#58 変幻自在のアートピース【ホアキン・べラオ】

#58 変幻自在のアートピース【ホアキンの画像_1

彫刻作品のような圧倒的な存在感と、今にも動き出しそうな生命力を感じる造形。ホアキン・ベラオのジュエリーをひと言で表現するとしたら、「静と動のバランス」だ。

スペインのイビザ島で創作活動を始めたのが1970年。創作意欲はいまだ衰えることなく、ジュエリーデザイナーとしてのキャリアは優に50年を超える。ちなみに、あの石川さゆりさんも今年でデビュー50周年。黒柳徹子さんのトレードマークの「たまねぎヘア」も、じつは50年以上前から続けているスタイルらしい。何かひとつのことを半世紀以上も続けるというのは、決して簡単はことではないはず。それこそある意味“天城越え”だと思う。

話が少々脱線してしまったが、長きにわたりクリエーションを続けてきたホアキン・ベラオ氏が50周年の節目に、コロナ禍で二年越しとなる今年発表したのが「リネア(LINEA)」コレクションだ。リネアはスペイン語で「線」の意味。これまでのデザイナー人生で経験したさまざまな時代の点と点が結びついて線になり、自身の軌跡となっていることを、作品を通じて表現している。

特に心を動かされたのは、先の尖ったモチーフがいくつも重なった、「リネア」の集大成ともいえるペンダント。鋭く重みのある有機的な形状は、まるで何かの植物のトゲか、あるいは動物の牙のよう。長さも厚みもバラバラで、それぞれが思い思いの方向を向く様子は、人生の道しるべを示しているようにも思える。プリミティブなエッセンスとコンテンポラリーなムードを併せ持つだけでなく、ささやかな反骨精神も感じられる不思議な佇まい。鏡面仕上げが施されたシルバーの光沢も相まって、心地よい緊張感が漂ってくる。

首からかけるとみぞおちあたりまでくるロングタイプ。厚手のニットの上からでも確かな存在感を放ち、質感のコントラストを楽しめる。ひとつひとつのモチーフは位置も向きも自由に変えられるので、好みのバランスにアレンジできるのも面白い。さらに、先端のモチーフのみ裏側がフック状になっており、そこにコードを引っ掛ければチョーカーになるという裏技も。まるで変幻自在に姿を変える生き物を見ているようだ。オブジェのような重厚感がありながらも、柔軟で軽やか。相反する要素が見事に融合するエネルギッシュなデザインは、数々の時代の変遷を目の当たりにしてきたホアキン氏のしなやかな感性があってこそ、生み出せるものなのだろう。

 

#58 変幻自在のアートピース【ホアキンの画像_2
ネックレス ¥118,800

ホアキン・べラオ
https://joaquinberao.jp/

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