花柄のロングドレス ― 家族が着ていた服 ―

 友人の結婚式が立て続けにあり、もう着回せるものがない……と悩んでいた時に、「ちょっと待ってね」と母が出してきてくれたもの。それは、黒のシルクシフォンに華やかな花柄のロングドレスだった。

 ファッションは好き嫌いがはっきりしている私だけれど、このドレスはまさに一目惚れ。素敵! 着てみたい! とすぐに袖を通すことにした。約40年前、母が海外で暮らす父のもとへお嫁に行く際、祖母に見立ててもらって仕立てたドレス。当時は珍しい海外製の大胆な花柄の生地を、母も祖母も気に入って作ったという。

 さて、時を経て私のもとにきたドレスは、まるで自分のために仕立てたかのようにぴったり。当時の母と体型が一緒なこと、心ときめく柄が三世代で共通していること、世界に一枚のドレスを時を超えて親子で着られること、それが心底嬉しかった。少しもったいなかったが、着やすいようにとひざ下丈にお直しを施す。40年前のドレスは再び日の目を見て、大切な友人のお祝いの場に彩りを添えることができた。

(東京都 30歳 F.M.)

※この企画は毎週日曜日20時に公開していきます。次回は4月2日(日)20時公開予定です

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