チャ・ウヌの影のある役どころが妙に切ない『ワンダフルワールド』や、ロウンのコミカルな演技に思わず笑ってしまう『婚礼大捷＜こんれいたいしょう＞ -愛結ぶ二人-』など、話題作が続々と配信開始に！ 復讐×サスペンス、時代劇婚活ストーリーに加え、今知っておいて損なしの注目ドラマを厳選してご紹介。ぜひ視聴リストに加えてみて。
【韓国ドラマ ナビゲーター】
さすらいのライター 山崎敦子
『最高の愛 〜恋はドゥグンドゥグン〜』より韓国ドラマに魅せられ、日々最新ドラマをリサーチするさすらいのライター。さまざまなジャンルを渡り歩き、今では美容記事に携わること多し。サバイバルオーディションも大好物で、今の推しはENHYPEN。推しの俳優は絞りきれないほど多数。エクラwebでも韓流連載執筆中。
韓ドラ追っかけ班／エディターK
母の影響により、第１次韓流ブームの火付け役となった『冬のソナタ』から韓国ドラマの世界へ足を踏み入れる。「寝不足だけど幸せ」を合言葉に、約20年間あらゆるジャンルの韓流ドラマを観続けている。ドラマに加え、アイドル、コスメ、ファッションなど、日々韓国まわりの情報をキャッチアップ。ドラマを観るたびに推しの俳優が増えていく毎日です。
アン・ジェホン×リュ・スンリョン『タッカンジョン』／笑いのなかに隠された“不条理”がスパイス
タッカンジョンとは韓国の甘辛から揚げのことです。私も大好きな食べ物ですが、な、な、なんと！そのタッカンジョンにですよ、うら若き娘が変身してしまった！！というのがこのドラマの発端です。かなりシュールです。不条理です。だから、きっと好き嫌いが大きく別れるやもしれませんが、実は私的にはナップジアナ（悪くない）。というか、むしろ好き。というか、深い感慨すら覚えるというか。きっと小劇場芝居が好きな人なら、かなり楽しめるんじゃないかと。ジャンルはミステリーコメディなのですが、日常の世界を舞台に、コミカルというパワーを借りながら日常から大きく逸脱した世界へとパーンと飛ばしつつグーッと引き込み、そして、ことの真髄に触れていく……、そんな感じ。
もう、最初のシーンから、普通のドラマとはかなり違う異色なムードなんですね。なぜなら、主演のひとり、あの『マスクガール』のアン・ジェホンです。問題は衣装。ピンクシャツに青色ニットベストと黄色のパンツ……。なんというスタイルだ、なんという色彩感覚なんだ。あろうことか、彼はその姿で公道を歩きながらなんだか訳のわからない歌をずっと歌っているわけです。しかも、踊りまでつけちゃったりして。作曲家か？ いやいや、実は彼、ある機械メーカーに勤めるインターンの青年ペクジュン。その機械メーカーの社長ソンマンに扮するのがもうひとりの主人公リュ・スンリョンなのですが、ペクジュンは、イケメンがタイプというソンマン社長の娘ミナ（キム・ユジョン）に片想い中。ある日、そのミナがタッカンジョンを手土産に会社に遊びに来るのだけれど、その日届いた紫色のナゾの機械に入ったミナが「タッカンジョン」と叫んだ途端に変身！というわけです。マジか。
実はこの紫色の機械には、なんだか得体のしれない秘密が隠されているようで。ここから先は、俄然ミステリーの気配が色濃くなってきて、ヘンテコな展開ながらもぐいぐいと引き込まれていっちゃうわけです。果たしてソンマン社長とペクジュンは、愛するミナを元の姿に戻すことができるのか!? 主演のふたりはもちろん、すべてハマり役としか思えない絶妙のキャスティングといい、彼らが迫真の演技で紡いでいく不条理喜劇を圧巻のハートフル物語に仕立て上げる監督イ・ビョンホンのセンスと手腕といい。だから、あろうことか何度もジーン。「うー、不味い。でも、もう一杯」。そんな昔の青汁みたいな忘れがたい旨味。ぜひとも味わってほしいなあ。（さすらいのライター山崎）
キム・ナムジュ×チャ・ウヌ『ワンダフルワールド』／ノンストップ視聴必至！ 大人がハマる復讐×サスペンス
キム・ナムジュ『ミスティ』以来6年ぶりのドラマ復帰。１話から底知れぬ熱量を感じて震えます。愛息子ゴヌとの愛しい日々から一転。どん底に突き落とされたナムジュ演じるウン・スヒョンの姿が、まるでドキュメンタリーみたいにリアルに感じられるんですよ。演技とは到底思えないエネルギー。しかもこれまでザ・美男子役ポジションが多かったチャ・ウヌがいい意味で泥臭さを発揮しているんですね。心に闇を抱えた謎の青年ソンニュル役が、想像以上にマッチしている。（勝手に）ヌナであるナムジュの実力に触発されてナイスな化学反応を起こしているなあとニヤニヤしながら観ています。新しいウヌの姿を観たい人、単純に復讐×サスペンスが好きな人は今すぐに観始めてほしい。
幾度の流産の末に授かった愛息子ゴヌ、ニュースキャスターで自分を真っ直ぐに愛してくれる理想の夫カン・スホ（キム・ガンウ）と3人で幸せに暮らすスヒョン。心理学教授としてのキャリアも積み、まさに順風満帆の人生。ところがゴヌを事故で亡くし、奈落の底に突き落とされてしまう。しかも犯人は飲酒運転なのになぜか無罪放免。これは警察官、裁判官、全員がグルになっており、心の行き場を無くしたスヒョンは謝罪の一言も発しない犯人を突発的に殺害。刑務所で7年の時を過ごすことに。ここまでの展開が１〜２話で描かれていて、スピード感がめちゃくちゃいい。よくある脚本とも思えるのですが、デジャヴ感が一切ないのは、ナムジュの演技がとてもナチュラルだからに尽きます。こういった設定だと正直「やりすぎ感」で萎えてしまう作品もありますよね。ただ本当に涙を流すタイミング、言葉の発し方や間、表情、すべてがホンモノに見えて引き込まれてしまう。ソンニュルとの関係性も回を追うごとに深くなっていき、その経緯もまたグッと来ます。音楽と回想だけのシーンが多く、この贅沢な構成が一世代前の韓ドラみたいで懐かしくもあり、しかし古臭さはない絶妙なバランスがいい！
あともうひとついい！と思う点がスヒョンのファッション。ドラマ冒頭は白のワンピースを筆頭にエレガントなものが多く、釈放されてからのスタイルはモノトーンやデニム、動きやすさ重視のエッジの効いたファッションになっていて俄然好み。メゾン マルジェラのカーディガンも可愛かった！ 色々な視点で楽しめるドラマだけに、早くも上半期のスペシャルベスト10入りしそうなくらいハマっています。（エディターK）
チョン・ジョンソ×ムン・サンミン『ウエディング・インポッシブル』／偽装結婚の末に待つのは、真のロマンス!?
キム・ヘス主演の大ヒットお受験時代劇『シュルプ』、覚えていますか。権力争いが横行するなかで、一陣の風のごとくみずみずしい爽やかさを運んでくれた、ヘス演じる王妃の次男ソンナム大君。もちろん忘れてはおりません。演じていたのがムン・サンミン。弱冠23歳のまだまだ新人ではありますが、私の周囲では彼の次回作は主演で！という声も多々で、その彼の待望の主演作がこの作品。相手役は『ペーパー・ハウス・コリア：統一通貨を奪え』のトーキョー役チョン・ジョンソ。村上春樹の『納屋を焼く』原作の韓国映画『バーニング 劇場版』で鮮烈デビューを飾った、ちょっとエキセントリックな作品が多かった彼女がこのドラマでは初の王道ラブコメに挑んでいるのですが、はてさて、そんなふたりのケミやいかに!?
ジョンソが演じるのは、端役しかやっていない無名の俳優アジョン。アクションから畑仕事まで演技に役立つことなら一通り習ったガッツある女性なのだけど、それ相応の実力もありながら、いいお役がつかないまま29歳に。人生一度でもいいから、主役を演じてみたい。そんなアジョンに高校からの親友ドハン（キム・ドワン）が偽装結婚を持ちかけます。彼は財閥３世で、グループを継がせようと会長である祖父が政略結婚させようとしているのですが、彼にはその結婚を拒否したいある秘密があるのですね。で、その秘密を知る親友アジョンに「僕との偽装結婚でヒロインを演じてみないか」と頼むわけです。もちろん報酬付き。一度は主人公を演じてみたいアジョンは一大決心、その話に乗るわけですが、ふたりが結婚すると聞いて黙っていないのが、待ってましたのサンミン演じるドハンの弟ジハン。
彼は幼い頃に起きたある事故により兄に負い目を感じていて、なんとしても兄に財閥を継がせたい夢があるのです。それには、政略結婚が必須。売れない俳優と結婚したら、その夢が叶わない。ということで、結婚しようとするアジョンと阻止しようとするジハンのバトルが始まり、そして次第に……というお話。財閥、後継者争い、偽装結婚、兄の秘密、過去の事故、売れない女優、兄嫁VS義弟と面白くなりそうなピースは満々。それらをピタピタっとはめていくラスト3話は一気に魅せてくれますが、途中は惜しいかな中弛み感が。多すぎるピースの散漫な処理のせいか？ はたまた説明口調なセリフのやり取りの単調さからか？ いずれにせよ、サンミン、長〜い目でこれからの成長と飛躍を見守っていきますからね。ファイティン。（さすらいのライター山崎）
ロウン×チョ・イヒョン『婚礼大捷＜こんれいたいしょう＞ -愛結ぶ二人-』／朝鮮王朝で巻き起こる“婚活”物語
一言で申すと「時代劇版、婚活物語」です。架空の朝鮮時代を舞台に、それぞれ若くしてパートナーを亡くすという切ない共通点を持つシム・ジョンウ（ロウン）とチョン・スンドク（チョ・イヒョン）が、若き男女の仲人として奔走するんですね。互いの利益のために。ロウンは『恋慕』『この恋は不可抗力』に続くロマンス時代劇で着実にキャリアを積んでいますし、イヒョンは『賢い医師生活』の双子役とか、『今、私たちの学校は…』の委員長役で実力を証明していますし。で、旬なふたりのケミはいかに？となるわけです。身長差30cmの凸凹コンビ（『恋慕』も同様でした）で織りなすロマンス時代劇は、昨今日本ドラマでも話題の「婚活」ストーリーによって、よりフレッシュに見えるというか。物語前半はロマコメ強めなのでお気楽モードで楽しみつつ、後半にかけて深まる時代劇特有のドロドロモードに目を奪われつつ。この緩急もまた見どころのひとつかもしれません。
最年少かつ首席で科挙に合格する頭脳、誰もが振り返るビジュアルを持ち、王女と結婚することになったジョンウ。しかしながら婚礼中に王女が亡くなる（怪しすぎる）事態に。１日にして寡夫となった彼は、以降もちろん誰とも結婚することも許されず、大好きな出世も阻まれ、常にイライラしている様子から、付いたあだ名は「鬱憤夫」。そんな生活も８年経ったある日、義理の父こと王からある命を受けるんです。「怨女曠夫」を解決せよと。要は適齢期になってもパートナーのいない男女を結婚させてね、さもないと死ぬよという脅迫で、これに焦り狂うジョンウはスンドクに依頼をするわけです。“漢陽最高の仲人”こと通称ヨジュ宅は、その筋では神のように崇められ、彼女の見立てに狂いなしで次々と未婚男女を結婚させる実力者。実はこれはスンドクの裏の顔で、表向きは左議政の次男の妻なんですよ。いいところの両班（ヤンパン）。悲しい過去を背負いながら二重生活を送るスンドクと、空気の読めない引きこもり鬱憤夫かつコミカル担当（になっている）ジョンウが少しずつ距離を縮めていく様が、従来のロマンス時代劇といった具合。
王道ゆえにストーリーは読めるし、度肝を抜かれるような展開というのはないけれど、兎にも角にもギャグ多めのロウンの熱演ぶりが必見です。こんなロウンはなかなか観られないかも!?と思うくらい振り切った演技に魅了されるので、１日の疲れを癒す特効薬としてもぜひ。（エディターK）
