【林士平の推しマンガ道】イチオシのダンス漫画3選『ワンダンス』『メダリスト』『SUBARU昴』

数あるスポーツもののなかでも、独特の美の表現を追求するダンスマンガ。連載中の注目作と、学生時代の林さんを釘づけにした名作について熱く語ります!

林士平の推しマンガ道

ストリートダンス、フィギュアスケート、バレエ。僕のように実際に観ていない人にも、ルールや鑑賞のツボを物語仕立てで教えてくれるダンスマンガ3選です。

『ワンダンス』珈琲著

『ワンダンス』珈琲著
講談社アフタヌーン コミックス/既刊11巻・726円〜

校内で一人踊る湾田光莉。その光景に目を奪われた小谷花木は、バスケ部への誘いを断ってダンス部の扉を開き、女子ばかりの環境に戸惑いながらも未経験の世界に挑む。

珈琲先生の『ワンダンス』は、不器用だけどすごくいい奴な主人公・カボくんが魅力的! 高校でダンス部に入ってどんどん夢中になっていく姿も、吃音でうまくしゃべれない分を、踊りで見せる気概もよい。踊りがうまくて可愛いけど不器用なワンダちゃん、ダンス部の面々やライバルたちの熱さも爽やかな青春漫画です。グラフィティアートのような表現や手ブレの演出も、ストリートダンスが持つ即興性の美学に見事にハマっています。アニメーションでも見てみたいし、TikTokで「ワンダンス・ダンス選手権」が開催されないかな、と勝手に企画を考えたくなります(笑)。今は11巻目。カボくんたちの未来をもっと見たいので、ずっと追いかける作品になりそうです。

『メダリスト』つるまいかだ著

『メダリスト』つるまいかだ著
講談社アフタヌーン コミックス/既刊8巻・748円〜

勉強も人づき合いも不得手な5年生のいのり。かつてアイスダンス全日本選手権に出場しながら、夢を諦めた司。二人は人生をかけ、フィギュアスケートで世界を目指す。

高校からでも始められるストリートダンスとは違い、幼少期からのストイックな取り組みが必要なフィギュアスケート。『メダリスト』では、その道を諦めた青年が、いのりという少女のためにコーチになります。彼女を導き、ジャイアントキリングを起こして夢を再現するという、つるまいかだ先生のデビュー作。作中では、小学生が4回転ジャンプをバンバン跳んじゃうわけですが、こういった漫画ならではの過剰さこそが、現実を拡張させるんだと本気で信じています。人間が想像できることは達成しうることだと思うんです。勝ち負けが明確にあり、どんな技をどう組むのかというゲーム性も説明してくれるので、読み進めるほどに面白くなりますよ。

『SUBARU昴』曽田正人著

『SUBARU昴』曽田正人著
小学館文庫/全6巻・ 各817円

双子の弟のために踊り始めた主人公が、バレエにのめり込む。踊り手の熱量を活写する筆致に圧倒される名作。『MOON〜昴ソリチュードスタンディング〜』は続編。

個人的にこのジャンルの金字塔と位置づけている『昴』。曽田正人先生は、"なにかが欠けている人間の持つ天才性"を描く天才です! 主人公・すばるの持つエゴや破天荒さ。そんな才能の暴力さえも、説得力のあるシーンを構築して描いているので、つい納得してしまうし、キャラをどんどん好きになってしまうんですよね。バレエの肉体と世界を、自らバレエ教室に通って理解し、最後まで描き切った先生を尊敬します。バレエを題材としたマンガは昔からありましたが、2000年代初頭に青年誌の連載マンガで、というのもインパクト大でした。十数年ぶりに読み返してみても、この熱量に震えます!

林士平プロフィール画像
マンガ編集者林士平

マンガ編集者。「少年ジャンプ+」で連載中の担当作に『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『ダンダダン』『幼稚園WARS』『BEAT&MOTION』。NHK「スイッチインタビュー」に出演しました。

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