種子島で宇宙を遊ぶ

この夏、初めて“宇宙に一番近い島”でひらかれる「種子島宇宙芸術祭」。その魅力を芸術祭の発起人・ディレクターである森脇裕之さんに語ってもらった。

かつて日本一の夜空スポットにもなった種子島。芸術祭では、小学校跡地に地元の農園と提携した《星空カフェ》をオープン。9月16日〜18日には、この星空の下で、国立天文台の先生によるトークショーも開催。photography:Daitoshi Ishihara

フィクションとリアル どっちの星空も、美しい!

 日本で宇宙に一番近い島。それは国内で唯一、大型ロケット発射台がある鹿児島県・種子島だ。ちなみに、地球の自転を利用するロケットの打ち上げのベストスポットの条件は、東側が海であり、最も赤道に近いこと。沖縄返還前、ここが発射場に選ばれたのはその理由から。実際に、種子島はエメラルドグリーンの海や鮮やかな植物も広がる南の島。宇宙に一番近い島であり、夏のエスケープにうってつけな島で、今夏初、「種子島宇宙芸術祭」なるものが開催されるという。
 この地域芸術祭では、種子島全域に13組の作家の作品が点在。3Dプリンタで月面を再現し、その空間でインタラクティブな体験ができる作品や、アルゴリズムで人工宇宙を描く作品など、展示もさまざま。島を巡回し、SNSでリポートしたり、宇宙のレストランを作るアーティストもいる。
 ここで体験できる“宇宙芸術”とは、何か。芸術祭の発起人・ディレクターであり、出展作家でもある森脇裕之さんは、こう話す。
「今語られている宇宙とは、計算や仮定のうえに成り立っているもの。宇宙物理理論でいう、“何億年先の宇宙の果て”を、自分の目で確認した人はいまだにいませんから。つまり、われわれの抱いている宇宙のイメージは、フィクション。その意味で、宇宙理論や科学技術を駆使したアートだけではなく、たとえば、宇宙が日常と隣り合わせにある種子島で、作家が何かを発見したり、インスパイアされて生み出した作品にも、クリエイティヴな“宇宙的視点”が見つかるはず」
 種子島には宇宙センターのような未来的なものだけでなく、古代石器時代から人が住んでいて歴史もある。自然もある。宇宙というテーマに、自然や歴史という要素が融合されていることも本芸術祭の魅力だ。
「だからこそ、“宇宙に一番近い島”で、自然の夜空を見上げることも特別な体験になるはず」と森脇さん。「種子島の夜は本当に真っ暗。都市から離れているので外乱光がほとんどなく、星も驚くほどクリアに見えます」。芸術祭期間中は、島で最も標高が高い場所にある廃校で、星空を眺めながらお茶をしたり、語ったりできる《星空カフェ》を開催。11月には、自然が作った洞窟、千座の岩屋でスーパープラネタリウム装置「メガスターⅡ」を投影するイベントも。「科学館のツルンとした半球体のドームではなく、ゴツゴツした岩場に映された星空は違ったリアリティがあります。開発者の大平貴之さん自身も感動したほど」
 リアルな星空も、作品化されたフィクショナルな星空も、この島ではとびきりの姿を見せる。

複数のミラーボールを組み合わせ、屋外に幻想的な空間を作るアーティスト集団ミラーボーラーの《はじまりはじまり》

森脇裕之の《ペットボトルロケット》。障がい者支援施設でのワークショップを通じて、リサイクルペットボトルを使った巨大なロケットを制作。夜間には美しくライトアップ

千田泰広の《ミュルクヴィズ》は、可動式のテグス糸が張り巡らされた暗闇のなかに、LEDの光をあて、まるで星空のような空間を表現

千座の岩屋では、スーパープラネタリウム装置「メガスターⅡ」の投影イベントも開催。※11月2日〜5日のみ

種子島宇宙芸術祭

会場/種子島全域
会期/8月5日〜11月12日
鹿児島から種子島へのアクセス/ 飛行機の場合、鹿児島空港から種子島空港へ(1日3往復運航)。また、8月に限り伊丹空港から種子島空港へ直行便も臨時運航。高速船の場合、鹿児島港から西之表港ヘ(1日6往復運航)。フェリーの場合、鹿児島港もしくは谷山港から西之表港へ(運航は各フェリーによる)
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SOURCE:SPUR 2017年9月号「夏にしたいこと、ぜんぶ!」
edit:Masanobu Matsumoto

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