桐野夏生さんが語る、ジュエリーが人生にもたらす喜び

指先に光るリングを目にすると、手にしたときの喜びや思いが蘇る。耳もとを彩るダイヤモンドのピアスが、落ち込んだ自分を勇気づけてくれる。ファッションを愛する者は皆、ジュエリーの力を信じて、ともに歩んでいる。あなたの人生に素晴らしい彩りを与える、"たったひとつ"を探して。

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「ネックレスで胸もとをデコラティブに飾るスタイルが好き」と語る桐野さん。その膨大なコレクションから一部を紹介。
(写真右から)大好きな色石であるガーネットがあしらわれた、ショーメのピアスとネックレス。
カルティエのボールチェーンネックレスは直木賞を受賞の際、たまたま訪れたデパートでひと目惚れして購入したそう。
丸いクリスタルの輝くボッテガ・ヴェネタのネックレスはシンプルなスタイルのアクセント役として重宝。
「M」のイニシャルペンダントは、サンフランシスコで購入したジニー ペイヤー。
パールとゴールドチェーンが連なるシャネルのチョーカー、インタビューでも触れているショパールのダイヤモンドリング、あえてマットに仕上げたオニキスに惹かれたというポメラートのリングなど、審美眼の鋭さを感じるラインナップだ。

幻想的な輝きを放つガーネットが印象的なピアスやネックレス、パールやゴールドがデコラティブにあしらわれた、ゴージャスな多連ネックレス。コンテンポラリーアートのように洗練された、ゴールドのネックレス。どこかキッチュなパーツがきらびやかに連なる、見ているだけで心の弾むアンティーク……。作家・桐野夏生さんのジュエリーコレクションは、唯一無二の個性にあふれるものばかり。よくあるオーソドックスなピースよりは、見たことがないディテールや、ひとくせあるデザインが桐野さんのお気に入りとなっている。

「素敵なジュエリーは世にあふれるほどありますが、欲しいと思うのは、ひと目見て『絶対に身につけてみたい!』と強く惹かれたもの。だから購入しようか迷ったときは、買わないことにしています。本当に心を奪われたジュエリーなら、迷いはないはずですから」


そんな運命的なジュエリーとの出合いを、何度も経験してきた桐野さん。中でも大切な存在なのが、ダイヤモンドが直線的にあしらわれたショパールのリングだ。ブティックを訪れた際にふと目に留まり、そのきらびやかでありつつコンテンポラリーなデザインに魅入られた。折しも著作が米エドガー賞にノミネートされたばかり。「頑張ってきた自分に記念品を贈る」という気持ちに背中を押され、思い切って購入した。


「こういった高価なジュエリーを自分のお金で購入するのは、このときが初めての経験だったはず。ものすごく気合が必要でしたが、これを手に入れたことで、ひとつの壁を越えたような気がしたことを覚えています。以来20年ほどほぼ毎日身につけている、私にとってお守りのような存在のリングです」


パーティなどでドレスアップする機会にはもちろん、ちょっとした外出でも、宝飾品を必ず身につけるという桐野さん。自らにとってジュエリーは、「生きる上で必要不可欠なもの」だと話す。


「うっかり何もつけずに外出したときは、なんだか裸でいるような、不安な気持ちになります。できれば、寝ているときもお風呂に入っているときも、24時間常にジュエリーをつけていたい。日々の生活になくてはならないものですね」


 お手本としているのは、インパクトの強いアクセサリーをさらりと取り入れる海外の大人の女性たち。大ぶりのネックレスを知的にまとう姿が話題を呼んだ、イギリスのテリーザ・メイ元首相もその中のひとりだと言う。


「デコラティブなネックレスを、白いTシャツの上にさらりとつけるような着こなしができるようになりたいですね。とはいえ実際に合わせてみると、『自分には華やかすぎるのでは』と少し不安になることもあるのですが……。でも、そこで尻込みしてはつまらない。臆する自分を乗り越えて、これからもさまざまなジュエリーを身につけていきたいですね」

桐野夏生

きりの なつお●作家。1998年『OUT』で日本推理作家協会賞、’99年『柔らかな頰』で直木賞を受賞。代表作に『グロテスク』『残虐記』『東京島』『ナニカアル』など、受賞歴・著書多数。今年3月には代理母出産を扱った最新作『燕は戻ってこない』を上梓。

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