#43 ハートの妄想【Grace Lee】

先日、大好きなリース・ブルスタインちゃんのインスタグラムを通じて知ったのが、Grace Leeのジュエリー。「わーかわいい、こんなブランドあるんだー」と公式サイトをのぞいてみたら、制作拠点はLAと書かれていた。最近いいなと思うジュエリーのほとんどがLA発で、これはもう現地に行って実物を見てきなさいという神様の思し召しに違いないと思っている。家事も育児も仕事もなにもかもぜんぶ忘れて、太陽が降り注ぐ西海岸をのんびりドライブしながら、気になるデザイナーのショップをめぐり、美味しいものをたらふく食べる旅がしたい。あーなんて素敵なんでしょう。だれかー、私を連れて行ってください。

話を戻すと、Grace Leeのジュエリーはコンテンポラリーで、なおかつボリュームのあるデザインが多い印象。石使いも大胆だしインパクトがあるんだけど、そこに変な緊張感や嫌味がないというか、いい意味で「特別な日のためのジュエリー」という感じがしない。格式ばらない自由なマインド、もしくはデイリーに身につけられる懐の深さとでもいうべきか。それが今の気分にフィットする理由のような気がするし、それこそがここ最近私が気になっているLAデザイナーズブランドに共通する魅力なのかもしれない。

個人的には少々遊び心のあるテイストが好きなので、ぷっくりとしたハートシェイプのCoraリングに心を奪われ……いや、ここはあえてハートを射抜かれたといっておきましょう。ほどよく大ぶりでほどよくキャッチーで、そこにほんのりアンティークっぽさも感じられるところがまさにドンズバ。アンティークといえば、ハート型のジュエリーは中世ヨーロッパ時代からすでに愛を伝えるジュエリーとして存在していたらしい。ポップに見えて実は伝統あるモチーフ。そういうギャップにはけっこう弱いです。

大昔から人々はハートのジュエリーを贈ることでさまざまな愛を表現してきたのだろう。残念ながら自分にはそんなロマンティックな経験がなく、今回が人生初のハートジュエリーになるかもしれないというのに、「欲しけりゃ自分で買いなさい」と天の声は無情にも淡々としている。でも仮に私が自分で買ったCoraリングをつけて、行きつけのパン屋に行ったとしよう。いつもお会計をしてくれる優しいお姉さんが私の手元を見て「その指輪かわいいですね!」と褒めてくれるかもしれない。「でしょでしょー、これGrace LeeっていうLAのブランドなんですよ」などという会話を、パンを選ぶふりしてこっそり聞いている誠実そうな青年が店内にいて、彼は付き合いたての彼女の誕生日に同じリングをプレゼントしてあげようと決意するかもしれない。そうやって思いがけず誰かの心に爪痕を残し、ひいては知らず知らずのうちにラブが広がっていくかもしれない。そう思うと私はこのリングを買うことに使命感すら覚えるのだ。なーんていう言い訳はこのくらいにしておきます。

Core Ring〈14KYG〉$1,580.00

GRACE LEE
https://gracelee.com/

illustration:Uca text:Eimi Hayashi

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