マイベスト山ごはんは、米とうどん【井之脇海と、山の話 第18回】

 撮影が再開して忙しくなり、なかなか休みをとりづらかったこの夏。登山に行けない分、家で山ごはんを作る練習をしていました。ステイホーム中に山の調理道具を揃えたこともあって、道具を使いたい!

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 やっぱり、ベスト食材は、米とうどん。僕、うどんが大好物なんですよ。撮影現場でも食事は自分で揃えた山の調理道具を使って、うどんを作って食べていました(笑)。人が集まるところをできるだけ避けるようにしながら、食堂やお弁当は極力利用しないで過ごしていたんです。お湯を沸かしてうどんをゆでて水で冷やしてから、ぶっかけめんのタレと生卵、野菜をのせるという、簡単うどん。

山ごはんレシピの先生は、SNSや山雑誌など。

 家では、メスティンというアルミ製長方形の飯盒で米を炊く練習を。米を洗って20分浸水させて、固形燃料(旅館で小鍋を温めてくれるときに使うあれです)に火をつけて、燃料が燃え尽きるまで放置。そのあと布にメスティンを包んで蒸らすという手順です。メスティンは見た目のかっこよさと、炊く、煮る、焼く、蒸すといろいろ使えるからファンが多くて、SNSでも盛り上がっているんです。

「思わずポチってしまった」山の調理道具。メスティンのほか、コッヘル(鍋)は材質を変えて2種類購入。火器は固形燃料を使うタイプ、アルコールストーブ、ガス缶を使うシングルバーナーの3種も購入。「UL(軽量)志向になっているので、軽い固形燃料とアルコールストーブは憧れていました。17gしかないナイフも買ったんですよ」

 僕がぐっとくるのが「メスティン折り」というワザ。クッキングシートを折って、メスティンのサイズに合わせた折箱を作るというもの。これを調理時に内側に敷いて使うと汚れないので、すぐに同じ鍋で次の料理に取りかかれるんです! 洗い場がないときにも便利そう。鍋を汚さないための工夫や、おいしいものを無駄なく作ろうという発想は、制限が多い山の中だからこそ生まれたもの。こういう考え方にはすごく惹かれるものがあるんですよね。

 山のごはんといえば、できるだけ傷みにくく、軽い食材で、ごみは少なく、燃料を使いすぎずにできるレシピがセオリー。日帰りなら気にしなくてもいいけれど、何泊もの縦走となると食材だけでもけっこうな重量になるし、どういう献立をどういう順番で食べると無駄がないか、食材をどう使い回すか考えないといけません。前までの僕だったら、ひたすら歩きたくて食にもこだわりがなかったけど、今はちょっと違います。

 沢登りのロケに2泊3日で出かけたとき、ガイドの方が食材を詰め込んだ100Lものザックを背負って来てくれて。毎食、食材を無駄にすることなく、すごい手際のよさで元気が出るごはんを作ってくれたんです。「食べることは大事だから」って。確かに、体力と歩き続けるモチベーションをキープするためにも、食は大事だと痛感したロケでした。

 さて、もし、1泊2日で北アルプスあたりに行くなら何を食べよう……。妄想登山の献立を考えました。1日目の夜と次の朝は、違うものを食べたいよなあ……。登山では時間がタイトになるから昼食は短時間で軽く済ませることが多いので、あえて作ったりしないものだけど、3分でできるうどんもいいなあ、と思わず妄想。レトルトカレーと合わせてカレーうどんにしたり、グリーンカレーとパクチーでタイカレーうどんにしたり。うどんはゆでる必要すらない流水麺で、コッヘルにうどんとカレーを入れて温めるだけです。カレーは、食欲が湧くから山におすすめ。

冷凍庫に常にストックしているほど、うどんラブ。

 そして、夜は炊き込みごはん。テントを張ってひと息ついたら、メスティンにお米と水、乾物のきのこ、少しのしょうゆ、冷凍して持ってきたレトルトの切り身塩じゃけをのせて、あとは固形燃料まかせ。パックに入ったなめたけを炊き上がったごはんにのっけて食べるんですが、待っている間に、このなめたけをビールのつまみにしてもいいなあ。

実は炊き込みごはんは初。でき上がりに「おいしくできてる」とうれしそう。

 翌朝は余ったしゃけ、乾物きのこ、クラムチャウダーの素、常温でも持ち運べる調整豆乳のミニパックでクラムチャウダーに。ショートパスタを入れてもいいかも。

 とはいえ、いまだ道具もごはんも、実際の山ではデビューできておりません(笑)。次のお休みまで練習を続けたいと思います!

Profile
いのわき かい●俳優。1995年神奈川県・横須賀生まれ。父の影響で登山を始め日本百名山制覇(ただいま11座)が目標。映画『ザ・ファブル 第二章』に黒塩(クロ)役で出演決定。インスタグラム(@kai_inowaki)で、山の写真も発信。

SOURCE:SPUR 2020年11月号「井之脇海と、山の話」photography: Kasane Nogawa styling: Kentaro Higaki 〈tsujimanagement〉 hair & make-up: Takeharu Kobayashi edit: Tomoko Yanagisawa