「推し」と結婚したヘイリー・ビーバーのシンプルな恋愛論

ギリシャ神話のロードス島にちなんだミドルネームを持つヘイリー・ロード・ビーバーは、神話のような恋をした。21世紀のスーパーアイドル、ジャスティン・ビーバーの大ファンだった彼女は、今「推し」その人と結婚している。

憧れのアイドルとの運命の恋

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photo:Getty Images

有名俳優と音楽家が連なるニューヨークのボールドウィン家にヘイリーが生まれたのは1996年。将来の夫との初対面は12歳ごろ。俳優の父スティーヴンに連れていかれたテレビ局で当時15歳のジャスティンと挨拶して家族づきあいに発展したというが、熱狂的なファンになったのはそのあとだったという。

高校を中退して人気モデルになると、友人つながりでジャスティンと再会。数々の女性と浮名を流す「バッドボーイ」だった当時のジャスティンとの交際は親から反対されたもののふたりは接近していき、2016年ごろには交際を公表することとなった。しかし、過酷なショービズに生きるジャスティン側に真剣交際をする余裕がなかったらしく、一年ほどで破局となった。

そして2018年ごろ、偶然再会したことで、友人として仲直りした……てっきりそう思っていたヘイリーに対して、ジャスティンはこんな態度だったという。「問題は、僕らは友達でいられないことだ」。こうして、結婚まで貞操を守る真剣交際がはじまり、それぞれ21歳と24歳で結婚したのだった。

なんともロマンチックな話だが、多くの神話と同様に、運命の恋人たちには過酷な展開が待ち受けていた。スーパースターの妻になったヘイリーは、常にパパラッチに追いかけ回されてプライベートがなくなった。ファン時代のSNS投稿が残っていたことも悪く働き、かつてジャスティンとスターカップルだった歌手セレーナ・ゴメスとの不仲疑惑も再三取りざたされている。

反ゴージャスな「シンプル」哲学

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興味深いのは、ヘイリー自体が、ゴージャス主義なセレブリティ神話のアンチテーゼのようなスタンスをとっていることだ。「私の仕事(モデル業)の大部分は、身体、顔、虚栄心が占めている」。そうも言いきる彼女は、スーパースターと結婚しても、名声を高めるような大型プロジェクトへの執着は薄いようだ。憧れの美のアイコンはたくさんいるものの、自身がその看板を背負う気はさらさらなく、むしろ「ビューティー好きのニューヨークの女」くらいに思ってほしいのだという。

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元々クラシックバレエの道を諦めてモデル業に集中することになった彼女は、171センチ程度の低身長だったため、通販サイトの仕事どまりだと思っていたという。しかし、お嬢さま育ちさながら「シンプル(な格好)だけどシック」なイットモデルとして才能が開花した。パパラッチに追い回されるようになった結婚後にも、持ち前の完璧主義で私服に気を配っているそうで、ゆるいジャスティンとのギャップでも話題になっている(お互い好きなように着飾っていた結果「気合い入りすぎの彼女&気合いのなさすぎる彼氏」ミームとしてバズったのだが、ときどきペアルックにも挑戦している)。

 

ヘイリーのファッション美学とは、白のTシャツやジーンズといったベーシックアイテムを極める「レス・イズ・モア(少ないほど豊か)」。2023年には、好きが高じたかたちで、ベーシック志向のスキンケアブランド「rhode skin」を経営している。

ジャスティンとの絆は信仰

夫婦関係についても、彼女は神話に取り合わない。というのも、ハリウッドには「スターカップルは破局の運命」といった言い伝えが存在するのだ。この説をぶつけられた彼女の反応は、シンプルだった。いわく、ヘイリーとジャスティンは、たくさんの困難を抱えながらも、信仰によって結びつけられている。

「私たち夫婦でもっとも大切なことは、私たちの信仰、私たちが信じるもの。それがなかったら結婚していないし、つきあってもいなかった」


  

じつは、お互い子どもだったときに家族づきあいが始まった理由は、親同士の福音派キリスト教信仰だった。そして、モデルになって彼と再会した場所も、破局を経て偶然出会ったところも、教会だった。結婚式で着たウェディングドレスには「死がふたりを分かつまで」というキリスト教の誓いの言葉が刻まれている。

宗教離れが進む北米の若年層に憧れられるスターカップルとして(やや保守的と思われやすい)ともに敬虔かつオープンな福音派キリスト教徒であることは、珍しい共通点でもある。簡潔な言葉で示されたその絆は、ファンとアイドル、イットモデルとスーパースターといった派手な表現と比べられないほど特別なものだろう。言うなれば、シンプルだけどシックで「レス・イズ・モア」だ。

辰己JUNKプロフィール画像
辰己JUNK

セレブリティや音楽、映画、ドラマなど、アメリカのポップカルチャー情報をメディアに多数寄稿。著書に『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)

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