マルタン・マルジェラ自身が保存していた品の数々が、パリのオークションで販売された。その熱狂ぶりと落札結果を大公開。

マルタン・マルジェラのアーカイブス・オークションの結果は?

マルタン・マルジェラ自身が保存していた品の数々が、パリのオークションで販売された。その熱狂ぶりと落札結果を大公開。

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出品物の展示中、ファッション界の熱気は最高潮に

マルタン・マルジェラのパーソナル・アーカイブスがオークションで販売されるというニュースが流れたのは、競り日の1か月以上前。SPURデジタルの記事でも紹介したように、ロットはデザイン画、エルメスを含む作品から、彼自身がデザインスタジオで使っていた私物まで。この一大イベントを司ったモーリス・オークションのアレックス・バッドリーは、展示プレビューでこのオークションを開催することになった経緯と、キーピースについて語ってくれた。

会場となったパリ11区の真っ白なロフトには、オークションに先んじて195点あまりが展示された。アート・ディレクションはマルジェラ自身。セノグラフィーは、アントワープ6の同窓生で『Margiela: Hermès Years』展の演出も手がけたアート・ディレクター、ボブ・ヴァーヘルスト。手前の部屋、ロットを並べた横に長いウインドウの背後で壁を覆ったのは、マルジェラのスタジオで箱が積み上げられた棚をプリントした、等身大の幕。一瞬実際の棚の再現かと見紛うほど現実的な写真は、彼が自身のメゾン在籍時代に築いた、トロンプロイユ装飾のコンセプトに基づいている。その奥の壁の垂れ幕に転写されたのは、白い箱ではなくオレンジ色の箱の数々。これが示唆するのは、もちろんエルメスだ。次の部屋には、マルジェラのエルメス時代の作品がずらりと並んでいた。ただし単なるアーカイブスではなく、彼の亡き母のワードローブ。彼が母に贈ったものだというから、感慨深い。プレビューに続き5日間にわたって開かれた展示には3000人が詰めかけ、その様子はSNSを埋め尽くし、クチュールウィーク中に最も語られたトピックの一つとなり、カタログは売り切れ。オークションに向けてファッション界の熱気は最高潮に達していった。

プレビューにて、モーリス・オークションのアレックス・バッドリー  video: Minako Norimatsu

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オークションに先駆けての展示の様子。photo: ©︎Niña Slavcheva

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オークションに先駆けての展示から。奥の部屋に集められたマルジェラによるエルメスのアイテムは、彼の亡き母のワードローブ。photo: ©︎Niña Slavcheva

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オークションに先駆けての展示の様子から。グラフィティ・タビブーツ。photo: ©︎Niña Slavcheva

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オークションに先駆けての展示から。マルジェラ自身が使っていた電話器。photo: ©︎Niña Slavcheva

日本のコレクターが、グラフィティ・タビブーツを落札!

7月9日、午後2時。35度を超える猛暑にかかわらず、会場にはファンやコレクターたちが集結した。ステージには、オークショニア(競売執行人)であるモーリス・オークションのサロメ・ピルソン。脇には、同社のパートナーであるロンドンのファッション・オークションの第一人者、ケリー・テーラーを始め、スタッフたちがずらりと並んだ。電話、インターネットでの世界からの参加者たちに替わって競りをするためだ。張り詰めた空気の中、1番のロットからして、落札価格は見積もりを大幅に上回る。作品はもとより、デザイン画の値段の上がり方は驚異的。前述のアレックスがキーピースとしてあげた白衣は、€6,000〜€10,000の見積もりに対し、€41,600で落札。そして出品リストの中でも見積もり額が€30,000〜€50,000と一番高い42番のグラフィティ・タビブーツの番になると、サロメは慎重にことを進め、競り者たちの士気を高め、値段を釣り上げた。なんと€364,000で競り落としたのはバリュエンスの嵜本シンスケ氏。ちょうど1年前にはジェーン・バーキンが所有していたバーキン・バッグを14.7億円で入手し、その後日本のオーディエンスにも公開して話題になった実業家だ。

その後も最終ロット195番まで、競り合いが続くこと、5時間。サロメいわく、エルメスの値段の上がり方も期待以上だった。ここまで時間がかかったのは、41か国からオンラインで参加した1500人のうち、慣れていない人が多かったためだとか。彼らはマルジェラ目当てで、初めてオンラインオークションを体験したのだろう。中にはアジア、特に日本からのアクセスが多かったそう。サロメにマルジェラ自身の思いを聞いてみたが、さすがに彼はメディア向けの発信はしないという姿勢は崩していないらしく、間接的にもコメントはもらえず。彼女はと言うと、競りが終わった今よりも、マルジェラ本人に始めて会った時の方が感動したとか。全点落札したマルタン・マルジェラ パーソナル・アーカイブズ・オークションの売り上げは、総額€1,385,020。売上の一部はマルジェラ自身からエイズ基金に寄付される。

6分も続いたタビブーツの落札の様子、最後の数十秒。video: Minako Norimatsu

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グラフィティ・タビブーツの落札結果

ヴァリュエンスの嵜本氏が、グラフィティ・タビブーツ落札をアナウンスした投稿。

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マルジェラ自身が使っていた白衣や電話器の落札結果

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/