2021年も海外ドラマが熱い！
ますます勢いが増す海外ドラマ界隈。2021年１月〜３月に配信された作品のなかから、今観るべきおすすめ８作品を、エンタメ業界につとめるシェリーとエディターRのふたりがピックアップ。比較的控えめなリリースが続いた今シーズン。話題作はもちろん、“地味だけどスゴイ！”と思わずうなる隠れ傑作までもれなく網羅。作品の見どころや楽しみ方を、“偏愛目線”でご紹介します。
Netflixオリジナルシリーズ『Lupin/ルパン』独占配信中
Photo by Yannis Drakoulidis © 2020 Wildside Srl – Sky Italia – Small Forward Productions Srl
Apple TV+ オリジナルシリーズ『CALLS』シーズン１配信中
Netflixオリジナルシリーズ『ウィンクス・サーガ: 宿命』独占配信中
Netflix製作の非英語作品として最大ヒットの記録を更新した『Lupin/ルパン』、『君の名前で僕を呼んで』の監督による初のドラマ作品『僕らのままで/WE ARE WHO WE ARE』、有名俳優たちがこぞって参加している音声ドラマ『CALLS』、ハリポタファン必見の『ウィンクス・サーガ: 宿命』ほか、今年の第一四半期のドラマトレンドがぎゅっと詰まったラインナップをお見逃しなく！
【海外ドラマ ナビゲーター】
シェリー
ディズニー・チャンネルのドラマを観て育ち、中学生のときに観た『24 -TWENTY FOUR-』に衝撃を受け、本格的に海外ドラマを観始める。高校生のときにハマった『新ビバリーヒルズ青春白書』の世界に憧れて、大学時代の５年間をカリフォルニアで過ごすなど、海外ドラマが人生に影響するほどに。アメリカのドラマ派ながら、最近ではヨーロッパ発のドラマをNetflixで見つけるのが楽しい。
エディターR
一日の終わりを、ワインとショコラとドラマで締めくくるのが愉悦のとき。“SATC”よりゴシップガール派。映像美と緻密な脚本ものが好物。最近は動画配信サービスのオリジナル作品のチェックに余念がない。作品でいうと、Netflix『ザ・クラウン』、Apple TV+ 『ザ・モーニングショー』などがお気に入り。ドラマに出てきた名台詞をコツコツとしたためていて、いつかどこかでアウトプットするのがささやかな目標。
『Lupin/ルパン』／スピード感と爽快感をひっさげて、あのルパンが帰ってきた！
Netflix製作の非英語作品として最大ヒットの記録を更新！ 怪盗紳士アルセーヌ・ルパンにインスパイアされたフランス発の話題作。第１話から、ルーブル美術館を舞台にした壮大で華麗な計画に魅了されて、その大胆さとテンポのよさがクセになり一気観したくなること間違いなしです。フランスで絶大な人気を誇るオマール・シー演じるアサンが計画に合わせて、清掃員から老人、超リッチな起業家まで、毎回違った姿を披露してくれる“変装スキル”も見どころ。スマートさとチャーミングさを持ち合わす彼に、観ている側も気が付かぬうちに騙されているかも!?
エピソードごとに徐々に明らかになっていくアサンのバックグラウンドや父親逮捕事件の真相、そしてペレグリニ家の一人娘との秘密の関係など、単なる復讐劇で終わらない展開も見事です。全10話のうち後半5話は今夏配信予定。昔から多くの人に愛されてきたフランスのアルセーヌ・ルパン。日本ではルパン三世でその名を知る人が多いと思いますが、新鮮なテイストが加わった現代バージョンもぜひ楽しんでみてください！（シェリー）
STORY
舞台はパリ。主人公アサンの父は、裕福な白人家庭ペレグリニ家で運転手として働いていたが、窃盗罪を被せられ刑務所で自殺してしまう。大人になったアサンは、父からの最後の贈り物『怪盗紳士アルセーヌ・ルパン』の本をヒントに、父を陥れた人たちへの復讐を始める。（2021年１月4日〜配信開始）
『僕らのままで/WE ARE WHO WE ARE』／『君の名前で僕を呼んで』の監督が綴る、儚い青春の１ページ
今をときめくティモシー・シャラメの出世作で、日本でも大ヒットを記録した『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督のドラマデビュー作。『君の〜』といえば、個人的にはエンドロールが終わってもずっと余韻に浸っていたかった大好きな映画ですが、さすがはグァダニーノ監督！ この新作ドラマでも、多感な年頃のティーンたちの青春の１ページを巧みに切り取っています。北イタリアの米軍基地を舞台に描かれる、友情、恋愛、親との確執、そして自分探し。十代の刹那的な日常を淡々と追った空気感がとてもリアルで、忘れかけていたあの頃に一瞬で連れ戻してくれます。主人公フレイザーと隣の家に住むケイトリンのプラトニックな関係性が素晴らしくて、共に悩み、支え合い、一緒に成長していく様子が微笑ましいです。
フレイザー役は『IT/イット』シリーズで知られるジャック・ディラン・グレイザー。彼が醸し出す気怠さやアンニュイさがとてもよくて、たまにイキっみせるところが見事にハマっています。母親役にクロエ・セヴィニー、ケイトリンの父親役にキッド・カディ、友達役にフランチェスカ・スコセッシ（マーティン・スコセッシ監督の娘）などなど、脇を固める素敵な俳優陣の演技も見どころです。（シェリー）
STORY
母親がイタリア米軍基地へ異動になったことをきっかけに引っ越すことになった、フレイザー。新しい環境に馴染めなかったが、隣に住むケイトリンに出会う。ふたりは共通の悩みを通して友情を育んでいくが……。（2021年２月18日〜スターチャンネルにて配信開始）
『CALLS』／“イケボ”にもだえる、音声ドラマの新しいカタチ
オール４Kの映像美をウリにしていたApple TV＋が打ち出した新作は、なんと音声ドラマ！ 電話での会話のみで展開されるのですが、リリー・コリンズやアーロン・テイラー＝ジョンソンほか、有名俳優たちがこぞって参加しているのがポイント。
個人的イチ推しは、ジョナス・ブラザーズのリードボーカル、ニック・ジョナスが主演をつとめるエピソード６「宇宙の仕業」。時空がゆがみ主人公が突然殺人犯になってしまう奇怪なストーリー展開なのですが、ニックのイケボっぷりにほろ酔い。鳴き声や叫び声にも色気を感じてしまい、恐怖心が行方不明状態に（笑）。なお、電話のダイアログはテキスト表示されるので、英語学習として活用するのもおすすめです（緊急事態や恐怖心を表すボキャブラリーばかりが増えそうですが）。また、ストーリーの展開に合わせて、背景を含むテキストにデジタルエフェクトが施されており音声ドラマなんですが画面に釘付けになるのもユニーク。
サスペンスでもあり、ラブストーリーでもあり、 SFチックでもありコントのようなかけあいもあり。日本でいうところの『世にも奇妙な物語』の音声版といいますか、あっちの世界とこっちの世界、時空のスクランブルが引き起こす複雑怪奇な物語を音声のみで表現する手法には本当に感服。１話が約15分程度なので、軽やかに（内容はヘビーですが）視聴できるのもポイント。クラブハウス然り、音声コンテンツが注目される今、観ておくべきドラマのひとつだと思います。（エディターR）
STORY
電話で交わされる会話で構成されるドラマシリーズ。“宇宙からのバグ”により人生が思わぬ方向に傾いてしまう人々の奇怪な物語。シーズン１のエピソード９まで配信中。（2021年３月19日〜配信開始）
『ジニー＆ジョージア』／最強＆ラブリーな、母娘愛は必見！
15歳でジニーを産んでから長いことシングルマザーだったジョージアはとにかくタフ。その上、美人で頭もよいパワフルウーマン。15歳になった娘ジニーからは少し鬱陶しいと思われていて度々ケンカになるけれど、そこには愛情があり強い絆で結ばれている姉妹のようなふたりの関係が素敵です。自由奔放で常に周囲の注目を集めるジョージアは、なんでも自分でこなす自立したかっこいい女性として描かれます。欲しいものを手に入れるためなら一切手段を選ばないずる賢さと行動力は見習いたいポイント!? なにがあっても落ち込まず、常に前向きな姿勢もとても良くて、観ていて元気をもらえるキャラクターです。
家族愛の他にも、隣人ベイカー家との家族ぐるみの付き合い、ジニーの“THE青春”な学校生活や、徐々に明らかになるサスペンスフルなジョージアの過去の物語、そして魅力的な登場人物たちなど様々な要素がミックスされていて、見どころ満載。様々な観点から楽しめるドラマです！（シェリー）
STORY
30歳のジョージア・ミラーは、夫を交通事故で失くしたことをきっかけに心機一転、２人の子供、ジニーとオースティンを連れてマサチューセッツ州の裕福で保守的な地域に引っ越してくる。家族で落ち着いた生活を送れることを望むけど、果たしてー？（2021年２月24日〜配信開始）
『The One: 導かれた糸』／DNA“恋活”、そこに“完璧”はあるのか？
DNAデータを使ったマッチングサービスというテーマに興味を持ち観始めた、イギリス発のNetflixオリジナルドラマ。原作は、ジョン・マーズの2017年の小説『The One』。
作品には様々なカップルが登場します。提案された相手が同性だったり、自分のパーフェクトマッチな相手を生理的に受け入れられなくて葛藤したり。カップル同士には｢この人は私の相手として本当にベストなのか、他にベストな相手がいるのでは？｣という疑心暗鬼をもたらしたり。ジェンダー問題や結婚の在り方など現代社会が抱える問題もアンサンブルされ、さらにそこにサスペンス要素も加わりちょっと“具材多すぎ”な鍋のようなんですが、それくらい“パートナー探し”は深刻なテーマなんだと妙に納得させる不思議な力がこの作品にはあります。
“恋はするのではなく落ちるもの”という名言を思いだし、“完璧な相手”を探すことと同じくらい愛の育み方や付き合い方も大事という、当たり前でも忘れがちなことが脳裏をかすめます。自分の恋愛観を改めて検証してみるのにもってこいの作品ではないでしょうか。
美しく凜々しい主人公レベッカを演じているのは、私的にイギリス版“アンジー”として注目している、ハンナ・ウェア。そんなハンナは、私生活ではスケートボーダーのジェシー・ジェンキンスと2008年に結婚、わずか10日で離婚したという経歴の持ち主だというのも、鑑賞に厚み（？）を添えるトリビアです。 （エディターR）
STORY
DNAの検査で完璧なパートナーが見つけられる世界を舞台に、愛という名のビジネスの裏で欲望とウソが暴走していく様子が描かれる。（2021年３月12日〜配信開始）
『ウィンクス・サーガ：宿命』／魔法×学園はハズレ無し。2021年度版、モダンなハリーポッターの誕生!?
小学校低学年のときに小説と出合い、高校時代に同作の最後の映画が公開されるまで、小説・映画全作をリアルタイムで見守ってきた、いわばハリーポッターシリーズと一緒に育ってきた私にとって、魔法学校というのは永遠の憧れなのですが、ここにきてまた新たにワクワクさせてくれたのがこちらの作品。
本作は、イタリアのアニメ『ウィンクス・クラブ』をベースに実写化したドラマシリーズ。火、水、光、心と、魔法の種類もいろいろあり、自分だったらどの魔法が使いたいかなど、想像が無限に膨らむ設定も楽しいです。初めは全く魔法をコントロールできずに不安定だったブルームが覚醒し、ひとりで敵を全滅させるシーンは特にテンションが上がって感動的。魔法の世界でSNSを使う設定も新鮮です。インスタのストーリー的機能で友達が何をしているかを知ったり、友達同士常にメッセージを送りあっていたり、離れて暮らす親とテレビ電話をしたりと、“人間界の学園モノ”と変わらないのも面白い。シーズン２ではどんな展開になっていくのか、続きが今から楽しみ！（シェリー）
STORY
人間に育てられた主人公ブルームは、魔法を学ぶために寄宿学校アルフィアに入学。恋愛、ライバルとの競争と様々な出来事と遭遇するなか、自分の出生の秘密を知ってしまい……。（2021年１月22日〜配信開始）
『THE STAND』／今こそ観たい。巨匠スティーヴン・キングが放つ、パンデミックドラマ
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、黙示録的小説として再注目。パンデミックを題材とし1978年に刊行されたスティーヴン・キングのホラー小説『ザ・スタンド』のドラマ化作品。
スティーヴン・キングの小説らしく、リアリズムとファンタジーが混合された世界のなかで、人間の本質、光と闇が浮き彫りになっていきますが、コロナ禍を経験した今、“遠い世界のお話”として観られないのがちょっぴり苦しい。しかしながら、コロナ禍から一年が経った今、私たちが暮らす現実世界ではワクチンの開発も進み、それまでとは違う“新しい日常”へと舵をきっている。ドラマで描かれるディストピアとは異なる世界を生きている。それは希望であり、人間の英智がもたらす光なのだと、反面教師的に教えてくれる作品です。なお、最終話はスティーヴン・キング自らが脚本を担当、きっちりタイトル回収してくれますので、そこも見どころです。
生き残りの“善人”たちを率いるマザー・アビゲイル役に女優のウーピー・ゴールドバーグ、教師のナディーン・クロス役にアンバー・ハードと見応え十分のキャスティングも要チェック。個人的にうなったのは、"闇の男"ランダル・フラッグを演じたアレクサンダー・スカルスガルド。『ビッグ・リトル・ライズ』でニコール・キッドマンのMP／HPをゼロにしたDV夫を演じたときの、セクシーさをいかした怪演は健在です！（エディターR）
STORY
致死率99％の新型インフルエンザが大流行し、滅亡の危機を迎えるアメリカ。終末の世界で、人類の運命は108歳の老女マザー・アビゲイルと生存者たちの手にかかっていた。そんな中、世界征服を目論む“闇の男”ランドール・フラッグとの対立がはじまる。（2021年１月３日〜配信開始）
『迷宮のアリス』／焦燥感は最大の敵!? イスラエル発、現代のノワールドラマ
家事と子育てとキャリアのバランスに悩む女性映画監督の前に現れた、才能あふれる美しく若い女性脚本家。彼女の存在に焦りを感じながらも、自分に憧れを抱いているその女性を憎めず、何よりもプロとしての自分は彼女の才能を認めている。
SNSの普及で掘り起こされたマイナス感情のひとつだと思うのが「焦燥感」。得体の知れないそれに翻弄されるのは、不幸の引き金になりうるということを、“低温調理”のようにじわーっと、でも確実に衝いてくるのがこのドラマの最大の怖さ。
第１話と最終話がジリジリするヒットポイント高め。間のストーリーは正直“中だるみ”というか、何か起こりそうで起こらない。独特なテンポとリズムで物語が進みます。ただそれに苛立つというよりかえってリアルで続きを観るのがついつい習慣に。イスラエルを代表する女優アイェレット・ゾラーが焦燥感にさいなまれる主人公を好演。イスラエル発のドラマは初めてですが、現代のノワールドラマともいうべき本作をきっかけに、今後も注目していきたいと思います。（エディターR）
STORY
家事と子育てに追われキャリアに対する焦燥感を抱く女性映画監督のアリス。若く魅力的な女性脚本家ソフィーとの出会いをきっかけに、成功への執拗な強迫観念に取り憑かれていく。（2021年１月22日〜配信開始）
