性にまつわる悩みの中でも、昨今話題になる機会が多い“セックスレス※1“。まだまだ相談しにくいし、近しい友にやっとの思いで話すのが精一杯。どう乗り越えたらいいのかわからないという声が多いよう。日本では増加傾向にある“セックスレス”について、アンケートを実施。寄せられた1,614人のリアルな声や数値などの結果発表を第1弾、第2弾に分けてお届けする。
2024年3月に日本家族計画協会より発表された調査では、セックスレスである夫婦の割合が64.2%と過去最高値をマーク。とはいえ、パートナーとの関係性や心地よいと感じる頻度も人それぞれ。セックスレスは一概に問題とは言えないものの……悩みを抱える人が多いのが現状。1,614人という、想像を超える方々から寄せられた体験談や解決策やリアルな声など、アンケート結果を2回に分けて発表。第1弾では、セックスレスのきっかけやカップルの関係性、さらにはレス状態への満足度についてレポートする。
※1 セックスレスとは、「特別な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクト(挿入等まで含む性交渉だけでなく、ペッティングやオーラル等も含む)が1ヶ月以上なく、その後も長期にわたることが予想される場合」と1994年に日本性科学学会により定義されている
※2 本アンケートは2024年4月5日〜20日に実施。なおアンケートにて〈答えたくない〉という回答を選択した人数は以下グラフに含まないものとする
1. セックスレス状態の人は過半数の800人以上! きっかけは、ライフステージの変化
まず始めに、現在パートナーとセックスがあるかどうかたずねたところ、1,614人中〈ある〉と答えたのが602人、〈ない〉と答えた、いわゆるセックスレスの人は、844人という結果に(それ以外は〈答えたくない〉を選んだ方々)。さらに、セックスレス経験者の大多数が、そのきっかけをはっきり〈ある〉と認識していた。
【セックスレスのきっかけは自分 or 相手?】
30代前半まではセックスレスのきっかけを〈相手から〉とする回答が多い一方、35歳以上になると、ほとんどの年代で〈自分から〉が上回っている。これには女性のライフステージの変化も関係していそう。
【さまざまなレスのきっかけ(複数回答あり)】
目立ったのは、〈多忙により気持ちに余裕がない、疲れている〉、や〈タイミングが合わない、時間がない〉という項目。日々さまざまなタスクに囲まれている、現代のライフスタイルも影響しているようだ。とはいえ、寄せられた声からもわかるようにそのきっかけは様々。
▼回答者の声
[多忙、時間がない]
「仕事が多忙でいつか余裕ができてから、と思っているから」たまみ:25〜29歳
「疲れてるのに誘われて起きるのが苦痛だった。無くていいのならそれにこしたことはない。しなくても今も変わらず仲が良い」みゆあい:40〜44歳
「子育てで体力を使うので余力がない。自分の時間が少ないので、する時間より趣味の時間を作りたいから」あやた:35〜39歳
[妊娠・出産等による変化]
「子供が生まれて間も無く、まだ授乳中で夜中も2、3時間おきに起きているタイミングで、断っても断ってもしようとするので本当に触られるのも嫌になってしまい、現在に至ります。もっと気遣いがあれば。本当にそのひとこと」KAI:45〜49歳
「子供に対する接し方に不満を持ち始めて、相手の嫌なところばかりが目につくようになった」けいたん:45〜49歳
「妊活頑張っていて、でも授からなくて、セックスが義務的になってきたのがきっかけの一つだったと思う」たーこ:40〜44歳
「きっかけは第3子の出産。あとは私以外にパートナーがいるから、私が必要なくなった。子供たちの『母親』という仕事を任されただけの人になっている」おにくちゃん:50〜54歳
[性交痛など身体的変化]
「突然の性交痛がきっかけ。無理に性行為をすると激痛な上に、1週間以上変なおりものに悩まされるので、だんだんセックスが億劫に。パートナーに相談したが理解が乏しくうやむやのままにされたので、そのままセックスレスとなった」Quu:40〜44歳
「セックスをする時に彼の勃ちが悪いのが続いて、誘いづらくなった。そうしたら彼からも誘って来なくなった」ぴーまん:30〜34歳
[その他]
「結婚をするかどうか曖昧な時にレス気味になり、他に好きな人ができて決定的になった。その後復縁したが、今でも好きな人を思い出してしまう」まみ:35〜39歳
「一度我慢の限界でアプリを入れたのですが、それが旦那にバレて話し合いをした結果、2年のレス状態から少し復活しました。頻度はまたどんどん下がり、レスになりそうですが、一時的な起爆剤にはなりました」いろは:30〜34歳
「同居して段々とだらしなくなって、男性としての魅力を感じなくなったから」さとさと:45〜49歳
「誘っても断られてばかり。すべてこちらから。以前は1ヶ月に1回誘っていたが、どれだけ性欲が強いの?と言われてこちらから誘うのも嫌になった」kick:40〜44歳
「相手が寝る前に携帯で漫画を読むようになってから、そういう雰囲気がなくなった」はな:30〜34歳
「一緒に眠る時間、くっついてイチャイチャする時間が心地よくて自然とセックスがなくなっていった」M:25〜29歳
【セックスレスのきっかけが妊娠・出産の比率】
先ほどのグラフで次に多かった〈妊娠・出産による生活習慣の変化〉〈妊娠・出産による性欲、セックスへの意識の変化〉を選択したのはなんと、セックスレスのきっかけが明確にあると答えた人の35%。約3分の1がセックスレスと妊娠・出産経験による様々な変化が関連していると考えている。
さらに実際に寄せられた声を見ていくと、妊娠・出産、そして育児をきっかけに、子どもと寝室が一緒になるなど生活環境や自身の身体の変化、またパートナーとの関係性の変化が、セックスレスへとつながっていることがわかってきた。
▼回答者の声
「出産してからは自分の身体も変わったし、セックスについての優先順位が変わり、そこまで深く考える余裕がない」マスカットちゃん:30〜34歳
「妊娠中一度試みたが、相手の気持ち的に難しく中断。その後出産したが、身体の変化についていけない、子育てに精一杯で、全くその気になれないままセックスレスになった」ふみ:30〜34歳
「きっかけは、育休明けの復職後に配偶者の協力を得られなかったことによる、ストレスや恨みが山積したこと。そのせいで相手に興味や期待を抱かなくなった」産後の恨みは一生:30〜34歳
「セックスに対して、『相手のためにするもの』『疲れるもの』『乱れた布団を洗うのは私』などと、マイナスイメージが大きいことや、気力と体力の消耗が先行してしまい、その気になれない」カリナ:30〜34歳
「結婚後すぐに妊活を始め、排卵日にプレッシャーをかけたことで主人がEDとなり、セックスレスになった」とんとんび:40〜44歳
多忙であることや、タイミングが合わないという外的要因に加えて、妊娠・出産・育児などライフステージの変化に伴う相手への気持ちの変化がセックスレスに影響していることがわかった。それでは、セックスがある人、ない人でパートナーとの関係性に違いはあるのだろうか? 調査すると気になる結果が見えてきた。
【セックスの有無とパートナーとの関係】
セックスがあるカップルは〈仲が良い〉が311人、つまり全体の76%と圧倒的に多く、関係性が良好であることがわかる。一方、セックスレスであるカップルを見てみると、意外にも〈仲が良い〉が287人、つまり全体の58%とダントツで多く、セックスレスであるからといって、パートナーと不仲であるとは言い切れないようだ。アンケートの回答を見るとその理由には、セックスがなくとも満たされている人が多いことが挙げられる。
▼回答者の声
「毎日充実してること、日々スキンシップをとれていることもあり、今すぐ解消したいと思わない」ちゃこ:25〜29歳
「3、4か月に1回ですが、心のつながりが強いため何の心配もありません。親友みたいな旦那です」むぎ:30〜34歳
「最初の頃は悲しかったけど、お互いの愛情は何も変わらないと気づいてから、一緒にくっついて寝るだけで幸せです」yuks:40〜44歳
次いでセックスがないカップルに目立っているのが120人、つまり全体の24%を占める〈会話が少ない〉。「妊娠・出産によりスキンシップが減った」「セックスレスについての話し合いもできない」といった声もあり、すれ違いが多く日常のコミュニケーションが少ないことは、セックスレスと密接に関係している模様。
3. 「セックスがなくても満足」について、年代別満足度調査
次に、セックスがない人の満足度を見ると、どうやら必ずしも「セックスレス=不満」というわけではないようだ。40代後半からはレスの現状に満足している人数が加速傾向に。
【〈セックスなし〉と答えた人の満足度】
現状セックスがない人の多くは、全年代で〈やや不満〉〈不満〉だと感じている人が一定数いるものの、30代後半に差し掛かると現状を〈満足〉だと感じる人が増え始め、45歳〜64歳では〈満足〉だと感じる人が〈不満〉〈やや不満〉ともに上回る結果に。
セックスレスに対して「満足」と感じる理由は、パートナーやセックスそのものに対する考え方の変化、性交痛など、人それぞれ。年代によって、不満に感じるか、満足に感じるかは異なるということがわかる。
▼回答者の声
「したいと言われたタイミングで私から、痛いからできなくてごめんね、更年期を理解してほしいと伝えた」ray:50〜54歳
「夫に悪いなと思う時もあるが、つい最近円錐切除手術をしてセックスが怖くなったので、このままがいいなと思っています」CCC:40〜44歳
「翌日が仕事の日は早く寝たいな、という気持ちからセックスの回数が減り始めると、濡れていても性交痛を伴うようになり、痛いからとどんどんしなくなる」スギムラ:35〜39歳
「妊活に疲れてしまったのと、関係を持たなくても円満にできているため」チョコ:35〜39歳
「尊敬できなくなり、恋愛感情がなくなり、したくないと思いそこから変わりません」ミラ:35〜39歳
「こちらの気持ち良さではなく、相手本位のセックスになるので、嫌になりました」ガーコ:40〜44歳
「やっぱり子供が産まれてからかな。子供を作る行為、作業になった」なぎごん:35〜39歳
「相手を信頼したり思いやる気持ちがないとセックスどころか、会話さえできない。結婚当初から夫は私を思いやる気持ちがなく、人としての尊厳に欠ける扱いをされてきた。ほかに私を理解してくれるパートナーが現れたので、その方との関係を大切にしてお互いに様々なことを話し合っている。30年40年前の社会的模範となる価値観によって、社会や家族から期待された結婚生活を送ること、夫に従順で何も知らずに家事だけしているのが最高の幸せだと思い込まされていたが、今になって本当の自分の気持ちや人を心から愛おしく思う感情に気付いたから、それを抑え込むのはやめようと思った」キキ:50〜54歳
4. 必ずしも「レス=不満」ではない? 年代に応じて変化する感じ方
〈解消したい〉は20代に多く、35歳以降は〈レスのままで良い〉が増加【体験談あり】
セックスレスであると答えた人は、その現状をどう思っているのか? 年代によって、異なる回答が集まるという興味深い結果に。
【セックスレスの状況に対してどう思っているか】
25〜29歳では、〈不満なので解消したい〉〈不安なので解消したい〉という回答が多数でありながらも、35歳以降になると、〈このままで良い〉〈レスになって良かった〉が増加し47%と半数近くに増加。45〜49歳では全体の61%、50〜54歳では65%、55〜59歳では80%と、必ずしもセックスレスを解消したい人ばかりではないことが明らかに。なかにはこんな声も。
▼回答者の声
[このままで良い(現状に満足している)]
「たまに性交渉がないことが気になるが、10年ほどないので特段気にならなくはなった」momo:35〜39歳
「子宮筋腫が悪化してセックスが痛い上に、相手が遅漏気味で体力的にもしんどい。恋愛感情より愛情が増して、そばにいるだけでよくなった。キスしたり甘えたり、抱き合うだけで充分になった」ゆこ:50〜54歳
「セックスレス自体に不満はない。日常の接し方について不満があるので、その態度を改めてもらえないなら、こちらも触れたくないのでこのままで良い」yk:40〜44歳
[このままで良い(モヤモヤが残っている)]
「セックスは痛くてしたくないから満足ですが、触れ合いが無いのは不満」リアナ:45〜49歳
「しなくても不満はないが、周りの反応や風潮的にレスは良くないのかな、と思ってしまう。できればしたいと思う。ただ久しぶりすぎて恥ずかしい」aaa:25〜29歳
「彼は大切な恋人で一番の友人で兄のようで父のようでもある、かけがえのない存在だと気づき、セックスの有無に関わらずとても大切な人だと思えた。セックスレスのまま結婚して4年。レスが解消されればとても嬉しいけれど、毎日キスをして手を繋いで散歩する。それだけでとても幸せ。だけど他の人から見るとどう見えるんだろう、とは思う」たぼ:30〜34歳
「更年期に差し掛かり、自分の性欲もなくなっているので、寝室を分けたことについて別にいいか…と思いながらも、人に触れられない寂しさ、スキンシップがないことで愛を感じられない、なんとも言えない不安で自分の存在意義までわからなくなる時がある」かな:45〜49歳
「仲は良いが相手に性欲がなく、もうそういう関係になるのは無理なので、このまま女性として終わるのかと思うと寂しい気持ちにもなる」りんご:40〜44歳
レスを不満に感じる人は、書籍や動画でのセルフプレジャーを楽しむ割合が多い
セックスレスの現状に不満を抱えながらもうまく解消できない場合、その性的欲求をどのように満たしているのだろう?
【性的欲求の解消方法】
圧倒的に多かったのが、〈セルフプレジャー(書籍や動画)〉。〈性的関係がいる(パートナーには秘密)〉という回答も少なくなく、日本に根強くある「女性がセックスに積極的になるなんてはしたない」という風潮を覆すような、性に対してポジティブな姿勢が見受けられた。
一口に“セックスレス”と言っても、その裏側には、さまざまな想いや悩み、考え方があることがわかった今回のアンケート調査。みなさんのリアルな実情を知ることで、「自分だけじゃないんだ」と感じた人も多いのでは? 話題になるときには問題視されがちな“セックスレス”だけれど、大切なのは、一人ひとりが性に対して健康で心地よい状態にあること。必ずにも問題ではないということが結果にも。続く第2弾では、セックスレス解消法やパートナーとの会話や関係性などのアンケートの結果発表へ。
第2弾はこちらから>>