家庭や飲食店での食べ残し、賞味期限切れの食品など、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品のことをフードロスと呼ぶ。近年それが社会問題となっていることは周知の通りだ。

環境省の発表によると、2023年度の日本の食品ロス量は464万トン*。これは、国民全員がコンビニのおにぎりを毎日1個ずつ捨てている量に相当する。フードロスは温室効果ガスの排出量を増やす要因のひとつでもあるため、単に「もったいない」だけではなく、削減が急務となっている。

そんな中、今注目されているのが北欧発のフードロス削減アプリ「Too Good To Go(トゥー・グッド・トゥ・ゴー、以下TGTG)」だ。2026年1月にアジア初の拠点として日本に上陸し、サービス開始からわずか1週間で登録ユーザー数25万人を突破。5月時点で50万人まで伸ばしている。急成長の理由はどこにあるのか。TGTG ジャパンのマーケティング統括を務める篠原佳名子さんに話を聞いた。

*環境省「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和5年度)の公表について」より

2026.05.23

食費を節約できて、CO2eも抑えられる。北欧発のフードロス削減アプリ「Too Good To Go」とは

家庭や飲食店での食べ残し、賞味期限切れの食品など、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品のことをフードロスと呼ぶ。近年それが社会問題となっていることは周知の通りだ。

環境省の発表によると、2023年度の日本の食品ロス量は464万トン*。これは、国民全員がコンビニのおにぎりを毎日1個ずつ捨てている量に相当する。フードロスは温室効果ガスの排出量を増やす要因のひとつでもあるため、単に「もったいない」だけではなく、削減が急務となっている。

そんな中、今注目されているのが北欧発のフードロス削減アプリ「Too Good To Go(トゥー・グッド・トゥ・ゴー、以下TGTG)」だ。2026年1月にアジア初の拠点として日本に上陸し、サービス開始からわずか1週間で登録ユーザー数25万人を突破。5月時点で50万人まで伸ばしている。急成長の理由はどこにあるのか。TGTG ジャパンのマーケティング統括を務める篠原佳名子さんに話を聞いた。

*環境省「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和5年度)の公表について」より

INDEX

まだ美味しく食べられるものをほぼ半額で。三方良しのビジネスモデル

Too Good To Goのサプライズバッグを手渡す様子

TGTGは、フードロスを減らしたい飲食店や小売店と、食品を美味しくお得に食べたい消費者とをつなぐサービスだ。日本語に直訳すると「捨てるにはあまりに良すぎる」となり、「もったいない」とほぼ同義となる。

2016年にデンマークでローンチし、現在はヨーロッパや北米、オセアニア地域の21ヵ国で展開されている。1億2,000万人以上のユーザーと20万社以上のパートナーを擁し、フードシェアリングアプリにおけるユーザー数では世界一を誇る。

日本では2026年1月末からサービスを開始。ファミリーマートやローソン、クリスピー・クリーム・ドーナツなどの大手企業から個人経営の飲食店まで、東京都内を中心に300店舗以上が参加している。

フードロス削減アプリToo Good To Goの利用方法

TGTGの加盟店舗は、その日の売れ行きを見ながら、フードロスになってしまいそうな食品を「サプライズバッグ」として、通常価格のほぼ半額で提供する。ただし出品するためには、月額1,000円の利用料と少額の手数料を支払うことが条件となっている。

一方、ユーザーは誰でも無料でTGTGを利用できる。まず、アプリ上に表示される現在地周辺の地図から、サプライズバッグを販売している店舗を検索する。その中から食べたい商品を選択し、受け取り時間を指定して「予約する」ボタンをタップすれば完了だ。アプリ上で決済予約し、指定の時間帯に店舗に行って予約完了画面を見せれば、サプライズバッグが手渡される。購入後はアプリ上のマイページから、自分たちが防いだCO2e*や節約した金額を確認することができる。

加盟店は、これまでコストをかけて廃棄してしまっていたものを、サプライズバッグとして出品することで新しい収益へ変えられる。ユーザーは、まだまだ美味しく食べられるものを定価よりもお得に手に入れることができる。両者にベネフィットがあるだけでなく、ひいてはそれが環境負荷を抑えることにもつながる。TGTGは、三方良しのビジネスモデルなのだ。

*CO2eとは、メタンやフロンなどを含むすべての温室効果ガスをCO2に換算した合計値のこと

新しい店、新しい味との出合いのきっかけにも

Too Good To Goの加盟店、Aubrey House 渋谷青山店がサプライズバッグとして出品しているグリークヨーグルト

加盟店のひとつであるAubrey House 渋谷青山店は、アサイーボウルやグリークヨーグルトなどをサプライズバッグとして定価の約半額で出品している

前述の通り、店側はその日に余ってしまいそうな食品をサプライズバッグとして提供する。アプリ上では「パンの詰め合わせ」や「おつまみ3種セット」などと表示され、具体的な料理名や種類まではわからない。バッグの中身は受け取ってからのお楽しみとなる。

「たとえば、あるおにぎり屋さんが、梅・おかか・ツナのおにぎりを毎日販売しているとします。どの種類が何個余ってしまうかは日によって変わるので、サプライズバッグの中身を決めず、『おにぎり詰め合わせ』として出品します。そうすることによって、店側には再分配の手間を省けるというメリットがあり、ユーザーにとっては普段選ばないような味を試す機会にもなります」と篠原さんは言う。

また、加盟店はTGTGの販路を使うことによって、新しい顧客獲得のチャンスにもつなげられるという。

「独自調査の結果、約60%のユーザーが、TGTGをきっかけに初めての店舗を訪れていることがわかりました。売れ残った商品を出品いただくことで収益が生まれるだけでなく、これまで接点のなかった人に来店してもらえる可能性も高まります。またユーザーからすると、家の近所や通勤経路で、新しい店や味との出合いが生まれます。TGTGがデリバリーではなく、ユーザーに取りに行ってもらうスタイルにこだわっているのは、実際に足を運んで、その店の雰囲気を知っていただきたいという思いがあるからです」

日本特有の課題と向き合い、ハイパーローカルなサービスを目指す

Too Good To Goの加盟店、Aubrey House 渋谷青山店のサプライズバッグの受け渡しの様子

日本でのサービスローンチから数ヵ月で、広告費を一切かけず、ユーザー数50万人を突破した。「予想以上にお客さまに共感いただけて、びっくりしています」篠原さんは確かな手応えを感じている。

当初は東京都内だけだったが、一都三県へと展開範囲も徐々に広がってきている。今後さらに規模を拡大していくためには、店舗の理解を得られるかどうかが大きなチャレンジになる。

「日本のように、安全で美味しい料理をリーズナブルに楽しめる国は、世界的に見てもほとんどないと思います。それが成り立っているのは、個々の飲食店の飽くなき努力があるからこそ。今でも十分手頃な価格帯で提供しているのに、そこからさらに値引きしてTGTGに出品するとなれば、店のブランド価値が損なわれるのではないかという懸念は多く聞かれます。ですが、アプリユーザーの再来店率は、海外事例では90%以上。さらに約40%の顧客が、サプライズバッグのほかに定価の商品もあわせて購入しているというデータもあります」

「実際に地域の飲食店に営業に行くと、フードロス削減に共感いただける店がある一方、フードロスが発生しているにもかかわらず、そもそも“ロス”だという認識がないといったケースも見受けられます。TGTGは加盟店のお力添えがないと成立しないプラットフォームなので、根気よく理解を促し、認識を変えていく必要があると思っています」

Too Good To Goの加盟店、Aubrey House 渋谷青山店のサプライズバッグの受け渡しの様子

日本でサービスを定着させていくためには、ユーザーの理解を深めていくことも重要だ。日本の消費者は、こと食品においては厳しく品質を求める傾向があり、賞味期限が過ぎただけで味を確認せずに廃棄してしまう人も少なくない。

「安全に食べられる消費期限と、美味しさなどの品質が保たれる賞味期限の違いをきちんと把握し、食品に対する正しい理解を深めていただくことも大切だと思っています。TGTGでは、そういったことも積極的に啓発していきたいです」

廃棄されるはずだったものに価値を与え、新たな利益を生み、環境保護にも貢献する。TGTGが目指すのは、すべてのユーザーの日常の徒歩圏内に複数の選択肢が生まれる、“ハイパーローカル”なサービスになること。「市区町村単位ではなく、道1本単位でフードロスを減らしていくことが理想」と篠原さんは意気込む。今後の全国規模でのサービス拡大に大いに期待したい。