今改めて注目したい漫画『神の雫』からソムリエが厳選!おすすめワインリストBEST5【うち飲み向上委員会vol.49】

2004年に連載がスタートしてから約20年がたった今も、日本のワインカルチャーに多大なる影響を与え続けている大人気ワイン漫画『神の雫』。この秋に山下智久さん主演でドラマ化されたことでも話題になっている。そこで今回のうち飲み向上委員会では、漫画『神の雫』で登場したワインを知りたい!ということで、ソムリエの田邉公一さんが厳選したお値段以上のおいしさを約束する至極の5本をご案内!



本当においしい! 『神の雫』掲載の間違いないワイン5選

エディターAKIYAMA(以下A)連載がスタートした当時、子どもだったSPUR読者も大人になり立派なお酒好きに(笑)。だからこそ今改めて、作品で紹介されたワインに注目したいんです!

田邉公一さん(以下T)作中でおすすめされているワインは、価格以上の評価を受けるようなものばかり。その中でも比較的手に取りやすい価格で、おいしいワインを選んだのでご期待ください!

ライターYOKOMIZO(以下Z)ソムリエお墨付きの「ベストうち飲み賞」も発表しますので、ぜひご参考に♪

シャンパン製法のロゼスプマンテ「フェッラーリ ロゼ」

フェッラーリ ロゼ〈750㎖〉日欧商事(フェッラーリ)
フェッラーリ ロゼ〈750㎖〉¥7,700/日欧商事(フェッラーリ)

A 今回ご紹介するワイン5本は、第一部『神の雫』と第二部『マリアージュ~ 神の雫 最終章~』からピックアップしているので、ロングセラーから新しいものまで新旧ワインが揃っているとのこと!

Z 漫画に登場するワインはやはり高額なものが多いんですか?

T 僕もそうなのかなと思っていたんですけど、全然そんなことない! 超高級ワインをバンバン登場させながら、安価なワインも満遍なく網羅していますね。今日はミドルレンジのプライスでおすすめのものをセレクトしました。

A 第一部『神の雫』は、“使徒”と呼ばれる12本のワインの銘柄を言い当てる対決が物語の軸となっていますが、12本のワインの価値はいかがでしょう? 

T めちゃくちゃ高いですし、手に入りにくいワインばかりです(笑)! メインの12使徒ではなく、エピソードに登場するワインはお手頃でメジャーなワインも出てくるんですよ。この「フェッラーリ ロゼ」もそう。第一部最終巻の打ち上げシーンで、乾杯ワインとして登場します。ロゼのシャンパンと比較するとかなりリーズナブル!

Z 作中では、上等なシャンパーニュに負けず劣らずの華やかさと褒められていましたね!

T シャンパーニュ方式で瓶内二次発酵製法で造られています。ピノ・ネロつまりピノ・ノワールが60%で主体、シャルドネが40%の、シャンパンと同じ品種のブレンド。この方式特有のトーストのような酵母の香りもちゃんとあって、シャンパンに引けをとりません

A 辛口だけど、木苺とかちょっとチャーミングな甘みがあり、リッチでおいしい! このワイナリーは?

T かなり有名なワイナリーです。産地はトレンティーノというオーストリア国境沿いにある冷涼なエリアで、スパークリング造りに向いています。フェッラーリは白のスパークリングもおいしく、おすすめです。安定感のある味わいで、ブラインドで飲んだらシャンパンだと思う人もいるんじゃないかな。

Z 苦しんでも逃げずに使徒を撃破したような、大勝利を遂げた時にはこのロゼスパークリングで乾杯しましょう♪

A それは『エヴァンゲリオン』!(笑)

大ブレイクしたコスパ最強の赤「シャトー・モン・ペラ ルージュ 2020」

シャトー・モン・ペラ ルージュ 2020
シャトー・モン・ペラ ルージュ 2020〈750㎖〉参考上代¥3,652/ファインズ(シャトー・モン・ペラ)

Z 『神の雫』をきっかけにカリフォルニアワインのオーパス・ワンがブレイクしたことは有名ですが、ほかにも本作をきっかけに話題を集めたワインはたくさんあったのですか?

T すごく流行ったのは、このモンペラ。第一部1巻で登場し、主人公の雫が生まれて初めて飲むワインがモンペラなんです。その時に飲み比べたのが、高額なオーパス・ワン。ワインについてド素人だけど味覚センス抜群の雫が、「こっちが好き」と選んだのがモンペラだった。当時、モンペラは日本ではまったく知られていなかったワイン。僕もソムリエになって数年たった頃で、初耳でしたが実際に飲んでみたら本当においしかった! 「この漫画に登場するワインはおいしいぞ。読めば掘り出し物がわかるぞ」と多くの人が思うきっかけになり、インパクトと説得力を与えましたよね。今もモンペラは売れ続けてます。白もあるんですけど、そっちもおいしいですよ。

A “神の雫”売れ!プロも納得させるとは、どんな味わいなのでしょうか?

T モンペラはかなり本格的な味なんです!

A ワインでいうところの本格的な味とは!?

T 果実が凝縮したような、軽くないテイスト。尚且つ、果実の凝縮感に対してスパイスとか複雑性のある香りがあることですね

Z 田邉さんがモンペラを評価されているポイントは、値段の割に本格的な味であることですか?

T こんなに高級感のある味でありながら、安くリリースできるのはすごい! モンペラの産地はボルドーの右岸の方にあり、カジュアルラインが造られているエリア。ミッシェル・ローランという有名なコンサルタントが関わっているんですけど、その人はとんでもなく高いワインに関わっていたりとか、すごいワインをいっぱい造ったりしていて、おそらく世界で一番人気の醸造コンサルタント。その人が造ったカジュアルワインなんです! 葡萄の収穫量を徹底的に抑えて房の量も減らし、大量生産せずに葡萄のエネルギーがより出るようにすることで、すごく風味のあるワインに仕上げています

Z 雫がこれ飲んだ時に「クイーンの音楽が聴こえてきた」と表現しているんですけど、ちょっと私には壮大すぎて……わかりやすく解釈していただけると助かります!

T そうでしたね(笑)。パッションを感じる味わいということだと思います。雫が言いたいことはわかりますよ、エネルギッシュで深い味という意味かな。

シャトー・モン・ペラ ルージュ 2020をチェック!

上品な甘みに夢心地「ラフィーユ トレゾワ リザーブド 甲州 NV」

ラフィーユ トレゾワ リザーブド 甲州 NV
ラフィーユ トレゾワ リザーブド 甲州 NV〈750㎖〉¥3,905/まるき葡萄酒

A 香りも味も、デザートワインにぴったりですね! 甘いだけじゃなくて、葡萄本来の果実味を残しつつ、深みや苦味など色んな要素があってブランデーっぽい

T 山梨県にある、現存する日本最古のワイナリー・まるき葡萄酒のワインです。30〜40年もの間、一升瓶で地下貯蔵していた古酒をブレンドしたちょっと甘い白。作品ではマンゴーとマリアージュしていましたね。雫がワインコンサルタントとして訪れたオーベルジュで、コース料理すべてに日本ワインをマリアージュさせる第二部のエピソードでした。

A マンゴーのジューシーさと絶対合いますね、これを食後に飲んだらご機嫌に締められる♪ 

Z 甲州品種といえば爽やか辛口系で、お刺身などに合うクセがない白ワインという印象でした。こんな味わいにもなるんだ〜! 古酒のブレンドってどういうことなんですか?

T それぞれのワインを造って、試飲しながら調合していくんです。ベストな配合を見つけたら、味を馴染ませるために瓶熟成させて世の中にリリースするという流れ。

A まるで実験のようですね、こういう造り方は一般的なんですか?

T シャンパンではこれほど年代物の古酒と混ぜないのですが、アッサンブラージュという製法と似ています。ピノ・ノワールやシャルドネなど異なる品種や、畑違いの葡萄を混ぜたりするんです。これは甲州だけで造り、ストックしていた古酒を複数ブレンドしていてユニークなのでぜひお試しを

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塩辛と100%のマリアージュ「レ・マッキオーレ ボルゲリ・ロッソ」

レ・マッキオーレ ボルゲリ・ロッソ
レ・マッキオーレ ボルゲリ・ロッソ 〈750㎖〉¥4,950/モトックス(アジィエンダ・アグリコーラ・レ・マッキオーレ)

T お次はイタリア、トスカーナの赤ワイン。第二部の1巻で登場するワインをチョイスしました!

A 最初のエピソードで取り上げているだけあって、抜群に美味♡ カシスやベリーを濃縮したような果実味、シルキーな舌触りで贅沢気分が味わえます。食欲も掻き立てられるな〜!

T 第二部はタイトルの通り料理とワインの“マリアージュ”がテーマ。ですが、定番の組み合わが出てくるわけではないのでユニークですよ。この赤は、イカの塩辛に合わせるワインとして雫が選んだもの。イカの塩辛は、非常に難題なんですよね。

Z その難題を、田邉さんが尋ねられたらどうしますか?

T え(笑)! テロワール合わせで、海の要素があるワインでなきゃダメだなと思います。イカが食べられている産地で、ミネラル感のある味わい。日本だったら北海道のピノ・ノワールとか合いそう。

A 海産物だと白ワインを選んでしまいそうですが、赤がおすすめなんですね。ちょっと意外でした!

T 作中ではイカの塩辛をブルーチーズのようだと評していて、ゴルゴンゾーラを合わせるような感じで赤ワインとマリアージュしていましたね。さらに、トスカーナ州といえばキャンティが有名ですが、この赤ワインが造られているのは海岸沿いボルゲリというエリア。海に近い産地で、テロワールもちゃんと合っているんですよ。

Z やはりテロワールが決め手になっているんですね! マリアージュ抜きで、このワインをおすすめする理由は?

T ボルゲリはボルドーの葡萄を持ってきて造っていて、イタリアの中でも特殊な産地なんです。イタリアは地元の土着品種を崇拝していますが、ここではメルローやカベルネ・ソーヴィニヨンが植えられていて、イタリアのモダンスタイルとなってブレイクしました! キャンティと同じトスカーナ州だけど、葡萄はフランス品種でスタイルが全然違う。ボルドー的、あるいはカリフォルニア的な果実主体の甘い感じに仕上がっていますね。知らずに飲んだら、イタリアのものだとわからないかもしれません。

 レ・マッキオーレ ボルゲリ・ロッソ をチェック!

日本酒の酵母がアクセント「ぎんの雫・グット・ダルジャン・ソーヴィニヨン・ブラン」

ぎんの雫・グット・ダルジャン・ソーヴィニヨン・ブラン
ぎんの雫・グット・ダルジャン・ソーヴィニヨン・ブラン〈750㎖〉¥3,608/トゥエンティーワンコミュニティ(ヴィニャ・マーティ)

T 「ぎんの雫 グット・ダルジャン ソーヴィニヨン・ブラン」は2019年にリリースされた、作中で取り上げられたワインの中では新しめの白。第二部、アジアンビストロのエピソードで登場し、パクチーとマリアージュしているんですけど、パクチーに合うワインってなかなか難しい!

A でも、このワインなら合うんですよね! どんなワインなのですか?

T チリで生産しているソーヴィヨン・ブランですけど、日本酒の酵母を醸して、日本酒みたいに超低温で発酵しているんです! 奇をてらっているように思えるかもしれませんが、この生産者はかつてオーパス・ワンの醸造に関わっていて、実力十分。

Z ソーヴィニヨン・ブランだけど何か違う、マイルドなクセにハマっちゃう! 主人公の雫のようにワインを表現するならば、清涼感がありつつも風味豊かでエッジが効いている。それはまるで、藤井風のような白です♡

A 存在も才能もオンリーワンな風さん、的を射ているのかもしれない(笑)。

T 日本酒の酵母を使用することで、吟醸香のあるワインに。日本人には親しみがあって、気に入ると思います! 登場する料理はパクチーとシェーブルチーズのサラダですが、シェーブルチーズとソーヴィニョンブランは元々相性が良く、間違いないですよ。

A リアルな世界でもエスニック料理は大人気ですが、田邉さんがペアリングするとしたら、どういったテイストがいいと思いますか?

T ニュージーランドのソーヴィヨン・ブランとか、ハーブの香りが結構強く、爽やかな柑橘系の香りがする白ワインは、香草を使った料理に合うと思います。ニュージーランドも海洋性気候で少しジメジメしていて、アジアの気候と共通点があり同調しやすいですね。

ぎんの雫・グット・ダルジャン・ソーヴィニヨン・ブランをチェック!

〜今回の「ベストうち飲み賞」を発表!〜

A どのワインもおいしくて、『神の雫』で紹介されているワインは本当に間違いないんだなと実感しました。今回うち飲み向上委員会でご紹介したのは、作中で登場するワインのほんの一部ではありますが、プロの目から見てどう思われましたか?

T ワインのクオリティは高いですし、選ばれている銘柄やマリアージュに共感できる部分がたくさんありました!

Z このチョイスはすごいとプロも唸るワインを選ぶなら?

T やはり「シャトー・モン・ペラ ルージュ 2020」は、『神の雫』を有名にさせた伝説的なワイン。でも作品が発表された時からだいぶ時間も経っているので、今は一周回って知らない人も多いはずだから、これを機に飲んでいただけたらなと思います。

Z 約20年経っても売れ続けているというのもすごいことですよね、超ロングヒット!

T 新旧のワインで一本ずつなら、「ぎんの雫・グット・ダルジャン・ソーヴィニヨン・ブラン」もリコメンドしたいです。独特のスタイルがあって、そんなところも漫画の魅力とシンクロしているなと思います。

A 今日ご紹介したワインを飲みながら、漫画やドラマをぜひお楽しみください!

【うち飲み向上委員会メンバー】 
田邉公一
ソムリエ・ワインディレクター。レストランやワインショップ数社の飲料の監修を手掛ける。飲食店のワインはもちろん、コンビニやスーパーのワインにも一切の妥協なく日夜真剣に向き合っている。ワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」の講師。https://twitter.com/tanabe_duvin

ライターYOKOMIZO
おいしいお酒とごはんのためなら、高い海外輸送費も厭わず即ポチ。苦手な家事は休日に大好物の泡を飲みながらやっつけます。最近は海外の料理番組を観て、妄想トラベル。

エディターAKIYAMA
お酒はもっぱら外でハシゴ酒だったのが、ここ3年でうち飲みの魅力に開眼! おいしいお酒を飲みながら、ほろ酔い気分で愛猫と遊ぶのが至福の時間。

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