2026.07.10

箱根で叶える“美食おこもり宿”。水素調理のカウンター割烹と青葉を満喫

食関連の仕事をしている人に勧められ、箱根・強羅で静かに心を解き放つ“おこもり旅”へ。訪れたのは、割烹カウンターに据えた美食宿「強羅花扇 円かの杜」。青葉がまぶしい初夏、箱根登山鉄道の車窓を流れる青葉に癒されながら辿り着くこの宿で待っていたのは、水素調理が引き出す素材の旨みを楽しむ美食と、温泉、そして森に包まれるようなエステと滞在。五感を解放する宿をレポートする。強羅への足取りは、日本最古の電車、1919年開業時からのモハ1形2形は格別な情緒を味わえるので、おすすめしたい。

食関連の仕事をしている人に勧められ、箱根・強羅で静かに心を解き放つ“おこもり旅”へ。訪れたのは、割烹カウンターに据えた美食宿「強羅花扇 円かの杜」。青葉がまぶしい初夏、箱根登山鉄道の車窓を流れる青葉に癒されながら辿り着くこの宿で待っていたのは、水素調理が引き出す素材の旨みを楽しむ美食と、温泉、そして森に包まれるようなエステと滞在。五感を解放する宿をレポートする。強羅への足取りは、日本最古の電車、1919年開業時からのモハ1形2形は格別な情緒を味わえるので、おすすめしたい。

INDEX

緑あふれる箱根へ。青葉とともに始まる小さな旅

強羅・円かの杜の緑と木に包まれるロビー

木の美しさが生かされたロビーは自然との一体感が味わえる。

辿り着いた「強羅花扇 円かの杜」は、全20室の静謐な宿。館内にはゆかりある高山のヒノキやケヤキの長い1枚板など木材がふんだんに使われ、梁やカウンター、客室の細部に至るまで、木の質感が空間を穏やかに整える。豊かなグリーンと木が相まって、自然に身を委ねるような心地よさがある。


強羅円かの杜のウエルカムプリン

チェックインの際には、ティーなどの飲み物と専属パティシエのプリンが提供される。

“泊まれる割烹”という贅沢。カウンターで味わうライブ体験

強羅・円かの杜のカウンター割烹「むげん」

希少価値の高い神代欅の一枚板のカウンター。

今回の旅の目当てとなるのが、カウンター割烹「むげん」。料理長・柴尾良太氏の手仕事を間近で眺めながら味わう体験は、特別な時間だ。仕入れはネットワークを活かし、その日最良の食材を厳選。水素を熱源とした調理法で、燃焼時に二酸化炭素を排出せず、水蒸気のみを生むクリーンエネルギーであると同時に、高火力で食材の水分を保ちながら加熱できるのが特徴。そして、飲んで、食べて、そのまま部屋へ戻れるという導線もまた、この空間の価値を高めている。



カウンターで味わう期待と高揚、締めは意外性ある一品へ

カウンター割烹「むげん」の料理長・柴尾良太氏

元関取というキャリアを持つ柴尾さんは、有名日本料理店で修行を積み料理長に就任し、7年目を迎える。水素コンロを導入した次世代の日本料理をリード。

料理長・柴尾良太氏の手仕事を見つめながら、会話を交えて進む時間そのものが、ライブ感も味わえ、楽しみになるという話を聞いていたが、まさにその通りだ。食材や調理の意図をさりげなく教えてもらえたり、その日の気分や食欲に合わせて量の調整をお願いできたりと、食べ手側の自由度が高いのも心地よい。

椀物では、出汁の美しさに思わず息をのむ。刺身は塩や海苔醤油で、素材そのものを引き立てる構成。個性が強く印象に残ったのは、蛤や玉ねぎ、生姜などで構成された煮物。やさしさの中に芯のある味わいが宿る一皿だ。焼き物は甘鯛、水素調理の真価が発揮される一品。続く近江牛ステーキは、ほどけるような食感とともに、焼きの香りが豊かに広がる。

そして締めは意表を突く“貝出汁カレー”。アサリや牡蠣、蛤などの6種の貝の旨みが凝縮された少しのライスとルーのみのカレーで軽やかな一皿。すでに満腹でも不思議とスプーンがさくさくと進む。

カウンター割烹「むげん」の先付

先付 アメーラトマト 天豆 生ハム モッツァレラチーズ 山椒オイル

カウンター割烹「むげん」の先付

先付 茄子 人参 ヤングコーン スナップエンドウ ズッキーニ 帆立 ミックスチーズ ,マスタード味噌

カウンター割烹「むげん」の椀物

椀物 車海老 蕪 山葵菜

カウンター割烹「むげん」の造里

造里 鱸 のどぐろ 烏賊 キャビア

カウンター割烹「むげん」の煮物

煮物 蛤 玉葱  クレソン 生姜

強羅・円かの杜の館内の蔵バー「こだま

蔵バー「こだま」

フロントのレセプションやラウンジ「欅」同様、神代欅の一枚板カウンター。

さらに魅力的なのは、その余韻が途切れないこと。食後は館内の蔵バー「こだま」で一杯を楽しみたい。旅館のメリットでここでの続きでカクテルや水割りを部屋に届けてもらい、そのままくつろぐこともできる。料理とお酒、そして空間がシームレスにつながり、移動の煩わしさなく夜が静かに深まっていく。

“食べて終わり”ではなく、その先まで心地よさが続く——それもまた、この宿ならではの贅沢だ。館内はすべて畳敷きで、靴を脱いで過ごす設えのためか、ホテルとは異なる、どこか私邸のようなリラックス感が漂うのだ。

カウンター割烹「むげん」の朝食「わさび飯」

すりたての山葵をのせながらいただく。

朝食もカウンター割烹「むげん」でいただく。静かな空気のなか供される卵かけご飯は、削りたての鰹節やすりたての山葵を添えた、どこまでもシンプルな一膳だ。しかし一口頬張ると、その印象は一変する。米、卵、鰹節、山葵、それぞれの素材の輪郭が鮮やかに立ち上がり、山葵の風味で驚くほどご飯がすすむ。

常連客のなかには、自宅で再現を試みたものの「どうしてもこのおいしさにならなかった」と語る人もいるという。それは厳選された食材はもちろん、炊飯や鰹節を削る技術など、職人の細やかな仕事が重なり合って初めて完成する一皿だからだろう。

飾らない料理だからこそ、ごまかしが利かない。その完成度の高さが際立つ朝食は、一日の始まりを穏やかにスタートさせ、旅の記憶として深く残る味わいだった。

森のエステで、もう一段深く整う

離れのトリートメントルーム「MORI」緑に囲まれた施術

目を開けて、すぐに視界に入る森の緑の素晴らしさ。

離れのトリートメントルーム「MORI」もこの宿でしか味わえない特別な時間だ。森と一体化するような空間で受ける施術は、リラクゼーションを存分に体験できる。施術が終わり、目を開けた瞬間に窓から見える緑はその美しさに圧倒される。心底ときほくされる。

温泉や岩盤浴で体を温めた後に受けることで、巡りがより深まり、リラックスと開放感を高める。

大浴場と部屋の露天風呂、異なる泉質を味わう、

箱根で叶える“美食おこもり宿”。水素調理の画像_13

2つの自家源泉からの掛け流し。

温泉もまた、この宿の大きな魅力のひとつ。箱根らしい豊富な泉質を活かし、大浴場と客室露天で異なる湯を楽しめる設えになっている。大浴場はナトリウム-塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩泉。古い角質をやさしく落としながら、しっとりとしたうるおいを肌に残す。一方、客室の露天風呂はナトリウム-塩化物泉で、より保湿感のある穏やかな湯あたりが特徴だ。

気分や時間に合わせて湯を使い分けられる贅沢。森の静けさに包まれながら湯に身を委ねていると、思考がゆっくりとほどけ、身体の芯までやわらいでいくのを感じる。

強羅・円かの杜 部屋の露天風呂

開放感あふれる部屋の露天風呂はなめらかな優しい湯。好きなタイミングで入れるのも嬉しい。

箱根で叶える“美食おこもり宿”。水素調理の画像_15

日本文化を一度に体験できる場所として、海外ゲストが魅了されるのはもちろんのこと、日本人としても再発見することが多いはず。

美食、癒やしとくつろぎだけで終わらないのも、この宿の魅力だ。円かの杜では、館内には音楽や映画のプロデューサー立川直樹氏がセレクトした音楽がバーで聞けたり、ブックディレクターBACHの幅允孝氏による選書も配され、思いがけない出合いが感性を刺激する。専門家たちによる仕掛けが、大人の時間を充実させてくれる。強羅の自然に身を委ねる滞在は、日常のノイズを遠ざけてくれ、“全神経を解放する旅”となるはずだ。


円かの社
円かの社の画像_16

神奈川県足柄下郡箱根町強羅1320-862

TEL:0460-82-4100