ジョージのふたつの「フリーダム」

ジョージ・マイケルにはワム!時代も含めて自由という名前のふたつの異なる曲があって、90年に発表された新しいほうは"Freedom! '90"として区別されています。90年作の楽曲は最近、25周年を記念して現代版ビデオがリリースされていたことから、SNSで久々に耳にする機会がありました。

断然、オリジナル版が好きなのです。26年も前のミュージックビデオだけれど、今観てもぜんぜん古くない。監督はデビッド・フィンチャー、出演はリンダにナオミ、タチアナ、クリスティにシンディ。肝心のジョージの顔は一切登場しません。私はといえば、スーパーモデルブームが大席巻中だったあの頃、トップのスター5人がリップシンクするさまを何度も何度もMTVで眺めてはうっとりため息をつく高校生でした。歌詞の内容は1984年作のワム!「FREEDOM」の路線とは異なり、ジョージ自身の決意表明のようなものが綴られていて、スターの悲哀と影を見たような、ちょっとしたショックを受けたものです。

商業主義への皮肉を込めながら完璧な容姿のスーパーモデルを起用した理由とか、「自分自身を幸福にしたい」という願いを叶えるための手段とか。「僕がきみのものでないように、きみも僕のものじゃない」と歌う自由への憧れや、「嘘を本当のものにしなくてはいけない」という宿命について。今朝は考えを巡らせながら出勤しました。聞くほどに深く響く歌詞からは、80年代と90年代の境目にポップスターが発したアンビバレントな本音のかけらを読み取ることができます。

青春時代、夢中になって聞いていたアーティストが何人も去った2016年となってしまいました。

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エディターIGARASHI

おしゃれスナップ、モデル連載コラム、美容専門誌などを経て現職。
趣味は相撲観戦、SPURおやつ部員。

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