1837年の創業以来、卓越した職人技とユーモアあふれる創造性で世界中の女性たちを魅了してきたエルメス。連載「エルメスを巡る冒険」では、その歴史をたどりながら新たな名品を紹介していく。

エルメスのレザーブレスレットに見る、クリエイティビティの源【エルメスを巡る冒険vol.2】

1837年の創業以来、卓越した職人技とユーモアあふれる創造性で世界中の女性たちを魅了してきたエルメス。連載「エルメスを巡る冒険」では、その歴史をたどりながら新たな名品を紹介していく。

INDEX

エルメスの世界を形作る、16のメチエ

エルメスの壮大なストーリーの語り部となるのは、16のメチエ(製品部門)を支える職人たち。メゾンのルーツである馬具をはじめ、レザー製品、ウィメンズとメンズのプレタポルテ、ホームコレクション、2020年にローンチしたビューティ、そしてパスカル・ミュサールが考案し、2010年より始動した余剰素材に新たな価値を付与するpetit h(プティ アッシュ)。

エルメスのアーティスティック・ディレクターであるピエール=アレクシィ・デュマの指揮のもと、毎年発表される年間テーマに基づき、それぞれが独立した部門としてクリエーションに磨きをかけている。一方で、ときには互いにインスピレーションを共有しながらその世界観を発展させてきた。

16のメチエ

  1. レザー製品&乗馬
  2. レディスシルク
  3. メンズシルク
  4. レディスプレタポルテ
  5. メンズプレタポルテ
  6. シューズ
  7. ベルト
  8. ハット
  9. 手袋
  10. ジュエリー
  11. ウォッチ
  12. フレグランス
  13. ビューティ
  14. 家具&アート・オブ・リビング
  15. テーブルウェア
  16. petit h(プティ アッシュ)

今回スポットを当てるのは、エルメスらしい最高級のレザーを使ったブレスレット。デザインに込められたメゾンの哲学や、卓越した職人技に迫る。

発想の転換によって生まれた、ドゥブルトゥール

エルメスを象徴するデザインコードのひとつ、ドゥブルトゥール。レザーストラップを手首に二重に巻くというシンプルな発想が、時代を超えて愛されるスタイルになるとは、誰も想像していなかったはず。この手法を生み出したのは、マルタン・マルジェラ。アントワープの新鋭としてモードシーンで注目を集めていた彼は、1997年にエルメスのウィメンズ・プレタポルテのクリエイティブディレクターに就任した。

アイデアの原点は、マルジェラの学生時代にさかのぼる。アントワープ、パリ、ロンドンを行き来しながら蚤の市を巡っていた彼は、ヴィンテージの旅行鞄に長いレザーベルトが二重に巻かれている様子に目を留める。その構造に着想を得て、ウエストベルトを手首に巻く新たなスタイリングを思いついた。

やがてエルメスに加わった彼は、ドゥブルトゥール・ストラップを考案。1998年、メゾンを代表するウォッチ「ケープコッド」に初めて採用されたのだ。ベーシックなアイテムも、まとい方を少し変えるだけで新たな表情を生み出せる。そんなマルジェラならではの視点が、エルメスのクラフツマンシップに共鳴し、語り継がれる名作が誕生した。

3つのメゾンコードを宿した、日常使いの名品

エルメスらしい遊び心を取り入れたレザーアクセサリー

エルメスのレザーブレスレット「カデナ・エケストル」の全貌写真

レザーブレスレット「カデナ・エケストル」ドゥブルトゥール ¥194,700/エルメスジャポン

2026-'27年秋冬コレクションでは、ドゥブルトゥールがブレスレットとして新たに登場した。手もとにさりげない存在感を添えるのは、フロントに配したカデナ(南京錠)。20世紀初頭から旅行鞄のセキュリティパーツとして用いられてきたモチーフを、ジュエリーとして再解釈したのだ。実用品をアクセサリーに落とし込むギミックが光る。

しなやかなボックスカーフが、優美に寄り添う

エルメスのレザーブレスレット「カデナ・エケストル」を広げた写真

さらに特筆すべきは、美しい艶を宿した最高級のボックスカーフレザー。精緻なステッチが施され、ミニマルな佇まいの中に職人技が息づく。一本で軽やかなモード感を演出するのはもちろん、時計やほかのブレスレットとのレイヤード、あるいはシャツやニットの上から巻くスタイリングまで、自由な発想で楽しめる。

時を超えて愛される「ルージュ H」をまとう

エルメスのレザーブレスレット「カデナ・エケストル」の寄り写真

深みのある赤、「ルージュ H(アッシュ)」もまた、エルメスを象徴する色だ。その歴史は、3代目エミール・エルメスの時代、1920年代に始まる。革本来の色みを生かすことが一般的だった時代に、エルメスは美しい発色と高い耐久性を兼ね備えた新たな赤の開発に取り組んだ。そして1925年に完成したこの色は「ルージュ H」と名付けられる。

以来、レザーグッズだけでなく、「ルージュ エルメス」や「レ・マン・エルメス」といったビューティラインにも受け継がれ、メゾンの美意識を象徴する色として親しまれている。

見慣れた定番も、視点を変えるだけでぐっとモダンに見違える。そんなエルメスらしいウィットが凝縮されたブレスレットを、日々の装いに取り入れてみて。

エルメス ジャポン
http://www.hermes.com/
03-3569-3300