
ノーカラーのジャケット¥290,400・ブラレット¥33,000/カルバン・クライン カスタマーサービス(カルバン・クライン コレクション) レザーのポーチ〈H16×W21.5〉¥45,100/コム デ ギャルソン(ウォレット・コム デ ギャルソン)
キャロリンはボストン大学卒業後、カルバン・クラインの販売員に。やがてNYに移って広報となり、デザイナーと蜜月関係を築くこととなる。「カルバン・クラインに代表される1990年代のシンプルでミニマルなスタイルはとてもモダンでしたし、私には極めて洗練されたものに思えました。まさにそれを象徴する存在がキャロリンだったんです」。アンダーウェアを印象的に見せた最新のカルバン・クラインに、日本のブランドにも関心を持っていたキャロリンがクラッチ代わりにしていたコム デ ギャルソンのアイコニックなポーチを持って。
装いは自己理解から始まる

コート¥1,901,900・ニットトップス¥480,700・ジーンズ¥499,400・ベルト¥188,100・靴¥288,200/シャネル
1996年に結婚したジョン・F・ケネディ・ジュニア(1960-1999)とともに、カジュアルウェアも好んでいたキャロリン。ジーンズはブーツカットを愛用していた。「キャロリンは抜群のスタイルの持ち主というわけではなかったと思います。ただ自身の体型と魅力、ファッションにおける演出を完璧に理解していた。ぜひ学びたい姿勢です」(清水さん・以下同)。ハイライズのワイドジーンズにはベルトループやバックポケットにダブルCがあしらわれている。カラフルなフラワーモチーフのジュエルボタンが並ぶコットンツイードのコートを羽織って。
選び抜いた小物に表れる審美眼

時計「タンク アメリカン」¥638,000/カルティエ カスタマー サービスセンター(カルティエ) リング「ジェイド ミディアム ドーナツ リング」¥121,000/エスケーパーズ アナザーワールド(ソフィー ブハイ) ドレス¥1,100,000(参考価格)/ボッテガ・ヴェネタ ジャパン(ボッテガ・ヴェネタ)
JFKジュニアの母、ジャクリーンからカルティエの「タンク」ウォッチを受け継いでいたというキャロリン。「ジュエリーをほとんどつけていることのないキャロリンでしたが、カルティエの時計と、小さな翡翠のリングを愛用している姿がとても印象的でした。ともに家族から譲られたものというエピソードには、彼女の内面の温かさを感じられます」。なめらかなジャージのドレスに、コンパクトなフォルムと丸みを帯びた縦枠の「タンク アメリカン」と、まるでドーナツのように厚みのある翡翠のリングをつけて。

バッグ「ケリー・ホーボー」〈H33×W26×D11.5〉¥1,705,000・ウールのダブルフェイスのドレス¥580,800・ブーツ¥496,100/エルメスジャポン(エルメス) カチューシャ¥31,900/アレクサンドル ドゥ パリ GINZA SIX店(アレクサンドル ドゥ パリ)
「ロゴやブランドがわかるアイテムをほとんど選ばなかったキャロリンが、結婚後に愛用していたのはエルメスのバッグでした。上質でシンプルなバッグに、ドラッグストアで買ったべっ甲柄のチープなカチューシャを合わせる。世間の基準に従うのではなく、自分の感覚でものを選べる人はすごく素敵だと思います」。
「ケリー」ラインに復活したバケツ型を携えたエレガントなドレススタイルに、細身のカチューシャをミックスマッチさせて。
美点は存分に見せる

シルクサテンのドレス¥646,800・エプロン(参考商品)/ザ・ロウ・ジャパン(ザ・ロウ) リング¥121,000/エスケーパーズ アナザーワールド(ソフィー ブハイ)
JFKジュニアとの交際後パパラッチに追われることに悩まされ、あまり公式の場に参加しなかったキャロリン。「稀少なドレスアップの機会では、よくベアトップやオフショルダーを選んでいました。自らの骨格がとても美しく映える、彼女らしいセレクトです」。今なら好んでいたのかもしれないザ・ロウのストラップレスドレスは、1920年代のオートクチュールに着想を得ている。
媚びないフェミニニティ

シルクウールのドレス¥1,450,000/クリスチャン ディオール(ディオール)
キャロリンは、1990年代を象徴する、大胆に肌が露わになるスリップドレスをさまざまなスタイリングで楽しんでいた。ウェディングにも、ナルシソ・ロドリゲスがデザインしたバイアスカットのスリップドレスを選んだ。「フェミニンなのに、周囲に媚びている感じは一切ない。素敵な佇まいには今もなお憧れます」。メゾンのアーカイブスにオマージュを捧げたドレスのサイドスリットからはレースがあふれ、アシンメトリーなシルエットを描く。
イブニングにも白シャツを着る

シャツ¥192,500・パンツ¥302,500・サングラス¥63,800・ベルト¥79,200(すべて予定価格)/セリーヌ ジャパン(セリーヌ)
シャツはキャロリンの定番。あえてメンズサイズを選んだり、カジュアルなアイテムを合わせたりしていたよう。胸もとを大きく開けたり裾の一部だけをボトムにインしたりと、さまざまな着こなしをしていた。「1999年に開催されたホイットニー美術館でのチャリティーイベントに、シンプルなメンズの白シャツと黒のロングスカートで参加していたのですが、誰よりもシックなイブニングの装いでした」。ラフに着たウィングカラーのシャツは、ルーズなシルエット。キャロリンのシグネチャー、オーバル型のサングラスとともに。
元上司が語る90年代ニューヨークと
キャロリン・べセット=ケネディ

1994年4月10日、ニューヨーク。カルバン・クラインのファッションショーのバックステージで働くキャロリン
ブランドの精神を宿した 唯一無二の魅力
キャロリン・ベセット=ケネディは不慮の事故で亡くなってから25年以上経た今もなお、ラフ・シモンズをはじめ、デザイナーやスタイリスト、エディターたちにインスピレーションを与え続けている。特にこの春、彼女とJFKジュニアをテーマにしたドラマ「ラブストーリー ジョン&キャロリン」が配信されると、彼女は90年代を知らない世代をも魅了するようになった。
彼女のスタイルを端的に表現すると「ミニマルなニューヨーク・エレガンス」だ。ウェディングドレスの概念を根底から覆したといわれるナルシソ・ロドリゲスがデザインしたバイアスカットのスリップドレスに彼女のスタイルのコンセプトが集約されている。写真に残されている日々のワードローブは黒のタートルネック、白いシャツ、ストレートジーンズ、キャメルのコートなど。色は黒、白、ベージュのモノトーンが中心。無駄な装飾を排除したシンプルなもので、ミニマリズムと呼ばれた90年代ファッションそのものを体現していた。それは彼女が当時ミニマルファッションの代表格だったカルバン・クライン社で働いていたことも影響しているだろう。キャロリンがカルバン・クラインの広報部で働いていたときの上司でPRマーケティング担当グローバル副社長だったリン・テソロが当時を振り返る。
「90年代のカルバン・クライン社はブランドの美学を反映し、足を踏み入れるすべての人に明確なメッセージを伝えていました。ミニマルで、規律正しく、そして非常に意図的な空間でした。インテリアは主に白を基調としたモダンなデザインで、唯一の花である白いランが、効果的に飾られていた。公にはなかったですが、ブランドには暗黙の『ドレスコード』が存在します。デザイナーは昔から、ブランドのストーリーを自然に前進させてくれる人々、つまり考え方や生き方、そして振る舞いそのものにブランドの精神が宿っている人たちを周囲に集めるものです。カルバン社もそうでした」

1999年5月1日にワシントンD.C.で開催されたホワイトハウス特派員協会主催の年次晩餐会で撮られた、ジョン・F・ケネディ・ジュニアとキャロリンの印象的なシーン
テソロは、キャロリンが働いていた90年代が、80年代の過剰で露骨な華やかさから、抑制された本物志向と感情的なつながりを重視する方向へと移行した時代だったことも見逃せないという。
「ファッションは、表面的な輝きから内面の美しさへ、地位や身分から個性や独自性へと変化しました。ミニマリズムは文化的な共通言語となり、すっきりとしたライン、ニュートラルな色彩、官能的なシンプルさ、そして控えめながらも確かな自信が、モダンで紛れもなくクールな印象を与えました。90年代はファッションが文化から切り離されてはいませんでした。音楽、アート、映画、ナイトライフ、写真、セレブリティが即時的で刺激的な形で結びつき、特にニューヨークには、再現するのが難しいほどリアルで即効性のある創造的なエネルギーがあったんです。同時に、デザイナーたちは非常に明確なビジョンを持っていました。カルバン・クラインはミニマリズムとモダンな官能性、ラルフ・ローレンは憧れとアメリカンスタイル、ダナ・キャランは力強い都会的な装いといったように。人々は単に服を買うのではなく、自分自身のアイデンティティや、自分がどうありたいかというイメージで服を着ていました」
日々顔を合わせていた当時を思い出し、キャロリンの印象をこう語る。
「自然で気取らない、エレガントなスタイルの持ち主。キャロリンはプロポーション、品質、そして何が必要で何が不要なのかを理解していました。天性のファッションへの理解力こそが彼女を唯一無二の存在にし、カルバンのブランドビジョンにとって貴重なものだったのです」
カルバン・クラインのデザインチームで働いていたナルシソ・ロドリゲスも、キャロリンがクライン本人のデザインに影響を与えていたことを米国版『ヴォーグ』で語っている。テソロはデザイナーを魅了するキャロリンについて次のように語る。
「あらゆるレベルのデザイナーは、自分のビジョンを自然に体現し、さらに発展させてくれる人に惹かれるもの。そうしたつながりは瞬時に生まれることもあれば、そうでないこともあります。興味深いのは、デザインの着想源となる人物が、必ずしも美しくもファッショナブルであるとも限らないのに、何らかの理由でアイデアに形を与えたり、何か欠けているものを表現する手助けをしたりする。それが斬新で、感情に訴えかけ、時代を反映しているように感じられます。実に魅力的なプロセスであり、それを目のあたりにできたことを幸運に思います」
それにしても、アメリカを代表するファッション・アイコンがケネディ家から出ていることは興味深い。義理の母ジャクリーン・ケネディはヨーロッパのエレガンスをアメリカに持ち込み、キャロリンはニューヨークのミニマルなエレガンスを今に伝えている。