“宝物”が形づくる、鮮やかな世界。ANNA SUIのワンダー・ハウス

ミックス&マッチの天才、アナ・スイの新しい家はヴィンテージの家具とプレイフルな色使いが魅力的。長年かけて集めたアイテムが飾られ、細部にまでくまなく美意識がゆきわたっている。そんな華やかなインテリアの全貌を公開。

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インド旅行で集めたクッションや、大好きな家具に囲まれたリビングルームで寛ぐアナ・スイ。今のお気に入りは背面にあるトルコ系アメリカ人のインテリアデザイナー、ジェームズ・モントによるシルバー仕上げのキャビネット。これまでヴィンテージショップやオークション会場を訪れることが多かったが「家にいながらにして探し物を見つけられて楽しい」と最近はもっぱらインターネットで欲しいものをリサーチしている

A JOURNEY TO AMAZING ROOM

 昔の面影が残る風情ある街並みと、カウンター・カルチャーの自由なスピリットが混在するエリア、グリニッチ・ヴィレッジ。ニューヨークならではの独特な雰囲気が気に入って、アナ・スイはパーソンズ美術大学に通う学生時代から、終のすみかはここと決めていた。その思いがかなったのが、かれこれ20年ほど前。住まいは19世紀末に建てられた重厚な石造りの11階建てのアパートだ。幸運と偶然が重なって、隣の住人はなんとマーレイ・ラーナー。ジミ・ヘンドリックスなどアナが大好きなミュージシャンのドキュメンタリー映画を手がけ、アカデミー賞も受賞した監督だった。ふたりは音楽の話題を通じて意気投合。彼がフロリダに転居するときに住居を買い受け、アナは建物のワンフロアすべてを自身の住まいに拡張することにした。「きちんとしたダイニングルームをつくって、友人たちをディナーに招きたくて。あとは、コレクションしてきた家具や雑貨を飾るために部屋を増やしたかったの」

拡張工事は3年に及び、念願のダイニングルームをはじめライブラリーやドレッシングルームなど6つの部屋が新たに加わった。草花や鳥をモチーフにした壁紙や、鮮やかな色彩のハーモニーにこだわったインテリアのデザインはもちろんアナ自身によるものだ。

「私が好きなシノワズリのテイストをベースに、尊敬するインテリアデザイナーのデヴィッド・ヒックスやドロシー・ドレーパーのデザインをリサーチして参考にしたわ。使いたい壁紙のサンプルや色見本を手にして何もない素のままの部屋に入ってみる。そうして創りたい部屋のイメージを考えていると、アイデアがどんどん湧いてきたの」

 コレクションと同じく、住まいづくりに関しても好きな“モノ”に出合えるまでは妥協することなく徹底的に探し、手に入れることを信条としているアナ。愛する家具たちが見事に調和した、唯一無二の居住空間だ。

ピンクと紫のゴージャスな色調に包まれて

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LIVING ROOM

紫とピンクの配色と、流線が優雅なソファのセレクトはインテリアデザイナーのデヴィッド・ヒックスによるヘレナ・ルビンスタインの部屋がインスピレーション(1)。テーブルの後ろに飾った花の写真は、親友のスティーヴン・マイゼルから贈られたオリジナルプリント。「部屋の壁の色にぴったり!」とお気に入り。ジャイプールに旅行したときに買い集めた鏡と金糸が綾を織りなすクッション(2)や、マンハッタンの大好きなインテリアショップ、ABCカーペット&ホームで見つけた人形(3)がさらに華やぎを添える。

黒をきかせたモダン・シノワズリ

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DINING ROOM

長年の夢であり今回の改装のきっかけとなったダイニングルーム。シルバーと黒の色使いは大好きなインテリアデザイナー、ドロシー・ドレーパーの仕事から学んだ。この部屋のハイライトはヴィンテージショップで見つけた1860年代のマントルピース(4)。「小花が描かれたデコラティブな細工にひと目惚れした」と語る一品だ。ヴィンテージのダイニングテーブルや椅子などシノワズリのテイストで調度品を揃えつつ、モダンに仕上げた(5)。

こだわりのタイルとレトロなドアに注目を

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BATH & POWDER ROOM

白黒のタイルとマーブル仕上げの特製の窓ガラスが目を引くバスルーム。ヴィンテージのバスタブを覆うシャワーカーテンは、ビニールにアナのコレクションで使ったレース地を貼りつけたオリジナル(6)! 大理石の洗面台のアクセントとなるのは、インターネットを駆使して欲しいものを探していたときに見つけた、ニュージーランドのメーカーのタイル(7)。「黒とポピーとオレンジの組み合わせが素敵で、このタイルを使うしかない!」と取り寄せた。またドアは建物の建設当初からの設計を活かした珍しい半円形(8)。パウダールームはきらびやかな鏡張りで、また異なる雰囲気に(9)。

ヴェネチアン・ミラーで彩るキャビネット

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GALLERY ROOM

もとはキッチンだったスペースを、ウォークインクローゼットを兼ねたギャラリールームに。映画『たそがれの女心』(’53)に登場した鏡をヒントに、ハンドペイントを施したカスタムメイドのキャビネット一面に、ヴェネチアン・ミラーを貼りつけた(10)。フリーマーケットで見つけたテーブルにはヴィンテージのジュエリーボックスなどを並べて。キャビネットの対面には「何もない壁は味気ない」と、大好きなロックスターのポスターや写真、友人のアーティストたちの作品を飾った(11)。

ドレスアップのひとときも、華やかに

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DRESSING ROOM

パサディナのフリーマーケットで見つけた姿見が主役。アナのコレクションで使ったプリント地を貼り、ランプシェードもグレードアップした(12)。棚に収めたシューボックスのデザインも部屋に合わせて厳選。箱の表には中身の写真を貼って機能的に収納している。壁には「楽しみながらドレスアップしたい」と、エロイーズの絵で有名な御年93歳のイラストレーター、ヒラリー・ナイトにファンタジーあふれる壁画を制作してもらい、設えた(13)。

手仕事のぬくもりが感じられるサンクチュアリ

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BED ROOM

木に宿る孔雀の壁紙が印象的なベッドルーム(14)。19世紀にイギリスで人気だったヴィンテージのアングロ・インド家具の木製のベッドと鏡つきの衣装だんすが落ち着いたムードを醸し出す。鮮やかな色のシルクのピロー、チャイニーズの提灯がアクセントに。七宝焼のタイルをはめ込んだマントルピースはインテリアデザイナー、ジェームズ・モントの作品。

ガブリエル・シャネルへ敬意を込めて

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LIBRARY

「いつもここに座って本を読むの」。アナにとっていちばん落ち着く場所がライブラリー。シノワズリのパネルが施されたガブリエル・シャネルの部屋に魅せられてクリエイトした。日本の七宝焼の大皿をはめ込んだオリジナルのパネルを用いた書棚はカスタムメイド。エグロミゼのデスクはヴィンテージショップのオーナーがアナのために取り置いてくれていたというもの(15)。カウチはコンデナスト社の編集者であり作家の故レオ・ラーマンの遺品をオークションで入手し、アナのコレクションの布地で張り替えた(16)。

SOURCE:SPUR 2020年1月号「ANNA SUIのワンダー・ハウス」
photography: Akira Yamada hair & make-up: Tamami Mihara edit: Teruyo Mori

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