私にも、一周まわって90年代


バカなことをしてしまった。若い時分、ヘルムート・ラングのスエットを、知り合いにあげてしまったのです。黒地の半袖で、衿ぐりはたしかⅤ字ガゼット仕立て。着丈は長すぎず短すぎず、スエットとはいえシルエットは直線的、クリーンな感じ。これを古着のスカートなどに合わせて楽しんでいたものです。あれが今あったら、復活してかなり活躍していたのでは? でももう、手放してしまったのです。たしか30代にさしかかるくらいの頃、人生に何度か訪れる「そろそろ大人っぽい格好をしなきゃ」という脅迫観念にかられ、「大人=スエットなんて着ない」という激しい思い込みのもと。本当に、こんなくだらない、つまらない理由で手放してしまった。(そこで20代後半の皆様に老婆心からアドバイス。「大人になったから、もう⚫︎⚫︎は着ない」というのは一時の気の迷いで、間違いであることが多い。自分は年齢的にはいい大人ですが、若い頃に思い描くような”オトナ”に全然なってないんだから。)  さて、先日また近所のユーズドショップ『THREE』を訪れました。まるで銭湯帰りに立ち寄るようにふらっと。そして出合ってしまったのです、ヘルムート・ラングのTシャツに。最近はもう衝動買いはしない、という小さな誓いを立てていたもので、「でもこれ、メンズだよね。たぶん大きすぎるよね」と自分で自分を押しとどめようとしていたところ、ほかのお客とおしゃべりしているはずの店員さんが「あ、それレディスの規格です、お客さん」と鋭く突っ込みを入れてきた。こうなればもう後には引けません。試着するのも面倒くさかったのでそれすらせずに買いました。  帰宅して身に着けてみると、さすがのラングさん、驚くほどしなやかな着心地はユーズドであっても健在。白いパッチを3点、肩章のように両肩と、胸のあたりに配しています。ミリタリー要素を昇華したデザインです。くたっと体になじみ、サイズ感もぴったり。
初めてこれを着て行く日には、古着のスカートを合わせました。  
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エディターNAMIKI

ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。

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