『SING/シング』の歌のパワーに、想像以上にやられました




『ラ・ラ・ランド』を観たときにも思ったのですが、街から映画館や劇場、クラブがなくなってしまったらどうなるんだろう? ふっと別の空間に入れるような、マジカルな場所がなくなってしまう。シネコンでかかるようなメジャーなアニメ『シング』の底にも、実はそんな危機感がある気がします。

物語は街の劇場主のコアラ(声の出演はマシュー・マコノヒー)が経営不振を立て直すため、歌のコンテストを開くところから始まります。集まってくるのはブタのロシータ(リース・ウィザースプーン)、ネズミのマイク(セス・マクファーレン)、ハリネズミのアッシュ(スカーレット・ヨハンソン)ら。みんなそれぞれ事情を抱えていて、オーディションで歌う歌にもその気持ちがこめられています。

曲はここ50年間のポップ・ソングの数々。古くは“マイ・ウェイ”から最近のテイラー・スウィフトのヒット曲まで、どれも聴いたことがあるはず。でも、アニメの動物たちが歌うとまた新鮮なフィーリングが湧いてくる。これは『ラ・ラ・ランド』にも負けない堂々のミュージカル! 声のキャストもびっくりするような歌唱力を披露しています。日本語吹き替え版はどうなってるのかな?

私のお気に入りはゴリラの若者ジョニー。家族への愛と自分の夢の板挟みになっている心情を、ソウルフルに歌い上げます。エルトン・ジョンの“アイム・スティル・スタンディング”がこんなにぐっとくるなんて……。演じるのは『キングスメン』のタロン・エガートン。悪ガキって感じの彼がこんなに歌えるなんて、知りませんでした。さて動物たちは果たして劇場を救えるのか、いまの時代にどう再生させるのか? ミュージカル好きの大人にもオススメの一作です。



『SING/シング』
監督・脚本/ガース・ジェニングス
出演/マシュー・マコノヒー、リース・ウィザースプーン、セス・マクファーレン、スカーレット・ヨハンソン
2017年3月17日(金)TOHOシネマズ スカラ座ほか全国ロードショー
(C)Universal Studios.

 

映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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