長編アニメ賞と主題歌賞でオスカーをゲット! 『リメンバー・ミー』は必見

(C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
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『メリダとおそろしの森』(12)では母と娘の関係、『インサイド・ヘッド』(15)では自分ではコントロールできない感情について。ピクサー・アニメには、観たあと深く考えさせられる作品があります。もちろん最終的にはポジティヴな気持ちになるのですが、つらい部分もきちんと描かれている。最新作『リメンバー・ミー』は、人は死ぬとどうなるのか、それは生者とどう関わっているのか、という大きなテーマを扱っています。

とはいえモチーフとなっているのはメキシコの賑やかな「死者の日」。日本のお盆に近いお祭りですが、町中にマリーゴールドの花が溢れ、音楽が鳴り、人々がガイコツの仮装をする陽気な祝日です。『リメンバー・ミー』の主人公、少年ミゲルはその日死者の世界に迷い込む。その派手派手なネオンカラーの美しいこと! ここでミゲルは自分の家族やフリーダ・カーロらと出会い、死者たちの秘密を知ることになります。

そのユニークな死生観と、重要なファクターとなる「記憶」をめぐるスリリングな冒険については映画を観てもらうとして、私が感心したのは「認知症」が取り上げられていること。ミゲルの年老いた曽祖母、ココはだんだん記憶を失っているのです。これまでも認知症は『アウェイ・フロム・ハー』(2006)や『アリスのままで』(2014)のようなシリアスなドラマになったり、逆に『ヴィジット』(2015)では笑っちゃうようなホラーのネタになったりしていました。でも、ファミリー向けの映画でこれほど真摯に取り上げられたことはなかったのでは。

ピクサーとして初めての音楽映画なのも話題です。それをメキシコのマリアッチや、ラテン・ポップスにしたところがタイムリー。去年はジャスティン・ビーバーが“デスパシート”を歌った年ですからね。海外ではエンド・クレジットでシンガーのミゲルが歌う主題歌(オスカー受賞!)は、日本版エンドソングになってるんでしょうか。どちらにせよ、その頃にはラテン音楽の余韻に浸りながら、きっと自分自身の心にいる死者を思い出している——そんな一作です。

『リメンバー・ミー』
監督/リー・アンクリッチ
共同監督/エイドリアン・モリーナ
声の出演/アンソニー・ゴンザレス、ガエル・ガルシア・ベルナル、ベンジャミン・プラット
3月16日、ロードショー

映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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