１話から衝撃的な展開とキャストが話題を呼んだNetflix新作『マスクガール』や、警察×消防×国科捜が三位一体となって凶悪犯罪者に立ち向かう『ファースト・レスポンダーズ 緊急出動チーム』シーズン２など、話題の新作韓国ドラマが目白押し！ 物語の最後を観るまで止められない注目作を、秋の夜長の楽しみに加えてみては？
（※『ブラインド』は2022年放送ですが、日本では今夏ようやくLeminoで観られるようになったため新作扱いにしています）
【韓国ドラマ ナビゲーター】
さすらいのライター 山崎敦子
『最高の愛 〜恋はドゥグンドゥグン〜』より韓国ドラマに魅せられ、日々最新ドラマをリサーチするさすらいのライター。さまざまなジャンルを渡り歩き、今では美容記事に携わること多し。サバイバルオーディションも大好物で、今の推しはENHYPEN。推しの俳優は絞りきれないほど多数。エクラwebでも韓流連載執筆中。
韓ドラ追っかけ班／エディターK
母の影響により、第１次韓流ブームの火付け役となった『冬のソナタ』から韓国ドラマの世界へ足を踏み入れる。「寝不足だけど幸せ」を合言葉に、約20年間あらゆるジャンルの韓流ドラマを観続けている。ドラマに加え、アイドル、コスメ、ファッションなど、日々韓国まわりの情報をキャッチアップ。永遠の推しは俳優ソン・ジュンギ。若手俳優の発掘が趣味の領域に。
『マスクガール』／現代社会の歪みを映した衝撃作
この手のドラマを作らせたら、韓国は本当にとてつもなく上手い！と改めて何度も唸らされたのはいうまでもありません。配信から1ヶ月近くたつ今もNetflixトップ10入りし続けている大ヒットドラマ。『イカゲーム』しかり、ポン・ジュノ作品しかりですが、設定と描写は半端なく強烈で型破り（エロもグロもエグい！）。かといってまったくの他人事とは思えない自分にも超絶リアルな“切実”がひしひしと迫りくるとでも申しましょうか。ブラック交えたコメディ要素を適所にあしらった絶妙な軽さも相まってか、好き嫌いに関わらずその否応なしの吸引力が凄まじく。主人公のモミを新人のイ・ハンビョル、AFTERSCHOOLのナナ、『善徳女王』のコ・ヒョンジョンという「似てるところある？」的な３人がバトンのように受け取りつつ演じていくのですが、違和感があるどころか、むしろだからこそのモミだったという説得力。
で、ドラマは、新人イ・ハンビョルのモミが発端。幼い頃から人前で歌ったり踊ったりするのが大好きだったモミなのですが、その容姿では歌手になれないと言われ続け、想いとは裏腹に地味な会社員になってしまうのですね。でも、幼い頃の拍手喝采の味が忘れられないモミは、顔をマスクで覆い、抜群のスタイルを武器に配信サイトでセクシーダンスを踊るマスクガールとして人気を集めるわけなのです。そう、のっけからルッキズムの匂いがぷんぷんですが、容姿ゆえのモミの立ち位置とか、それから解放されたマスクガールの歪んだ悦楽とか、私的にはかなりな共感。そんなモミが、意図せず起こしてしまったある事件をきっかけに、そ、そうなるか！という激変の人生へと引き摺り込まれていくという展開。
ドラマはモミの会社同僚オナム（アン・ジェホン）や彼の母親ギョンジャ（ヨム・ヘラン）など、モミと関わる登場人物たちの別の視点からも、時間を巻き戻しつつ描かれていて、彼らの中に無意識に潜む現代社会の歪みにも通じる“強烈さ”も怒涛のように画面に映し出されるという具合。ルッキズム主義、男尊女卑、根強く蔓延る家父長制思想などなど……。そんな女性蔑視に何度もあいながら、モミはどう生きていくのか。そして、ラストにとった彼女の行動は一縷の望みということなのか……。それにしても、モミを演じた３人のそれぞれの個性といい、扮装もとい薄毛頭の演出まで徹底させたキモすぎるアン・ジェホンとか、ギョンジャの狂信的執着と執拗さを演じたヨム・ヘランとか、最終話登場の子役たちとか、マジで素晴らしすぎるぅ。（さすらいのライター山崎）
『ファースト・レスポンダーズ 緊急出動チーム』シーズン２／ついに物語の終着点に辿り着く！
待望のシーズン２はとにかく登場キャラへの試練が多い。というか容赦ない。なさすぎて「嘘でしょ」な展開のオンパレード。シーズン１よりも事件の質が凶悪になっているような気がするし、もはや詰んでいる状況ばかりで、「これ、どう切り抜けるの？」と心配になるくらいです。ただ新たな国科捜メンバーのカン・ドハ（オ・ウィシク）やハン・セジン（チョン・ソンウ）との化学反応もあり、ノンストップ視聴したくなる作品に仕上がっています。今シーズンもやっぱり警察×消防×科捜研の共闘に心震える！！ 内容忘れてるかも……な人は、ぜひこちらの記事よりシーズン１のあらすじをどうぞ。
一度噛み付いたら捕まえるまで離さない珍島犬（チンドッケ）こと刑事のチン・ホゲ（キム・レウォン）。今シーズンもキレッキレに犯人を追い続け、物語を大きくアツく動かしてくれます。連続放火事件解決のために消防隊と一緒に火の中に飛び込むし、受刑中の連続放火犯に犯罪心理を問いに行くし、現場に爆弾が仕掛けられようが突進していくし！ 危険を顧みない言動を心配する救急隊員のソン・ソル（コン・スンヨン）に対しては、「俺は命を惜しんで犯罪に目をつぶることはできない。ケガしない約束もできない」と言い放つ不器用な強さを持つ人。今シーズンは消防チームのポン・ドジン（ソン・ホジュン）とソルの三角関係にも注目したいところですが、それ以上に降りかかる事件の残酷さと残虐さに観ているこちらも疲弊して息切れ状態。シーズン２は犯人側がかなりの手練れで、ホゲもなかなか正体を掴むことができないんですよ。騙し、騙されの連続。これがまた心臓バクバクでエキサイティング！！ より“リアル”な見せ方を追求していてアクションもグレードアップしているので、そこにも注目してほしい。
まったく理解できない悪の心理の深い部分まで潜り込み、次なる一手を読む。ホゲは無事犯人に辿り着くことができるのか？ 行手を阻むシーズン２のキーワードは、「知能犯」。放火、爆弾と手法は違えど、明らかな快楽殺人者との闘いになっているわけです。だからこそ、現場を知る消防チームと、遺体からわずかな手がかりを見いだす国科捜の知見なしでは、犯人にたどり着くことなど決して不可能。３者が一体となって悪と戦う姿、震えます。きっと本作のなかで「騙された！」と膝を叩くシーンが多々あるはず。（エディターK）
『ブラインド』／残酷な大人の言動が“凶器”を生む
とある残虐な殺人事件の裁判に陪審員として集められた９人。刑事のリュ・ソンジュン（2PM テギョン）と、兄で裁判官のリュ・ソンフン（ハ・ソクジン）を加えたこの11人が主な登場人物となり、次々と起こる残虐殺人の首謀者を洗い出していくんですね。とにかくほぼ全員が怪しいし、絶対に一度は騙されるはず。こんな見せ方の法廷ミステリースリラーがあったのか！と感心するほど秀逸な構成。この手のジャンルに目がないよという人はぜひ全貌を確かめてみてください。
ある日、口の左右を大きく裂かれ、まるで嘲笑っているかのような状態にされた遺体が発見。これが通称「ジョーカー殺人事件」です。この猟奇的な殺人事件の容疑者が捕まり、裁判員裁判が開かれることに。陪審員のひとりとして選出されたチョ・ウンギ（チョン・ウンジ）や、容疑者を特定したソンジュン、裁判長を務めるソンフン。決して偶然ではなく、全員が誰かの企みによって集められているんですね。そう、すべてのはじまりは「希望福祉園」。
釜山にあった兄弟福祉院で起こった実際の出来事をベースにしていると聞いた時はゾッとしました。だって１話の冒頭から、暗く汚い檻のような空間に閉じ込められた少年たちが必死に「サイコ」と呼ばれる男から逃げている。奴隷のような扱い、粗末な食事、暴力、罵倒、そして命の危険に晒される毎日。500人以上の犠牲者を出した事件が背景にあると知ると、この作品が伝えたいこと、問題提起の重さがグッとのしかかってきます。本作では「希望福祉園」にかかわった人物が裁判に集められ、凶悪殺人の火蓋が切られるんですね。目も当てられないほど残酷に。
これらの描写もかなりチャレンジングで制作陣の気概を感じますが、とにもかくにもソンジュンを演じるテギョンです。被害者の少年のひとりがソンジュンなのではないか？という演出が続き、「え、首謀者はソンジュン？いやまさか……」の葛藤がエンドレス。犯人を捕まえるためには死体にもなりきるし、サイコパスにもなりきるし、とにかくなんでもする「熱血刑事」というふうにも見えるし、まるで殺人犯のようにも見える……。危うさとアンバランスさを終始醸し出していて、ずっと“疑い”が消えないんですよ。これは『ヴィンチェンツォ』で見せた狂気的な演技が生きている！と思わざるを得ない。物語も驚くほどテンポよく進んでいくので、途中で止めることができず、これは一気観案件かと思います。大人の言動で苦しめられた子どもたち。その想いの先に待っているものを本作で見届けてみてほしい。（エディターK）
『庭のある家』／キム・テヒ×イム・ジヨンで贈るサスペンススリラー
正直申しますと、私、ドラマは絶対に早回しで観ない派です。一度視聴した作品を確認のため時々倍速で観直したりもしますが、基本、どんな時でも必ず標準視聴。ドラオタとしては、良くも悪くもそこに描かれる空気感まで含めてしっかりと味わいたいからにほかありませんが、このドラマばかりは、筋書きのその先の展開を見てしまおうと何度早送りしようと思ったかわかりません。３年ぶりにドラマ復帰となる美貌の才女キム・テヒ×『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』の“ヨンジン”で一世風靡したイム・ジヨンの豪華競演が早くから話題となっていたこの作品。
キム・テヒ演じるジュランは過去のトラウマで鬱病を患っているのですが、息子の学校で問題を起こし、郊外の庭のある豪邸に越してきます。近所との接触も避けて家にこもりきりの生活を続けているジュランは、ある時、庭から漂ってくる異臭を感じるようになるのですが、夫のジェホ（キム・ソンオ）や息子からはそんな臭いはしないと相手にされません。自分の病のせいか、それとも……と、ジュランは臭いのする庭を掘り返すのですが……。
一方、イム・ジヨン演じるサンウンは夫ユンボムと貧しいアパート暮らしの主婦。妊娠中にもかかわらず夫からはDV三昧の悲痛な日々を送っています。ジュランの夫ジェホはこのサンウンの夫ユンボムから脅迫されており、ある雨の夜、ユンボムが不審死したことから、生まれも環境も180度違うジュランとサンウンに接点が生じて物語が展開。庭の異臭とユンボムの死と、ドラマは事件の真相を２人が追ういわゆるサスペンススリラーなのですが、時間を何度も舐め回すかのごとくゆっくりと紡がれていくので、展開激しい今の韓流サスペンスに慣れきった身としては、そのスローな流れについていけず、得体の知れない不安に押しつぶされそうになってしまうというか。
広角レンズを多用した引きのショットや角度を歪ませたアングルなどその映像があまりにも美しくかつ不安定で、何が事実で何が心象風景なのか混乱させられるばかり。そして迎える驚愕の最終話。そうか、そうだったのか……。それはもちろん観てのお楽しみですが、圧巻は、やっぱりキム・テヒとイム・ジヨン。最後のギリギリまでその心理を美貌の奥に隠し続けたキム・テヒと、反対に生気を消した瞳に饒舌なまでに揺れ動く心の内を映し出したイム・ジヨン。一人の女性として生きる真の幸せとは。事件の真相よりもそんなテーマが胸に迫り、早送りしなくて、ホントよかったとつくづく。（さすらいのライター山崎）
