全盲の舞台役者であり、熱烈な演劇ファンでもある美月めぐみさんは、2024年5月に都内で開かれた記者会見でこう話した。
「障害のある人も心から観劇を楽しめるように、劇場スタッフの方々の理解が進んだらどれほどいいだろうと常日頃思っていました。私は視覚障害者であるにもかかわらず、劇場側にそういった要望をすることをずっと怠ってきました。自分さえ我慢すればいいと思っていたからです。帝国劇場の建て替えに関する報道を機に、行動を起こそうとしている人たちがいると聞いたとき、これまでの自分を反省しました。私も呼びかけ人となり、この活動に参加しよう。そう心に決め、今ここに座っています」
全盲の舞台役者であり、熱烈な演劇ファンでもある美月めぐみさんは、2024年5月に都内で開かれた記者会見でこう話した。
「障害のある人も心から観劇を楽しめるように、劇場スタッフの方々の理解が進んだらどれほどいいだろうと常日頃思っていました。私は視覚障害者であるにもかかわらず、劇場側にそういった要望をすることをずっと怠ってきました。自分さえ我慢すればいいと思っていたからです。帝国劇場の建て替えに関する報道を機に、行動を起こそうとしている人たちがいると聞いたとき、これまでの自分を反省しました。私も呼びかけ人となり、この活動に参加しよう。そう心に決め、今ここに座っています」
団体名にある「アクセシブル(Accessible)」は、英語で「利用できる」という意味。さまざまな障害がある人も利用しやすく、誰もが気持ちよく楽しめる劇場を作ってほしいという思いが込められている。
「ウィー・ニード・アクセシブル・シアター」の署名活動は、帝国劇場を運営する東宝株式会社と、国の行政機関(文化庁、国土交通省、厚生労働省、経済産業省、内閣府)に働きかけることを目的に進められている。2024年5月10日、同団体は東宝と面会し、建て替えに際して障害当事者の意見をヒアリングすることを求める要望書を、2万1千筆の署名とともに提出した。その後の記者会見で、団体メンバーの廣川麻子さんは次のように振り返った。
「東宝の方と意見交換をしたところ、帝国劇場の建て替え事業は、東宝、三菱地所、出光美術館の3社が共同で進めるプロジェクトであり、これからいろいろなことを協議していかれるタイミングだということがわかりました。今回私たちが提出した署名や要望書、資料については3社間で共有してくださるとのことだったので、今後の動きに期待したいです」
誰も排除しない劇場に求めるもの。ハード面だけでなく、情報保障の充実を
「ウィー・ニード・アクセシブル・シアター」は、署名に賛同した人たちを対象に、新しく建て替えられる帝国劇場に求めることについて、自由回答式のアンケート調査も実施。10日間で約140名の回答が集まった。最も多かったのは建物のバリアフリーに関する要望だったが、それ以外にも字幕表示や手話通訳、音声ガイドなどの情報保障の充実を求める声が数多く寄せられた。団体メンバーの山崎有紀子さんは、自身の思いをこう語る。
「私は難聴のため、舞台に字幕をつけてほしいと普段からさまざまな劇場にお願いをして観に行っています。字幕公演は小劇場や公立劇場を中心に少しずつ増えていますが、残念ながら帝国劇場の公演に字幕表示はありません。台本データの入ったタブレットを借りることはできますが、役者さんがどの部分を話しているか分かりにくく、字幕がほしいと思うことが多々あります。
演劇関係の方に字幕がつけられない理由を尋ねると、本当は対応したいがその費用がない、人手が足りないなどといった声をいただきます。コロナ禍による疲弊もあり、劇場側の自助努力には限界があるのでしょう。多様な人が集まる豊かな場に劇場が変わっていくためには、国や自治体による観劇サポートに特化した助成金制度などの支援が必要だと感じています」
当事者の声を聞き、ともに作り上げていく
アンケート調査では、障害への理解ある対応を願う声も多く集まった。「耳がきこえないといっても、きこえの程度によって求めるサポートはまったく異なります。障害というのは多様だということ、そしてさまざまな人が劇場に来ているということを理解してもらいたい」と山崎さんは強調する。
こうした演劇ファンの生の声を届けるべく、「ウィー・ニード・アクセシブル・シアター」はアンケート結果をまとめた資料も東宝に提出した。劇場側に求められるのは、障害がある当事者の意見や希望を聞く真摯な姿勢だ。「新しい建物ができても、行ってみると使いづらく感じることがあり、残念に思うことがよくあります。東宝さんは、劇場のアクセシビリティについて専門家の意見を聞いていらっしゃるということでしたが、実際に劇場を使っている障害当事者の意見も十分に聞いたうえで、よりよい劇場を作ってもらいたいです。そのプロセスが、今後のスタンダードになっていけば」と廣川さんは期待を込める。