「CCCP」で脳内SF旅行

とは何ぞや? と思われる方も多いでしょう。「COSMIC COMMUNIST CONSTRUCTIONS PHOTOGRAPHED」を略した写真集のタイトルなんです。

鈍器と言っても差し支えない(笑)、どっしり重さのあるハードカバー&大型本です。発行元はおなじみTASCHEN。海外に行けなくなり「出張や旅行で行き来していたあの日々は幻?」と過去が夢のようにますます感じるこの頃。続く日常に麻痺しそうな心を、擬似的にトリップさせるべく「CCCP」を久々にめくりました。

収められているのは、Drederic Chaubinによって撮影された旧ソ連など共産主義国を中心とした建造物の数々。そのどれもが奇妙なフォルムをしながら、だだっ広い土地に鎮座している。佇まいは迫力があり荘厳!なのですが、その不思議な曲線感や、独特の意匠によって、単なる美しい建造物、とはとても仕上がっていないのが肝です。どこか郷愁的なムードも漂います。個人的には、スター・ウォーズシリーズのタトゥイーンの感じなどを思い出します。日本では到底見られない建物を眺めていると、気分はすっかりSFの異世界に没入しているよう。あと、チェコにかつて訪れたとき、「ジシュコフのテレビ塔(Žižkovská televizní věž)」という、なんとのっぺらぼうの赤ちゃんが塔を上っている……という建築に遭遇したことがあり(笑)。自分の理解を超えたものに出合った時の心がざわつく感覚って、そういえば久しく味わっていないかもしれないと眺めつつ振り返ったりもしました。

ちなみに、表紙に採用されているのは建築家イゴール・ヴァシレフスキーによる「Druzhba Sanatorium」。円盤のような設計で建てられた療養所という施設と、その麓で優雅にくつろぐリゾート感たっぷりな人々との、どこか乖離したような感じは、なんとも言えません。自分の中の何かの感覚を忘れてしまいそう、という人にささやかな「ざわつき」を提供する一冊です。

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エディターSAKURABA

好きな服は、タートルネックのニットと極太パンツ。いつも厚底靴で身長をごまかしています。

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