心動かすジュエリーは、どのような技から生まれるのか。ブルガリ、ヴァン クリーフ&アーペル、ダミアーニ、ブチェラッティ。それぞれのメゾンを象徴するクリエーションから、受け継がれる職人技をひもとく。

2026.07.23

心動かすジュエリーはこうして生まれる。4つのメゾンが誇る職人技とは

心動かすジュエリーは、どのような技から生まれるのか。ブルガリ、ヴァン クリーフ&アーペル、ダミアーニ、ブチェラッティ。それぞれのメゾンを象徴するクリエーションから、受け継がれる職人技をひもとく。

BVLGARI

BVLGARIのジュエリー「ディーヴァ ドリーム」

(上から)「ディーヴァ ドリーム」より、イヤリング〈PG、アクアマリン、シトリン、ペリドット、ダイヤモンド〉・〈YG、ルベライト、アメシスト、ダイヤモンド〉・〈PG、グリーントルマリン、ダイヤモンド、カーネリアン、マラカイト、マザーオブパール〉(すべて参考商品)/ブルガリ・ジャパン(ブルガリ)

宝石学の知識でドラマティックに生み出す色彩

カラースキーム、つまり配色。それがクラフツマンシップかというと、立派にクラフツマンシップといえる。どの色をどう組み合わせ、どう配置して、最大の効果を引き出すのか、それには目利きの技が必要なのだ。ブルガリでそれを手がけるのは、ジュエリー クリエイティブ ディレクターであるルチア・シルヴェストリ。彼女は宝石学の知識があり、ジュエリーのデザインだけでなく、宝石の買いつけも行なっている。3色、4色、またはそれ以上の複雑なカラーミックスで洗練された美しさを生み出すのは、ルチアの優れた感性があってこそなのだ。

さらに、いくつもの宝石の色合いや形状をきれいに揃えるのも非常に時間と手間のかかる仕事。たとえばひとつのジュエリーの中で、宝石の色が濃かったり薄かったり、黄みがかっていたり青っぽかったりすると、全体がちぐはぐになってしまうのだ。宝石は天然のものだけに、それぞれの石には個性や違いがあって当然なのだが、ブルガリのハイジュエリーでは、宝石の色調や透明感はきちんと統一され、デザインに合わせて正確に研磨されている。難易度の高いことをさらっとやってのける実力は、やはりトップ・オブ・トップの証しだといえる。

Van Cleef & Arpels

Van Cleef & Arpelsのジュエリー「ルド ブレスレット」

(右から)現代の「ルド ブレスレット」〈YG、WG、ダイヤモンド〉¥15,180,000/ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク(ヴァン クリーフ&アーペル) 1934年に制作された「ルド ブレスレット」。フランスの著名な劇作家で映画監督のサシャ・ギトリがかつて所有していた貴重なピース(ヴァン クリーフ&アーペルコレクションより)

ゴールドをファブリックに変えるマジカルな技

硬いゴールドであることを思わず忘れてしまうほど、しなやかで肌に優しく沿うジュエリーは、ヴァン クリーフ&アーペルの得意とするところ。とりわけこの「ルド」コレクションはファブリックのごときしなやかさを実現している逸品だ。

このブレスレットは、まさに経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を通して布地を織り上げるような、丹念で地道な作業のたまもの。小さなパーツを根気よく組み上げて、ブレスレットのフレキシビリティを極限まで高めていく。

そもそもクラスプを外したときに完全にフラットになるブレスレットは、実はそう多くない。手首から外せば平らになるほどのフレキシビリティには、緻密な構造と職人の高い集中力が必要なのだ。しかも、裏側から見ても仕上がりはなめらか。職人たちは、苦労の痕跡など決してジュエリーに残さない。

1934年に最初のモデルが誕生した「ルド」を、当時のコンセプトそのままに現代も作り続けているヴァン クリーフ&アーペル。ドレスのウエストを飾るベルトをモチーフにして、クチュールとハイジュエリーの世界を融合させたデザインは、今も昔も名作として高い評価を得ている。

DAMIANI

DAMIANIのジュエリー「Ode all’Italia」

(上から)「Ode all’Italia」より、透かし細工のイヤリング〈PG、コーラル、ダイヤモンド、ブルームーンストーン〉¥14,080,000・ランダムな石の配置が個性的なブレスレット〈WG、ファンシーカラーサファイア、ブルートパーズ、ダイヤモンド〉¥15,730,000/ダミアーニ ・ジャパン(ダミアーニ)

ストーンセッティングが引き出す軽快な優雅さ

ジュエリー職人には大まかに2通りある。ゴールドの加工を専門とする金細工職人と、宝石を台座に固定する石留め職人。仕事の内容がまったく違うので、昔からこのように分かれている。ダミアーニが創業したヴァレンツァは、ジュエリーの世界的生産地イタリアでも、とりわけ高度な石留めが行われていることで知られる街。そんなヴァレンツァで誕生したジュエラーだから、ダミアーニにとって石留めはお家芸のようなものだ。

ハイジュエリーコレクション「Ode all’Italia」には、通常のパヴェではなく、透かし細工になったデザインがある。石が宙に浮いているかのように留められているので、贅沢だけれど印象は軽やか。大小の宝石が高低差をつけて配置されていて、動きも生まれている。こうした立体感あふれるセッティングは、熟練のインカストナトーレ(石留め職人)の仕事だ。

ダミアーニが誇るインカストナトーレはサンテ・リッゼット。彼は、宝石の形状や硬度を考慮しながら、それぞれふさわしい技法で台座にセットしていく。宝石を割ってしまったら取り返しがつかないので、経験と慎重さが必須となる。まばゆい輝きの背後には、いつも凄腕のマエストロがいる。

BUCCELLATI

BUCCELLATIのヴィンテージジュエリー

ブランド創始者マリオ・ブチェラッティが1960年代に手がけた珠玉のヴィンテージ。博物館に収められた古代の黄金を思わせるマジェスティックな雰囲気に目を奪われる。連続したデザインを途切れさせない特別なクラスプには、ピンクゴールドのセーフティクロージャーピンが添えられている。ネックレス〈YG、PG〉¥14,245,000/ブチェラッティ

この輝きを実現するのは昔ながらの手作業だけ

ブチェラッティのすごさは、機械ではできない非常にデリケートな細工を、腕利きの職人たちがすべて手作業で行うところにある。オークの葉をモチーフにしたこのヴィンテージネックレスは、一枚一枚の葉が微妙に表情が異なっていることに注目。イエローゴールドの薄板を葉の形に打ち抜き、叩いてリアルな起伏をつけ、さらに「セグリナート」技法でベルベットの生地を思わせるテクスチャーを葉に彫っていくのだ。

セグリナート技法はビュランと呼ばれる小さなキリのような工具を使い、細い線刻を多方向に重ねて彫って、やわらかなニュアンスを出す技法。つや消し加工の単調さとはひと味違う、しっとりとした光沢がゴールドに宿る。葉の中央にあしらわれた葉脈は、ポリッシュしたピンクゴールド。葉と葉の間にあるイエローゴールドのビーズには「リガート」と呼ばれる技法で、髪の毛よりも細い線刻がびっしりと彫られている。

もうひとつ、このネックレスのこだわりは、クラスプのありかがわからないようになっていること。髪を結い上げたスタイルでも、オークの葉が途切れなく並んで美しく見える。冴え渡る貴金属細工は、それ自体が高い価値を秘めているのだ。