五感で味わう、寒河江発の「ものづくり」

 山形県寒河江市にあるセレクトショップ、GEA内に新たにオープンしたレストラン「0053」のプレスツアーに参加してきました。老舗紡績ニットメーカーの佐藤繊維が手がけるGEAは、アパレルからライフスタイルグッズ、さらにはグローサリーまで、「ものづくり」という視点にこだわったアイテムを取り揃える大型セレクトショップ。山形在住のアーティストや作家が手がける作品も数多く販売されており、地方独自のカルチャーを発信する注目スポットです。

 そんな地元の「ものづくり」を後押しする場に、今年新たにオープンしたのが「0053」。店舗所在地の郵便番号下4桁を店名にした、完全予約制のレストランです。もともと佐藤繊維の工場として使用していた石造りの酒蔵をリノベーションした店内は、天井が高く、開放的で落ち着きのある空間。

 シェフの磯野将大さんは、京都の名店、イル ギオットーネでイタリア料理の修行を積んだ後、アジア屈指のレストランであるシンガポールのイギーズで料理長を務めた経験を持つ凄腕の持ち主です。作り手の顔がちゃんと見える、地元の農家が作った伝統野菜や旬の新鮮な食材をふんだんに使った料理は、磯野さんの自由な発想によって色彩豊かなフルコースに生まれ変わります。山形在住の作家さんの器に合わせて運ばれてくる佇まいは、どれもアートピースのようで眼福!

 こちらは、鱒の切り身とトマトに、ジェネバというリンゴを使ったほんのり甘いソースと、山形の伝承野菜ツルムラサキを合わせた一品。大石田町の工房Kanbeのガラス皿が清涼感たっぷりで、五感がフルに刺激されました。

 もうひとつ印象的だったのが、鮎釣りのメッカでもある寒河江で採れた天然鮎ととうもろこしを春巻き風に揚げたもの。鮎の苦みととうもろこしの甘みが作り出す豊かなハーモニーの中に、ピリリとスパイスをきかせる山椒が大人の味わいです。幕末から続く平清水焼の窯元、青龍窯の小皿に入れた梅酢をつけて豪快にかぶりつく、斬新なスタイルで振る舞われました。
 地元のものづくりにこだわりながら、素材を活かしたメニューづくりは流石のひとこと。しかも、こんなにリッチなフルコースでなんと¥5,000! 東京だったらあり得ない価格設定に感動しながら、洗練された味わいに舌鼓を打った一日なのでした。夜は完全予約制ですが、昼間はカフェとしてランチやスイーツも楽しめます。ぜひ足を運んでみてください。

“エディターHAYASHI”

エディターHAYASHI

生粋の丸顔。あだ名は餅。長いイヤリングと丈の長いスカートが好き。長いものに巻かれるタイプなのかもしれません。