読者の不安にお答えします

 

少しでも自分の気に入らないことがあると、すぐストレスのせいにして、人とぶつかったり。どんどん生きづらくなっているのはなぜ? 教えて黒柳さん!

 

Q   戦争について語るとき、みな、被害者になってしまうことに違和感が……(38歳・女性) 

A 人は自分がつらい思いをした経験のほうを強く認識しがちです。戦争体験についても、あんな苦労があった、こんな大変な思いをした、と。でも当時まだ少女だった私自身、苦い思い出がある。というのは、出征する兵隊さんを見送るのに、日の丸の旗をもらって「バンザ〜イ! バンザ〜イ‼」と叫んでバタバタ振ると、スルメの脚を1本もらえたんです。もうおなかがすきすぎていた私にとって、そのスルメの脚1本は、本当にうれしいご褒美。出征する兵隊さんのことなんて何も知らないのに、「バンザイ」の声が駅のほうから聞こえると駆けつけ、旗を振ってスルメをもらっていた。でも出征する側にとっては、あんなに小さな女の子ですら応援してくれているんだ。手柄を立てないわけにはいかない、と思ったかもしれない。戦争を後押ししたようで、今も心が痛みます。

 

Q   スレ違いざま口論になったり、なんでもストレスのせいにしたり。余裕なさすぎ?(37歳・女性)

A 自分とはなんの関わりもない 人間をいきなり殺傷したというニュースを目にすると、これからどういう世の中になっていくのだろう? と不安になってしまいます。ストレス、ですか? そんなの誰でも多かれ少なかれ 持っているでしょう。生きていくというのは、そうしたストレスとどう向き合うかで、人間関係だってそれを乗り越えてより濃密というか、豊かなものにな っていくわけですから。ただし、時には「や〜めた!」と逃げ出してもいいと思います。規則にがんじがらめにならずに、自分の好きなことにちゃんと打ち込めば、私にとってのトモエ学園の先生のように、きっとあなたのことをわかってくれる人間が現れる。私は戦争が終わったときに、バーッと入ってきた外国映画をいっぱい観て、特に『キュリー夫人』(’43)などに感銘を受けて救われもしました。そうした出会いも大切ですよ。

 

Q   私も困っている人の役に立つことがしたいのですが、どこから始めたらいいですか?(26歳・女性)

A どこからスタートしてもいいというのが私の考えです。ボランティア活動に関して言えば、いろいろな情報をチェックして、こういうことで困っている人がいる、とか、こういうことを求めている団体がある、とか。その中から、自分がやってみたい、できそうと思うものをチェックしてみたらどうでしょうか。自分の才能を発揮できたらもっといいですね。中には、自分の能力を超えて、少し無理しなければならないものもあるかもしれない。ボランティアや慈善活動を長く続けるには、自分があまり無理しないでやれることから始めるべきだとは思いますが、活動を続けていくうちに多少の無理が必要になるときもあり、それはそれで乗り越えたときの達成感は大きいです。ただ、やっぱり最初は自分が得意なことで参加するほうがいいでしょう。力仕事に自信がある人もいれば、お裁縫やお料理、子どもの相手などなど。これなら私に任せて、という項目があるはず。肝心なのは「やってあげる」という姿勢ではなく、「一緒にやっていきましょう」という気持ちだと思いますね。

 

Q   何かに失敗したとき、その落ち込みからはどう立ち直りますか?(42歳・男性)

A 仕事にしても何にしても、キャリアを積むというのは失敗の数も増えるということです。もちろんそれを超える成功体験も増えますが、たとえば人間関係で、この人と上手につき合えたからあの人とも、というわけにはいきませんよね。かといって、失敗を恐れて引っ込み思案になってはつまらない。先年まで長年続けてきた私の「海外コメディ・シリーズ」という舞台は、毎日毎日、何かしらが起こると言えました。だからこそのライブ感なんですね。私は38歳のとき(50年近く前)にNYに渡り、演技の勉強をしました。今でこそ俳優の海外留学は珍しくないけれど、当時は「帰ってきても仕事はないよ」とか、さんざん言われましたよ。でもそれを上回る励ましの声も多く、NYで得た知己はその後も大切な存在となりました。ひとつやふたつの失敗なんて……命をとられるわけではないと考えてみたら?

黒柳徹子
くろやなぎ てつこ●東京都出身。1953年にテレビ女優第1号としてNHK放送劇団に入団。多くの子ども番組に加え、「若い季節」「夢であいましょう」など人気ドラマにも出演。1971年には単身NYへ渡り、1年間演劇を学ぶ。1976年に「徹子の部屋」放送開始。1981年に上梓した『窓ぎわのトットちゃん』はベストセラーに。1986年からユニセフ親善大使を務めている。

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