改造車でブイブイ言わせたくなる映画

ヒップホップに興味がないという、そこのアナタ。「Straight Outta Compton」を観た後はローライダーに乗って爆音で音楽を聴きたくなるかもしれませんよ! 
「Straight Outta Compton」を知ったきっかけは、渋谷で見かけたポスターでした。5人の男たちが逆光を背に歩いている写真が妙にかっこよくて、直感的に観たいと思ったのです。それから、特にヒップホップ好きではない音楽ライターさんや、特にヒップホップ好きではないアメリカ人の友人が絶賛しているのを聞いて、ますます観たくなりました。
こ の映画の題材となったロス郊外の治安が悪い町、コンプトン出身のヒップホップグループ、N.W.Aはいわゆるギャングスタ・ラップのルーツと言われています。ギャングスタ・ラップは私の青春期、とても流行っていましたが、苦手でした(ヒップホップは好きだったんですけどね)。
「2パックが撃たれて死んじゃった!」ヒップホップ好きの女友達が、血相変えて教室に入ってきたのを今でも覚えています。アーチスト同士が殺し合ったり、暴力だのドラッグだのという世界観はハードすぎるし怖い。というわけで私は敬遠していたのです。
そんなわけでN.W.Aも、ろくに聴いていませんでした。私は当時、映画に描かれているように、報じられたイメージを鵜呑みにしていて、彼らは暴力を煽るために非道いことを歌っているのだと思っていたのです。
映 画を観るとなぜ彼らがそんな音楽を発信したかがわかります。それだけではなく、1992年のロス暴動、そして最近でも丸腰の黒人が白人警官に殺された際の抗議運動など、その怒りの源と置かれた環境の不条理さが、実感を伴って理解できます。「そりゃ~、怒るわな」と。そういう意味で、ヒップホップに興味ない人でも観る価値が十分あります。
劇中、意味はわからないけど妙に心に残ったシーンがありました。暴動の中、人々が青と赤のバンダナを結んで掲げながら警官に向かって行進していくのです。あとから、それはふだんは反目し合う赤ギャング、青ギャングの象徴だと知りました。
とはいえ、私が強調したいのは、楽しくて切なくてスカッとする、エンターテイメントな映画だっていうことです。「食わず嫌いでゴメン」と猛省するほどN.W.Aの音楽はカッコよく(実はファンキー)、警察に脅されながらも”F★★★ the police”を演奏するシーンは、実に痛快です。何よりも、ゼロからオリジナルなものを作り出そうというマインドや、怒りのエネルギーを建設的な方向に発散させようとするのが、ヒップホップの素晴らしいところ。
いいヤツそうだけど油断ならない、とか正義感が強いけどすぐキレる、とか一筋縄ではいかないキャラクターがまた人間臭い。メインラッパーのアイス・キューブを演じるのはなんと実の息子です。彼がまた、角氷さんそっくりながらも、Dragon Ashの降谷建志さんが入ったような(笑)ワイルドなカッコよさで! また、Dr.Dreを演じるコーリー・ホーキンスも、本人が乗り移ったかのような熱演で、だんだん「若いころのDreってこんな顔だったのでは」と思ってしまうほど。(後から実物を見たら顔立ちは全然違った)。
今さらBeats by Dreを買おうとして友人に止められたり(しかもDreはこのビジネスをもうアップルに売っぱらってるし)、爆音でN.W.Aを流しながら、ローライダーでホッピングしたくなるほど(笑)、興奮冷めやらぬ毎日です。コンプトン出身のケンドリック・ラマーのアルバム「To Pimp A Butterfly」がグラミー賞最多11部門にノミネートされ、改めてヒップホップカルチャーが世界的に見直されている今、自分的にもヒップホップが再ブームです。
(エディターNAMIKI)
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エディターNAMIKI

ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。

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