2021.06.23

リアルな声から未来は変わる。生理の“ホント” を語るとき PART 2

女性同士でも意外と相談しづらい、月経にまつわるアレコレ。リアルな体験を話し合うことで、自分も、社会の未来も変えられるはず。今、改めて生理と向き合おう!

 

PART 2  SPUR.JP フェムテック調査団コラボレーション。「彼女と生理を考えるなら」

誰もが抱える、生理にまつわる素朴な疑問。SPUR.JPで活動中のフェムテック調査団のふたりが、産婦人科医の高橋怜奈先生にぶつけた。意外な生理の捉え方に、目からウロコの一幕も!

高橋怜奈先生
たかはし れな●産婦人科医。病院に勤務し診察をこなすかたわら、YouTuberとして女性ならではの体の悩みや不安について医学的見地から情報発信をしている。プロボクサー、ベリーダンサーとしての顔も。
前川かえでさん
22歳、プラントエンジニア。製造工場の設計などを行う。出張が多く、職場は男性ばかり。
松出春香さん
25歳、自営業。洋服をデザイン・製作している。婦人科検診で子宮後屈と診断された経緯あり。

Q 生理不順でピルを服用中。お金もかかるし、面倒です。これ、閉経まで続けるの?

松出 3年ほど前から、生理不順と不正出血がきっかけでピルを服用しています。生理痛が軽減するのはうれしいのですが、これから閉経までの20年以上も飲み続けるのかと思うと負担に感じます。うっかり飲み忘れないようにするのは大変だし、お金もかかる。血栓ができるとも聞くので不安です。
高橋 生理不順や重い生理痛があるなら、ピルはむしろ飲んでいたほうがいいです! ピルを飲むことで、子宮内膜症の発症リスクの低下や悪化予防、卵巣がんや大腸がんのリスク低下にもつながります。毎日飲む面倒くささや金銭面が気になるなら、ミレーナⓇを入れることもおすすめ。価格の安いピルより、トータルではおトクですよ。血栓に関しては、確かにピルを飲んでいると、飲んでいない場合より血栓ができやすくなります。でも、実は妊娠中や出産直後のほうができやすい。それに、ピルを処方するときには問診があって、リスクのある人には別の薬が処方されたり他の対処法になるので、心配しすぎる必要はないです。
前川 私もピルを服用しています。出血量や生理前のイライラは軽減されたのですが、猛烈な眠気とだるさは改善されず。どうしたらいいでしょうか。
高橋 それは、ピルの種類を変えるといいかもしれません。たとえば男性ホルモンが含まれていないタイプのピルだと、生理前の肌荒れには効果的なのですが、生理前に気分が落ち込みやすくなってしまうことも。あとは、連続服用で生理を止めるタイプのピルを使ってみては。休薬しないことで、ホルモンの変動が抑えられるので、PMSも改善するのではと思います(※)。
前川 婦人科で相談してみます!

※日本では、連続服用タイプのピルは保険適用のもののみ。医師に相談を。

Q 便利そうで気になる月経カップ。実際みんな、どうやって洗っているの?

前川 月経カップを使ってみたいのですが、取り替える際に洗うんですよね? そのハードルが高くて。みなさん、外出先ではどうしているんでしょうか。
高橋 洗うのは、基本的に1日に1回でいいんです。だから外出先のトイレで洗う必要はありません。カップにたまった経血をトイレに流したら、そのまま入れ直せば大丈夫です。手指の清潔が気になる方は、使い捨てのビニール手袋を携帯しておいて、使ったらサニタリーボックスに捨てても。ペットボトルに水を入れて持ち歩き、経血を抜いた後に洗ったり、アルコール入りウェットシートで拭くという手もありますよ。
前川 なるほど。ナプキンを取り替えるように、1日に何度も洗うのかと思いました。 松出 私は、生理用品で肌がすごく荒れてしまう。だから月経カップが気になります。
高橋 月経カップは肌が弱い人には本当におすすめです。膣内に入れることに抵抗があるなら、ソフィのシンクロフィット®を使ってみては。ナプキンより密着性があり広範囲に経血が広がらないので、かぶれ予防になります。デリケートゾーン用のウェットティッシュもありますよ。

Q 不快感、出血、偏頭痛……痛みに耐える生活は、もうイヤなんです!

松出 私は、生理2、3日目によく頭痛が始まるんです。でも頭痛なんかに負けたくないという思いもあり(笑)、痛み止めの薬を飲まずに頑張ってしまうことが。薬はどのタイミングで飲むといいのでしょうか。
高橋 我慢する必要はないです! 痛くなる予兆を感じたらすぐに薬を飲んでほしいし、痛む前に飲んでしまうくらいで大丈夫。
松出 えっ! 頑張って我慢していました。
高橋 薬を使わずに痛みを経験し続けていると、脳の中の痛みを感じる回路に悪影響が出て、より痛みを感じやすい体質になってしまうこともあるんです。だから痛みとは闘わず、医学の力を頼ってほしいです。
松出 これからは頑張らずに飲みますね。
前川 私は、天候によって頭痛が発生するタイプ。一度、5日連続で頭痛薬を服用したことがあります。さすがに、こんなに連続で服用するのは体に悪いですよね?
高橋 短期間で用法・用量を守っている服用なら特に大きな問題はないと思いますよ。ただし、そもそもの頭痛の原因は、頭痛外来などで調べてみてください。
前川 わかりました。でも正直に言って、生理が来ること自体が憂うつでつらいです。まだまだ続くこれからの人生、生理にどう向き合っていけばいいのでしょうか……。
高橋 とてもよくわかります。でも、頭痛と同じで生理と闘う必要はまったくないんです。昔に比べて女性が産む子どもの数が減ったので、現代の女性は人生で経験する生理の回数が増えています。生理の回数が多ければ多いほど子宮内膜症の発症リスクが高くなるし、排卵の回数が増えれば卵巣がんの発症リスクが高まる。だから今すぐに妊娠を希望していないのであれば、ピルやホルモン療法、ミレーナ®で生理や排卵をコントロールすることも考えてみてほしいですね。
松出 なるほど、目からウロコです! 今日は、これからの人生に役立ちそうな知識をたくさん得ることができました。
前川 ありがとうございました!

SOURCE:SPUR 2021年8月号「リアルな声から未来は変わる 生理の“ホント” を語るとき」
illustration: Ran Kobayashi cooperation: Rena Takahashi text: Chiharu Itagaki

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