime Videoで独占配信中 ©Amazon Studios

【Netflix】A24が手がける、気鋭のダークコメディ/「BEEF / ビーフ ~逆上~」

Netflixシリーズ『BEEF/ビーフ 〜逆上〜』独占配信中
Netflixシリーズ『BEEF/ビーフ 〜逆上〜』独占配信中

今年のアカデミー賞で7冠を達成した“エブエブ”こと「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」や「ムーンライト」「レディ・バード」「ミッドサマー」といった名だたる作品を発表し続けている映画製作・配給会社のA24が手がけた、Netflixのオリジナルシリーズがこちら。タッグを組んだ監督はイ・サンジン、ジェイク・シュライアー、「37セカンズ」のHIKARI。豪華な取組で、アメリカでは5日間連続で1位を獲得するなど、世界的にもヒット中の作品です。

本作は、“エブエブ”に続きアメリカで暮らす、アジア系移民が題材となります。作品を一言で語るなら「A24的・復讐劇」。1話約30分尺の巧みなストーリー展開でテンポよく進み、飽きることなく、見られます。私のまわりでもイッキ観勢がちらほらいました。

物語は、HANDYMAN(よろず屋?便利屋?工事屋?)の主人公ダニー(演じるのは、スティーブン・ユァン。「ウォーキング・デッド」でお馴染みですね!)と、富裕層向けのビジネスで成功しているエイミー(演じるのは、スタンドアップコメディアンのアリ・ウォン)が、ホームセンターの駐車場でクルマを衝突しそうになり、文字通り逆上しバチバチするところからはじまります。

ボタンの掛け違いで憎しみあうことになる、ダニーとエイミー。ふたりの行動や怒りが激化するにつれ、互いの周囲の人々をも巻き込みながら大きなトラブルに発展していきます。ふたりの間に経済的格差がありますが、お金があろうがなかろうが、アジアをルーツに持っているだけで、ときに受ける理不尽な扱い。登場人物が「逆上」するに至る間接的原因としての、社会のなかに潜む様々な問題、知らぬうちに受ける我慢やストレスを多角的にかつ重層的に描いています。

「BEEF」とはスラングで、不満や苦情を意味します。落ち着きがなくプレッシャーの多い現代社会において、小さなストレスや違和感が積もって、ふとしたことがトリガーになり、「逆上」してしまうこと、ありますよね。

復讐とは、誰かの大事な人を傷つけてしまいます。そのネガティブな循環について、個人視点(ミクロ)、社会視点(マクロ)でみせ、多様性を受け入れるというのは、きれいごとだけではやっていけないんだなと思い知らされますが、作品として最後にひとつの解を提案しているように受け取りました。問題提起だけではなく、答えを視聴者に問いかけながらも、作品としてのアンサーを示しているのが、本作のいいところだと思います。

Netflixシリーズ『BEEF/ビーフ 〜逆上〜』独占配信中
Netflixシリーズ『BEEF/ビーフ 〜逆上〜』独占配信中

STORY
ホームセンターの駐車場で、クルマが衝突しそうになり、ダニー・チョウと、エイミー・ラウの間でやり合いが続く。やがてそれは、まわりの人を巻き込み事態が大きく動き始め……。

【Hulu】木村拓哉ら世界各国の豪華俳優陣が集結!/「THE SWARM/ザ・スウォーム」

Huluオリジナル『THE SWARM/ザ・スウォーム』 Huluで独占配信中
Huluオリジナル『THE SWARM/ザ・スウォーム』 Huluで独占配信中

Huluのオリジナル作品でイチ推ししたいのが、エミー賞を受賞した大ヒット海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のプロデューサーである、フランク・ドルジャーが、映像化不可能と言われたドイツのベストセラー小説『深海のYrr(原題:Der Schwarm)』を原作に描く、超・大型深海SFサスペンスです。

「超」がつくだけに、一番の見所は、スケールの大きさと臨場感。『ゲーム・オブ・スローンズ』ファンなら、「フランクさん、今回もしっかり“お仕事”されていますね!」とハイタッチしたくなるような、全話ぬかりなく、リアルでダイナミックな映像です。

海洋異変は特定の地域の問題ではなく、世界全体の課題だということを伝えるべく、南太平洋のペルー、ウアンチャコ海岸、フランスの海辺の町サン・ジャン・ド・リュズ、ノルウェー、南アフリカの東ケープ州、イタリアのヴェネツィアなど、世界各地の海が映像として登場するのが圧巻。空撮も多く、自然の雄大さと、怖さに感じ入ります

豪華といえば俳優陣。スウェーデンのアレクサンダー・カリム、ドイツ出身のレオニー・ベネシュ、カナダのジョシュア・オジックなど、各国からの実力派俳優が大集結。日本から参加の木村拓哉の演技は本作の成功の一因になったと、話題となりました。

今作が海外ドラマ初出演となる木村さん。Huluの取材によると、自身が演じるアイト・ミフネの名前は、木村さんが提案したというトリビアも。「海が舞台のストーリーで、“船”という言葉も含まれているので、日本を代表する俳優さんの名を借りて“ミフネ”はどうでしょうと提案したら、みんな受け入れてくれました」と、その経緯を木村さんはインタビューで明かしています。

話の骨子は、人間 VS 海を操り人類を攻撃する“未知の知的生命体”。ざっくりいうと、海に知性が宿り“生物化”する様が映像化されます。海中の描写も圧巻で、まるで自分が海の中にいるような没入感も。木村さんも特に印象的だったシーンとして「未知の知的生命体が、人間の起こした行動に対して怒るシーン」をあげています。VFXを駆使して海の“キャラクターや感情”を表現。海に感情移入してしまいます。これはもう百聞は一見にしかずで、本作ならではの新しい、“生きている海”を描く映像は、斬新&必見ですよ!

Huluオリジナル『THE SWARM/ザ・スウォーム』 Huluで独占配信中
Huluオリジナル『THE SWARM/ザ・スウォーム』 Huluで独占配信中

STORY
世界の海で突如不可解な現象が巻き起こる。異変にいち早く気づいた世界各国の専門家や研究者たちが集結し謎を解こうと研究を進めるなか、驚くべき結論に辿り着くが……。

【Prime Video】70年代のバンド隆盛期のノスタルジーに酔うのも悪くない!? /『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』

Amazon Original『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』 Prime Videoで独占配信中 ©Amazon Studios
Amazon Original『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』 Prime Videoで独占配信中 ©Amazon Studios

“アマプラ”こと、Prime Video(プライムビデオ)の新作のなかで傑作だったのが、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー小説、テイラー・ジェンキンス・リードの「Daisy Jones & the Six(原題)」が原作のこちら。1970年代アメリカ西海岸のロックシーンを駆け抜けた架空のロックバンド「デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックス」のはじまりから絶頂期、解散までの物語です。最盛期にあったバンドがどのように内部崩壊したかを、現在のメンバーたちが振り返り証言しあう、ドキュメンタリースタイルで描いています。

プレスリーの孫のライリー・キーオがデイジー・ジョーンズ、サム・クラフリンがビリー・ダンを演じています。その他のキャストには、カミラ・モローネ(レオさまの元彼女。美しい……)、スキ・ウォーターハウス(個人的イチ推し)、ウィル・ハリソン、ジョシュ・ホワイトハウス、など。

架空のバンドの話ですが、70年代に実際に存在したかのようなリアル感あふれるオリジナル楽曲。当時のファッション、音楽、カルチャー、社会が、こなれた感じで再現されています。そしてDNAのなせる技なのか、ライリー・キーオの歌声が本当に素晴らしい!

ロックバンドの全盛期を駆け抜けた、バンドメンバー。仲間割れ、男女間のもつれ、進学との板挟み、音楽の方向性の違いといった、バンド“あるある”な問題が次々と勃発します。一方、例えば胸の谷間を強調した衣装を提案されたり、楽曲のアイデアを使われたり、当時の音楽業界やバンド界における女性への風当たりも感じさせられます。

成功するためには、多くの犠牲を払わなければなりません。また、女性が成功するためには、さらに多くの努力をしなければならないこともわかります。デイジー・ジョーンズは、才能があり、成功した女性として描かれますが、自分の才能を信じ、自分で道を切り開いたから得られたもの。当時においてそれは容易ではないのですが、自身を貫く姿にエンパワメントされます

スモーキーな光沢を帯びた70年代の「ロックバンドの物語」は、物差しが変わってしまった現代から見たら“古い”のかもしれませんが、一心不乱に何かに夢中になれるのはうらやましいなと、感じ入ってしまいました。

Amazon Original『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』 Prime Videoで独占配信中 ©Amazon Studios
Amazon Original『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』 Prime Videoで独占配信中 ©Amazon Studios

STORY
1977年、世界の頂点に立っていたバンド「デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックス」。デイジー・ジョーンズとビリー・ダンのツートップに率いられあらゆる名声を手に入れるも、バンドは解散した。それから数十年後、メンバーは解散の真相を明かすことに同意し……。

【海外ドラマ ナビゲーター】
エディターR
一日の終わりを、ワインとショコラとドラマで締めくくるのが愉悦のとき。“SATC”よりゴシップガール派。映像美と緻密な脚本ものが好物。最近は動画配信サービスのオリジナル作品のチェックに余念がない。作品でいうと、Netflix『ザ・クラウン』、Apple TV+ 『ザ・モーニングショー』などがお気に入り。ドラマに出てきた名台詞をコツコツとしたためていて、いつかどこかでアウトプットするのがささやかな目標。

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