[vol.86] むむ、おぬしデキルな!とうならせるティモシー・シャラメ の足元のブーツを見よ

残暑が厳しいとはいえ、ファッション的に気分はもう秋ものに向いている季節の変わり目。いきなりセーターという訳にもいかず、とりあえず秋の気分は足元から始めるのが定説のモード界。素足にサンダル履きをやめて、ソックスやパンプス、ブーツなどに履き変えれば、あっという間に季節の先取りファッションになる。おしゃれな人ほど、靴が命。靴のチョイスを失敗したら、どんな素敵なコーディネイトも台無しだ。

そんな思いでセレブのファッッションチェックをしていて、私の目をくぎ付けにしたのは、ヴェネチア国際映画祭のレッドカーペットに登場したティモシー・シャラメだった。彼はレッドカーペットではいつもノーマルなスーツに落ち着くことなく、ヤングハリウッドスターのファッションアイコンらしい攻めの装いをしている。今回もVゾーンと襟、サッシュベルトにサテン生地を使ったハイダー・アッカーマンの変わり種スーツで異彩を放っていた。ここで注目したのが、彼のブーツ。無造作にロールアップしたボトムの裾と、ポインテッドトウのブーツのバランスが絶妙!ウエスタン調でありながらスーツにもマッチするシティなテイストのブーツを合わせるあたり、むむ、おぬしデキルな!とうなってしまうのだ。この着こなすのに難しいスーツを、パテントのシューズなんかを履いてきれいに着たら、ティモシーの華奢な体と相まって王子様みたいになってしまう。このスーツのクールな気崩しの成功は、ブーツにありなのだ。

 それにしても、ティモシーには洋服を着せられている感がまったくない。ユニークなファッションを身につける際の楽しんでる感がいいし、ヨーロピアン(父親がフランス人)のニュアンスでモード系のアイテムも難なく似合ってしまう。そして、そのルックスゆえ多感なティーンエイジャーの役柄がフィットし過ぎて続いていたが、最新作『The King(原題)』で若きヘンリー5世を演じた彼が役者として、どう進化していくのか見続けていきたい。

 

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

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