人生の節目にセリーヌの靴

気がつけば、人生のちょっとした節目にセリーヌの靴を買っています。一足目は社会人になって初めてボーナスをもらったとき。憧れのセリーヌが欲しくて、11万円という大金を震えながら店員さんに渡しました。初めて握った11枚の福沢諭吉の厚みは、今でもこの右手が鮮明に記憶しています。あのとき手に入れたファースト・セリーヌはメンズライクな厚底のローファーでした。ボリュームも重さもあって決して履き心地が良いとは言えないのだけれど、その靴を履くとそれまで閉ざされていた世界に飛び込んだような気持ちになれました。二足目は30歳の誕生日に。新しい靴とともに大人の女性への新たな一歩を! と思い切って購入したのが黒のポインテッドトゥでした。つま先だけでなく甲の部分にもVラインを描くシャープなデザイン。これも歩きやすいというよりは、足を入れると背筋がピシッと伸びるような身も心も引き締まる一足なのです。

そしてつい最近、結婚を機に買った三足目が写真のもの。本当はウェディングドレスに合わせる白い靴を探していたはずなのに、フラリと入ったお店でこのソフトバレリーナに引き寄せられてしまいました。そしてあまりの履き心地の良さにその場でほぼ即決でした。目にも柔らかなナッパラムスキンのラウンドトゥに安定感のあるチャンキーヒール。肌なじみの良いキャメルカラーは、どんな着こなしや気分にも寄り添ってくれます。そういえば、数年前までの自分はもっと尖っていたかったし、人とは違う何かを執拗に求めていたけれど、最近やっとこの靴みたいに柔軟性と汎用性をあわせ持つ人間になりたいと思うようになりました。数年前の自分なら絶対に選ばなかったソフトバレリーナに心惹かれたのは、そんな我がマインドのギアチェンジを反映しているような気もしたり、しなかったり。

この先あと何足の靴に出合うのかなんて知る由もないけれど、偶然にもまた人生の何らかの節目に差しかかったときに、四足目のセリーヌを買おうとしている自分をぼんやりと想像したりしています。

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エディターHAYASHI

生粋の丸顔。あだ名は餅。長いイヤリングと丈の長いスカートが好き。長いものに巻かれるタイプなのかもしれません。

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