【林士平の推しマンガ道】面白くて勉強になる。スペシャリストの仕事に痺れる3作品

職種や時代は違えど、本気で働く人の姿はどこまでもかっこいい!社会人にも、これから未来を考える人にも全力ですすめたい仕事マンガ

林士平の推しマンガ道

仕事マンガが素敵なのは、世の中にはこんな仕事があるのか!という驚きとともに、子どもや若者、もちろん大人にも、未来の選択肢になりうる情報を手渡してくれるところ。職種も読み心地も各種各様、連載中の3作を選びました。

『神田ごくら町職人ばなし』坂上暁仁著

『神田ごくら町職人ばなし』坂上暁仁著
リイド社トーチコミックス/ 既刊1巻・1,100円

桶に刀、染め物や畳の張り替え、そして左官仕事。工芸品や美術品的な位置づけになったものから、現代に継承されている技まで。江戸時代の職人の粋なドラマを圧倒的な描写力で魅せる。

坂上暁仁先生の『神田ごくら町職人ばなし』は、江戸時代の職人の仕事を扱うオムニバス。桶職人に刀鍛冶、藍染め職人、畳を張り替える職人、そして左官。時代考証をがっちりしながら、絶妙な配分でエンタメに仕上げていて、これぞ職人技! 桶職人のラストの一枚絵、左官の話の最後に去る男など、痺れる場面がてんこ盛りです。一番グッときたのは、自分が打った刀で侍が、子どもを斬ってしまったという刀鍛冶の話。絶望や怒りを、そのまま仕事のエネルギーに変えて仕事に打ち込み、最高の刀を作るんです。酔い潰れるでも、人に当たるでもなく、真っ当に生きることしかできない職人がかっこいい。僕もこうありたいです。

『胚培養士ミズイロ』おかざき真里著

『胚培養士ミズイロ』おかざき真里著
小学館ビッグコミックス/ 既刊4巻・770円〜

卵子の声に耳を澄ませ、受精の可能性を最大限に引き上げる。子を求める人々の切実な思いにこたえるため、全神経を使って顕微鏡をのぞく、不妊治療のスペシャリストの姿を描く。

おかざき真里先生の『胚培養士ミズイロ』は、体外受精の治療に携わり、卵子と精子を受精させたり管理したりする、命をつなぐスペシャリストたちの物語です。この作品が描かれた前後で、「体外受精」や「試験管ベビー」という言葉の受け止め方が変化するかもしれない、とも思わされたすごい作品。この職にどうやって就くのかも知りたいし、サブキャラたちも興味深いし、絶対に回収してほしい伏線もあり、完結まで追おうと決めています。男性の不妊にフォーカスした回があるのも素晴らしい! 広く、長く読まれてほしい作品ですね。

『一級建築士矩子の設計思考』鬼ノ仁著

『一級建築士矩子の設計思考』鬼ノ仁著
日本文芸社ニチブンコミックス/ 既刊2巻・792円〜

20歳で上京。設計事務所勤務を経て、個人事務所を開いた矩子(かなこ)。依頼は少なく懐は寂しいものの、知識と正義感と日本酒は売るほどある! 建築界隈をざわめかせた話題作。

『一級建築士矩子の設計思考』は、一級建築士の資格を持つ鬼ノ仁先生が自身のフィールドに読者を引き込む建築モノ。東京・亀戸に立ち飲み店を併設した建築事務所を開設したばかりの、27歳の女性建築士が主人公です。専門知識に加えて、資格の取り方、マンションの大規模修繕の苦労、法律の解説など、身近でありながら案外知らない知識がたっぷり詰まっています。個人的には、コーポラティブハウスにまつわる話を読んでみたい。プロジェクトがどう動き出し、どんなふうに進んでいくのかをマンガで知ることができたら最高です。建築士である主人公が、建築家になっていく道筋にも興味津々です。そうそう、界隈の酒場情報も充実していますよ。

林士平プロフィール画像
マンガ編集者林士平

マンガ編集者。「少年ジャンプ+」連載中の担当作に『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『ダンダダン』『幼稚園WARS』『BEAT&MOTION』『ディアスポレイザー』。「マンガを読んで家を建てたくなりました」

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