6サロンが語る、ヘアサロンの今

 2018年、ヘアサロン軒数は増加傾向だったという。目立つのは個性を打ち出した小規模の独立店。その理由を探る。
美容師自身の趣味嗜好も強くなって、どうしたいかがより明確になってきていると感じます」と話すのは、「OFF」代表の酒井さん。さかのぼること20年ほど前、世の中は空前のカリスマ美容師ブームだった。その頃26歳でいち早く独立し、渋谷の雑居ビルに小さなサロンを開業。大型サロンに注目が集まっていたときにこの道を選んだのは「完全にあの時代へのカウンターだったんです」と酒井さんは語る。 また、10年以上代表を務める「Praha」の別店舗として、2月上旬に「Moonlight」をオープンさせた大川さんはこう語る。「18歳で美容師の世界に入り、理想の美容室とは一体何だろうと常に模索をしていました。通り一辺倒じゃなく、どうすれば自分らしくお客さんをもてなせるだろうと考えた結果が、今のサロンのカタチになった、という感じかもしれません」
 2017年に独立した「いつくし」の才田さんは、小規模サロンならではの強みを意識して開業した。「ファッションブランド同様に、一本芯の通った発信力のあるサロンをつくりたかったんです」(才田さん)。  
 その“発信力”を早い時期から考えて、コンセプチュアルなサロン作りをしていたのが「WARSAW」の中島さん。
 12年前にフレンチガーリーな世界観の「Valentine」をオープンし、話題に。「情報が氾濫する都心で美容室をやるなら、テーマ性があるほうが目につくんじゃないかな、と。ただ時代とともに自分もお客さんの気持ちも変わっていくので、2年ほど前に店名も『WARSAW』に変え、70~80年代のベルリンのムードを意識した店にリニューアルしました」(中島さん)。
 顧客との距離の近さも魅力だ。「SCARLET」のNagasakaさんは、2017年に姉妹でカフェを併設したサロンを代々木上原にオープン。「サロンではひとりで接客していることもあって、お客さま一人ひとりと密に向き合えるようになったことはすごくよかった」と振り返る。ヘア&メイクアップ業を続けながら、昨年、都立大学に「HAIR.4038」を開店した塩澤さんもそうだ。「ローカルな場所を選んだのも、メインストリームから一歩距離を置きたかったから。近所のおばあちゃんとかも来てくれたらうれしいよね」(塩澤さん)。
 思いはさまざまだけれど、全員口を揃えていたのは「今後も個人サロンが増えていくだろう」ということ。個性あるサロンが増えることは、通う側の選択肢も広がることを意味する。自分の“好き”にフィットするサロンが増えることは、喜ばしいニュースだ。

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