【榮倉奈々と未来への学び Vol.03】 BRING EBISU

社会のために知る、地球のために考える

榮倉さんと地球の未来について考える本連載。今月は衣類の大量廃棄問題に向き合う、新たなアパレルブランドの取り組みを知る

BRING EBISUを訪れた榮倉奈々さん
ニット¥36,300・シャツ¥33,000・スカート¥44,000・靴¥77,000/オーラリー ピアス¥39,600・リング¥42,900(ともにオール ブルース)・バッグ¥28,880・リップレザーケース¥10,780(ともにラ ブーシュ ルージュ)/エドストローム オフィス

今回訪れたのは……

BRING EBISU

古着から新しい服に再生するという取り組みを行なっているサステイナブルブランド・BRING。今回、訪れた恵比寿のショップには、再生ポリエステルを使ったおしゃれなアウトドアウェアが並ぶ。その使い勝手のよさと、環境に配慮した素材が評判を呼び、海外からのお客さんの姿も。

――脱カーボン社会が叫ばれる中、問題となっている服の大量廃棄。世界のファッション産業では年間9200万トンのゴミが発生しているという。そこで期待されているのが、中村崇之さんがディレクターを務める、BRINGの取り組み。古着の回収から、新しい服の生産まで一社で実現する。彼らのリサイクルの主役となるのは、再生ポリエステルだ。

榮倉 BRINGさんは、化学繊維のポリエステルに注目し、服のリサイクルに取り組まれていますが、始めたきっかけは何だったんですか?

中村 もともと創業者がサーキュラーエコノミー(循環型経済)を目指したことがきっかけです。これは資源の消費を抑え、ストックを活用しながら付加価値を生み出す経済活動で、廃棄物の抑制を目指すものです。それで当初は綿繊維から、バイオエタノールを再生していたんですが、この20年で、綿よりもポリエステルの生産量が増えて、服の6割がポリエステルになったんですね。

榮倉 そうだったんですね。

中村 結局ポリエステルをリサイクルできなければ、服の廃棄は抑えられないよねということになって、4年前から再生ポリエステル100%の繊維のリサイクルを始めました。

榮倉 リサイクルには、消費者から回収した古着を使っていますね。回収ボックスがショップに置いてあるのを私も目にしたことがあります。

中村 アパレルを中心に180ブランドと連携し、全国で服の回収をシェアするインフラを作っていて、年間約1500トンの古着が集まります。

榮倉 すごい量です。そこからポリエステルの服を仕分けするんですね。

中村 そうです。回収した服は北九州の工場に集められて、タグを見ながら、手作業で仕分けします。

榮倉 地道な作業ですね。でも、同じポリエステルの服でも色は違うし、汚れもありますよね。それはどうやって再生させるんですか?

中村 リサイクルには、ふたつの方法があるんですね。ひとつはマテリアルリサイクルというもので、分子構造はそのままでリサイクルする方法です。ウールだったら、ほぐしてフェルト状にして、綿毛に戻す「反毛」という方法があります。

一方、私たちがやっているのは、ケミカルリサイクルと呼ばれ、化学的な処理を施してリサイクルする方法です。当社が対象とするポリエステルの場合、分子がひとつずつ鎖のように連結していて、その鎖の中に染料が閉じ込められています。つまり服の色を抜こうと思ったら、鎖を切らなければならないんです。

榮倉 なるほど!

中村 私たちの技術では、この分子の鎖を断ち切って、染料をはじめ不純物を取り除き、きれいな状態にすることができます。そして解いた鎖をもう一度、つなぎ直して、再生ポリエステルを作るという仕組みです。

榮倉 まさにサステイナブルな原料なんですね。リサイクルされたBRINGの服も拝見しましたが、どれも肌ざわりがよかったです。そしてアウトドアウェアが多いですね。

中村 ポリエステルは汎用性が高くて、吸水速乾、UVカットといった機能性をつけやすい素材なんですよ。ウールとブレンドすると、ウールの風合いを残したまま、乾きやすくなったりします。だからポリエステルの付加価値を一番高められるのがアウトドアマーケットなんですね。

さらに再生ポリエステルの原料は、自社で使うだけでなく、他社にも販売しています、世界的アウトドアブランドも、うちの再生ポリエステルを使って服を作ったりしています。

榮倉 そうなんですね。私も知らずに着ているかもしれないですね。

全国3400の拠点に置かれている古着の回収箱
全国3400の拠点に置かれている古着の回収箱
榮倉奈々さんと中村崇之さん
右が今回お世話になった中村さん。「当社で製造したPET樹脂を溶かして、ところてんのように小さな穴から押し出します。すると細い糸ができるんです」という説明に興味津々の榮倉さん

リサイクルだけじゃなくて、服のリユースも大事です

榮倉 ところで、先ほどの消費者から回収した服は、ポリエステル100%以外のものはどうなるんですか。

中村 外部のリサイクル会社と連携して素材に応じて、自動車外装材やコートの原料などにリサイクルしています。ほかにはリユースされる服も多くあります。

榮倉 古着ということですか?

中村 はい。古着といっても日本の場合、着ることができるものが多いんです。クリーニングのタグがついていたり、未使用だったり。そういう服は、そのまま、古着店に売却します。日本の古着はきれいだから、東南アジアで人気があるんですよ。

榮倉 日本には物を大切に扱う文化がありますよね。私も、できるだけ長く着続けられる服を買うようにしていますが、Tシャツなどはどうしても古くなってしまうので、最後は雑巾にしています。

中村 いいですね。それも家庭でできる立派なリユースだと思います。

榮倉 環境問題の分野で欧米と比べて、日本は遅れていると言う方もいるけれど、今日のお話でさまざまな取り組みがあると知りうれしく思いました。

中村 日本はすごいですよ。年間60万トンのペットボトルが作られていて、そのうち約90%がリサイクルされているんです。それが可能になったのは、容器包装リサイクル法ができて、さらに色つきのペットボトルが制限されてから。無色透明のペットボトルに規制したことでリサイクルが加速しました。服のリサイクルにも何かしらの社会的な仕組みができれば、さらに進むはずです。

榮倉 化学の力でサステイナブルな社会を実現することは素晴らしい。私も応援していきたいです

BRING EBISUを訪れた榮倉奈々さん
(左)破裁されたポリエステルの服を有機溶剤の中で化学分解。最後には再生PET樹脂としてリサイクルする工程のサンプル
(右)再生ポリエステルとウールをミックスしたロンTや靴下など、BRINGではベーシックなアイテムを中心に品揃え。キッズウェアも展開

お話を聞いたのは……

中村崇之さん

「BRING™」ブランドディレクター。(株)JEPLANプロダクトマーケティング課課長。東京造形大学のメディア造形専攻から早稲田大学大学院国際情報通信研究科へ。2010年から同社に合流し、「BRINGTM」事業に従事。

NANA EIKURA

1988年、鹿児島県生まれ。2004年に俳優デビュー。映画『余命1ヶ月の花嫁』をはじめ、話題作に多数出演。昨年10月21日より世界同時配信されている、Amazon Originalドラマ「モダンラブ・東京」第2話に出演。

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