【村上春樹】が翻訳。大人にこそ読んでほしい、クリスマスの名作絵本 #深夜のこっそり話 #1860

いよいよクリスマスも目前ですね。我が家ではここ数年、“クリスマスの楽しみ”としてある絵本を家族で読むことが定番化しています。それがこちら。村上春樹が翻訳したことでも知られる、クリス・ヴァン・オールズバーグ作の『急行「北極号」』です。

オールズバーグ&村上春樹が誘う、神秘的なクリスマスの旅。

『急行「北極号」』絵・文/C・V・オールズバーグ 訳/村上春樹 ¥1,650/あすなろ書房
アメリカで最も優れた子ども向け絵本に授与される「コールデコット賞」の1986年度受賞作品。『急行「北極号」』絵・文/C・V・オールズバーグ 訳/村上春樹 ¥1,650/あすなろ書房

以前ファミリー向け媒体の編集部に在籍していた時、クリエイターの方に取材する機会が多くあったのですが、おすすめの絵本を尋ねると驚くほどこの作品を挙げる人が多く。「あの人もこの人も、『北極号』なのか……!」と、クリエイターたちを魅了するその訳が知りたくて、すぐさまポチった作品です。

我が家では現在6歳になる娘が年少の頃から読み始めたのですが、気がつくと娘以上に私が夢中に。絵本=子ども向けと侮るなかれ、“大人のための絵本”と言っていいほど、深い内容に驚きました。

ストーリーは、主人公の少年がクリスマス・イブの真夜中に、大勢の子どもたちと一緒に急行『北極号』に乗って、サンタクロースが住む街・北極点を目指すというもの。森を越え、荒野を越え、山を越え。北極点にたどり着いた末に、少年はついにサンタクロースに対面し、ある贈り物を貰います。その贈り物が、少年の心に生涯刻まれることとなって……という、クリスマスに相応しい幻想的な旅物語なのですが、兎にも角にもこちらの絵本、村上春樹の翻訳が美しい! 私自身はハルキストではないので、村上春樹の翻訳の凄みについて深く語れないのが恐縮なのですが、言葉の一つひとつが洗練されていて、緻密で、心地よくて……。アメリカの絵本ながら、この作品を通して日本語の美しさを再認識しました。(ちなみにオールズバーグの大ファンでもある村上春樹は、彼の作品のほぼ全てを翻訳しています)

サンタクロースを信じられなくなった貴方へ……

『急行「北極号」』絵・文/C・V・オールズバーグ 訳/村上春樹 ¥1,650/あすなろ書房
光の魔術師と称されるオールズバーグの美しいイラストにもうっとり。2004年にはトム・ハンクスが主人公の声優を務めたフルCGアニメ映画も公開されています(Netflixで視聴可能)

またこの作品はメッセージ性も素晴らしく、オールズバーグが読者に問いかけるのは、「あなたは“信じる心”を持っているか?」ということ。誰かを信じること。そして自分を信じること。そんな揺るがない信念は大人にこそ必要だよな……と、読み終わった後はそんなことを考えさせられます。

「クリスマスの夜、北極号に乗れるかな?」と目を輝かせる娘のピュアな心に触れたくて、今晩も読んでしまいそうです。

【村上春樹】が翻訳。大人にこそ読んでほしの画像_3
『急行「北極号」』の他にも、クリスマス絵本は名作揃い。毎日の絵本タイムがより楽しい時期ですね
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エディター FUJIWARA

主にライフスタイル担当。映画・バレエ鑑賞と、スパイスたっぷりの焼き菓子を作ることが心のデトックス。

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