モードは拡張し伝播する。ポップアートを身にまとう

1950年代、伝統的なファインアートへのカウンターとして生まれたポップアート。大衆的、即物的といった言葉で表現されるこの芸術が、デジタルデバイスによって瞬時に世界中に拡散される時代がやって来た。この潮流はモードの可能性を切り開く新たなファクターに。着る人をキャラクター化する、デフォルメされたデザインと色彩─。ユニークな美は伝播され、時代を象徴するカルチャーへと形を変える。

私は動くスカルプチャー

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ケープ¥736,230・シャツ¥327,800・パンツ¥295,900・靴¥250,800/ルイ・ヴィトン クライアントサービス(ルイ・ヴィトン)

イタリアのデザインアトリエ・フォルナセッティと、ルイ・ヴィトンのコラボレーションから。構築的なデザインのケープは彫刻のような フォルムを描き、シンプルなデニムスタイルを非日常の境界線へと連れ出す。

反復と増殖のレイヤードスタイル

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ベスト¥115,500・シャツ¥63,800/コム デ ギャルソン(コム デ ギャルソン・シャツ)

現代のアートシーンを牽引するKAWS。現在、展覧会『KAWS TOKYO FIRST』も開催中だ。ソリッドなシャツやベストに落とし込まれたのは、代表的なキャラクター「COMPANION」や、ブランドネームを描き下ろした文字のグラフィック。

自分自身をペイントするように

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コート¥184,800(sacai × KAWS)・ソックス¥17,600(sacai)・靴¥85,800(sacai × George Cox)/sacai

KAWSのオリジナルカラーパレットを忠実に再現した、鮮やかなマルチカラーのダウンコート。黒のソックス&シューズと合わせたミニマムなスタイリングで、ウェアラブルアートの愉悦を堪能したい。

最強のモードモンスター、現る!

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コート¥324,500・ブラ¥67,100・ニット¥94,600・パンツ¥189,200・バラクラバ¥77,000・マフラー¥60,500・グローブ¥75,900・ブーツ¥130,900(すべて予定価格)/ミュウミュウ クライアントサービス(ミュウミュウ)

甘いカラーリングとパフィなフォルムで、ポップかつユーモラスな存在感を演出。

既存の概念を軽々と飛び越えて

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トップス¥765,600(参考価格)・パンツ¥344,300/ロエベ ジャパン クライアントサービス(ロエベ)

民族衣装を彷彿とさせるビビッドなトップスにあしらわれた、極端に大きな3つのバックル。服とはかくあるもの、という常識を超越したクリエーションは、常に私たちの感性を刺激する。

現代に生きるポップアートの伝道師。KAWSって一体何者?

text: Sakiko Fukuhara

誰しもが一度は目にしたことがあるだろうKAWSの作品。現在開催中の展覧会『KAWS TOKYO FIRST』では初期から現在まで、KAWSを語る上で欠かせない作品が集まり、観る者に新しい視点と"楽しみ"を与えてくれる。ポップアートの代名詞ともいえるKAWSの表現とは? 日本での展覧会の監修を務めた山峰潤也氏が解説する。

Profile
1974年、アメリカ・ニュージャージー州生まれ。90年代初めに、グラフィティアーティストとして頭角を現す。2001年には『KAWS TOKYO FIRST』をパルコギャラリーで開催。近年では『KAWS:HOLIDAY JAPAN』(2019年)も話題に。

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1.アーティストKAWSの誕生

10代で夢中になったスケートボードをきっかけに、グラフィティの世界にのめり込んでいったKAWSことブライアン・ドネリー。バス停の看板広告にペインティングを施した「サブバータイジング」作品で一躍脚光を浴びた。注目を集める場所に"ボムする"というグラフィティライターの習性に倣うかのように、以降彼の表現はストリートからビルボードへ、そしてキャラクター、ファッションの世界へと広がりを見せていくこととなる。

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2.キャラクターと裏原カルチャー

KAWSを代表するキャラクター、COMPANION(b)やCHUM(c)、KIMPSONS(d)が生まれた背景には日本のカルチャーとの密接な関わりが挙げられる。当時の東京はDCブランドブームが去り、裏原宿を中心に、スケートボードやグラフィティなど、ストリートカルチャーが隆盛を誇った時代。1999年には「バウンティハンター」の依頼により、"仲間"という意味を持つCOMPANIONが誕生し、2001年には飯田昭雄キュレーションによる『KAWS TOKYO FIRST』がパルコギャラリーで開催された。また、2006年にはメディコム・トイとともにブランド「Original Fake」を展開するなど、KAWSと東京にまつわるエピソードは数知れない。美術館からではなく、ストリートから生まれたアーティスト。親しみやすいキャラクターを相棒に、ミュージアムより先に大衆からの圧倒的人気を得たKAWSは、ポップカルチャーとハイアートが入り混じる時代の象徴ともいえる存在なのだろう。

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3.ペインティング作品の変化と進化

日本での初個展で発表された《PACKAGE PAINTING SERIES》(d)は、キャンバス画がパッケージングされたユニークな作品。絵画作品を商品パッケージに入れるという行為からも、権威主義に対するKAWSのアンサーが感じとれる。色面分割で描かれる、極めてフラットで筆跡を感じさせない作風も、アニメーターとして働いていた経験を持つKAWSならでは。2010年以降はキャラクターをかたどったシェイプト・キャンバスを用いた作品(ef)も目立つ。フレームの中にいろいろなキャラクターのディテールが混ざり合い、絵柄の分解と再構築を意識した作品ともいえるだろう。また、近年のペインティング作品はミュージアムにも合うサイズ感へとダイナミックに変化。量産されるプロダクトとして誕生したCOMPANIONも、今ではブロンズ彫像と化し、ストリートから美術館へ、そしてパブリックアートとして、その存在は拡張を続けている。

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4.さらなる新しい表現方法

グラフィティライターとして始まり、キャラクター作品、美術館での展示発表、パブリックアートで社会の中に浸透していったKAWS。インスタグラムでは160万を超える「#KAWS」の投稿がされ、インターネットの台頭とともに、彼の作品は私たちの想像を超えた次元へと進化を続けている。昨年発表された《HOLIDAY:SPACE》(g)は、宇宙飛行士COMPANIONを気球に乗せ、成層圏まで送り込んだという作品。また世界12カ所の所定の場所にカメラをかざすとバーチャルアートが登場する、アプリ「Acute Art」を使用したARアートも制作。日本では渋谷のスクランブル交差点に巨大なCOMPANIONが出現した(h)。空を超えた成層圏、そして仮想空間にも進出するKAWSの存在からますます目が離せない。

5.コレクターとしてのKAWS

世界各地のアーティストと交流し、購入した作品が投稿されるKAWSのインスタグラムは、彼の日常が垣間見られる貴重な場所。開催中の『KAWS TOKYO FIRST』では、アート作品に囲まれたKAWSのスタジオを再現した空間(a)も展示されている。そのコレクションはヘンリー・ダーガーやマイク・ケリー、横尾忠則や五木田智央まで。アーティストを知り、インスピレーションを受けながら制作を続けるKAWSのヒューマニティに触れられるだろう。

KAWS TOKYO FIRST
国内初の大型展覧会となる本展では、絵画、彫像、プロダクツのほか、KAWSのプライベートコレクションも展示される。
会期:10月11日(月)まで
会場:森アーツセンターギャラリー
https://www.kaws-tokyo-first.jp/

SOURCE:SPUR 2021年10月号「ポップアートを身にまとう」
photography: Mitsuo Okamoto styling: Tomoko Iijima hair: Yusuke Morioka〈eight peace〉 make-up: Yuka Hirac〈VOW-VOW〉 model: Elena

FEATURE
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