尾道の自然に癒やされ、集まる人々に刺激を受けながら暮らす日々

 アーティストである夫の小金沢健人さんと、ふたりの子どもの一家4人でベルリンから尾道に移り住んだminä perhonenの長江さん。いったいどうして尾道へ? という疑問は、実際に訪れてみると少し解決する。尾道ではNPO法人が空き家を移住したい人に斡旋している。小さい街ながらコミュニティは決して封鎖的ではなく、外からやってくる人でもすっと入りやすい風通しのよさがある。
「ベルリンに住んで、日本の文化や自然の素晴らしさを実感し、再び惹かれるものがありました。そんな中、夫に引っ越し先として尾道の物件を提案されて。行ってみるとかつてのベルリンに似ている部分も。知名度はあるけれど街の規模は爆発的には発展してない。空き家などのフリースペースがあって、クリエイターもいて、時間や手間をかければやりたいことが実現できる可能性がある場所だと」
 今、長江さんは尾道に暮らしながらブランドの仕事も続けている。
「東京の仕事のクォリティとスピードについていけない戸惑いはベルリン時代以上。悩むこともあるのですがデザイナーの皆川から『今はデザインやるときでしょう』と言われて。できないことがはっきりしていく中で、むしろ今後自分がやるべきことと向き合うチャンスだと捉えるようになりました」
 そのクリエーションの支えになっているのは尾道に集まる個性的な人々、豊かな自然。「アート作品から野菜、そして人が集まる場所まで。さまざまなものを創り出す力のある人が多いです。しかも制作活動と、個人の生活のバランスが取れていて、自分のペースで楽しみながら暮らしている。そんな姿は刺激になります。そして何よりも癒やされるのがきれいな海。自然や気候の恵みと、尾道の子どもたちの素直さを感じながらデザインにとりかかったり、絵を描いたりすることを今、楽しんでいます」

人とのつながりが生活に彩りを添える尾道。武蔵野美術大学時代の知り合いだった新里カオリさん(右)とは、お互いの移住先の尾道で再会。新里さんは「立花テキスタイル研究所」という会社を立ち上げ、サスティナブルな原材料に注目した帆布製品などを制作、販売している。アトリエがお隣の高亀理子さん(中右)はホホホ座尾道店を運営。ミュージシャンを斡旋してイベントも精力的に手がける。吉野瞬さん(左)は因島にアトリエを構える注目の若手陶芸家。個展ではあっという間に作品が売り切れるほど人気。長江さんの自宅の屋上で。

空き家を店舗やアトリエとして再活用している三軒家アパートメントに長江さんのアトリエが。好きな写真集や絵本などが置いてある。ここではminä perhonenのデザインをしたり、3作目となる絵本を制作したり

Profile

ながえ あおい●minä perhonenの設立スタッフ。現在はデザイナーとして参加。10年前結婚を機に夫の住むベルリンに引っ越し、今年、一家で尾道へ。

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