タイトルからして面白さへの期待値を上げている『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』や、ソン・ジュンギ主演の社会派×ロマンス『ロ・ギワン』など、最新映画が豊作！ 今回はGWのホーム時間にサクッと観られる話題の4作品をご紹介。韓国ドラママニアのライター&エディターの熱量たっぷりのコメントとともにチェックしてみては。
【韓国ドラマ ナビゲーター】
さすらいのライター 山崎敦子
『最高の愛 〜恋はドゥグンドゥグン〜』より韓国ドラマに魅せられ、日々最新ドラマをリサーチするさすらいのライター。さまざまなジャンルを渡り歩き、今では美容記事に携わること多し。サバイバルオーディションも大好物で、今の推しはENHYPEN。推しの俳優は絞りきれないほど多数。エクラwebでも韓流連載執筆中。
韓ドラ追っかけ班／エディターK
母の影響により、第１次韓流ブームの火付け役となった『冬のソナタ』から韓国ドラマの世界へ足を踏み入れる。「寝不足だけど幸せ」を合言葉に、約20年間あらゆるジャンルの韓流ドラマを観続けている。ドラマに加え、アイドル、コスメ、ファッションなど、日々韓国まわりの情報をキャッチアップ。ドラマを観るたびに推しの俳優が増えていく毎日です。
コ・ギョンピョ×イ・イギョン『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』／ギャグに包み隠された“社会問題”とは
相変わらず衰えることを知らない韓流人気。第３次とも言われるこのブームを牽引したひとつが、ご存じ『愛の不時着』です。そう、財閥傲慢娘ユン・セリがパラグライダーで北朝鮮に不時着しちゃうヤツですが、うん？ 「不時着」……不時着……？ 宝くじの不時着……！ この映画、パロディか、はたまたおふざけか!? 原題は『6/45』。韓国の宝くじ「ロト」の名称なのですが、日本ではなんのこっちゃですよね。ユン・セリならぬこのロトの当たりクジ１枚（なんと6億円！）が、風に乗ってスイスイとあの38度線付近へと飛んでいくのがそもそもの始まり。で、それを拾った韓国兵士パク・チョヌ（コ・ギョンピョ）は当たりくじと知って大喜びするのですが、それも束の間、またまた風に飛ばされ軍事境界線を越えて、なんと北側に「不時着」しちゃうという……。
ベタな邦題がいい味出しておりますが、ソウルからの帰国便でこの映画を観たという友人の話を聞いて、いてもたってもいられず上映中の昨年末、早速劇場へ足を運んだという次第。映画館で声を出すのはエチケット違反ではありますが、こらえてもこらえても何度も大爆笑。抜群のコメディセンス、スピーディな展開はもちろん、配役も脚本も冴え渡っているというか。案の定、宝くじは北側兵士の手に渡ってしまうのですが、とはいえ、拾った北の兵士だって、南で換金しなければ6億円は手に入らない。ということで、南北会談です。結果、南で換金する間、双方の兵士が人質になって入れ替わる宝くじ換金分配作戦が決行されることになるのですが……。
南の人質兵士チョヌを演じるコ・ギョンピョは『恋のスケッチ〜応答せよ1988〜』の生徒会長役で好感度上げたかと思えば、『D.P-脱走兵追跡官』の先輩D.P役でいい加減なヤツと思わせる、どんな役もこなせる振り幅広い演技派。で、今回も魅せてくれるんですね、お笑いもロマンスも、感動もこなす幅広さを。一方、北の人質兵士にはイ・イギョン。そう、『私の夫と結婚して』のあの最低なゲス夫ですが、一転、超真面目で頑固ないいヤツを演じていて、これがまたピタリとハマり役。そして、換金役という大役はクァク・ドンヨン。絶賛大ヒット中『涙の女王』のあの頼りない財閥弟役。もちろん、今度も頼りなさ満々で、はてさて、作戦は成功に終わるのか？ 笑いとドタバタのその中に緻密に練り込まれたジーンと胸打つメッセージ。ふ、深いなあ。とにかく、必見！（さすらいのライター山崎）
ソン・ジュンギ×チェ・ソンウン『ロ・ギワン』／苦境の中で人を愛すことができるのか
実は約7年前に一度本作のオファーを受けているソン・ジュンギ。その時に断った理由は「ギワンの選択に共感できなかったから」と。なんとも俳優魂とこだわりに溢れた回答。この言葉の意味がわかるのは、物語後半です。グッとロマンスの比重が大きくなるので、確かに疑問を持つ人もいるだろうし、好みがはっきり分かれる作品な気がする。ただ個人的にはかなり人間らしい選択だなと思うとともに、やっぱり頭ではわかっていても抗えないのが愛の真髄なのか……なんて物思いに耽ったりして。なによりジュンギも断ってからずっと心に引っかかっていて、時を経てギワンの選択に納得できるようになり再オファーを受けたのだから、タイミングによっても人それぞれの感じ方で楽しめる作品であり、余韻が残る映画であるに違いない！ 『怪物』の演技で一気に話題となった若手俳優チェ・ソンウンとのセンシュアルなシーンも美しく、まさに“魅せられた”と脱帽するんですよ。
北朝鮮出身の脱北者ロ・ギワン（ジュンギ）は母、叔父と中国に身を潜めていたのですが、不運が重なり、逃亡途中に母は死去。悲しみ嘆く暇なく選択を迫られたギワンは「ただ、生きてほしい」という母の思いのために、偽造パスポートを使用してベルギーに入国。とはいえ所持品は母の形見である財布と平壌で撮影した写真、そして母の死体を病院に売って工面したお金だけ。北朝鮮出身者であることを証明できるものがなく、難民申請の審査が通らない。このままだと北朝鮮に強制送還……って一難去ってまた一難。とにかく切ないし、やるせないことばかりなんですね。極寒のなか決してきれいとは言えない公衆トイレで過ごしたり、人種差別による暴力を受けたり、飢えにもがいたり、ついには財布を盗まれたり。ただ財布泥棒のマリ（ソンウン）と出会ったことで互いの人生が動き出していくんですよ。絶望しかない現実の中で見いだした唯一の光になるんですね。もちろん苦境であることには変わりないし、状況はなにも好転していないけれど、人を愛することの意味を改めて問うているイメージ。
『私のオオカミ少年』の時のような世間から見放された哀愁感も漂うわけなんですが、本作のほうがより一層弱々しさを感じます。かの大ヒット作『トキメキ☆成均館スキャンダル』から始まり、『太陽の末裔 Love Under The Sun』『ヴィンチェンツォ』『財閥家の末息子〜Reborn Rich〜』など、ビジュアルを全面に活かした役柄が多かったので、新たなジュンギに確実に出会えますよ！（エディターK）
カン・ハヌル×チョン・ソミン『ラブリセット 30日後、離婚します』／改めて考えさせられる夫婦のカタチ
夫婦って、ああ、夫婦って、一体なんぞや？ 未だ独身を余儀なくされている身としては、『夫婦の世界』を観て感じた、きっと私には永遠にわからないであろうそんな疑問を、『夫婦の世界』とは全くもって真逆にある笑い満載のラブコメ映画でも、またもや実感させられようとは！ いやあ、夫婦の間には計り知れないなにかがあるんですね、きっと。ということで物語ですが、主人公になる夫婦は、弁護士のジョンヨル（カン・ハヌル）と映画プロデューサーの妻ナラ（チョン・ソミン）。夫ジョンヨルは、自称知的でイケメンというソウル大学卒の秀才。セレブではない普通の家に生まれた田舎育ちで、真面目だけどどんくさく、なおかつ面倒なことにコンプレックスも抱きやすいタイプ。片や妻のナラはセレブ家族に生まれたお嬢さまで、仕事はバリバリ凄腕の豪傑さなんだけど、家事能力ゼロの破天荒キャラ。
そんなどう見ても合わないだろう！ というふたりなのですが、いきなりの大恋愛。そして、まるで映画みたいに親の大反対を押し切ってゴールインしちゃうわけです。だけど、ふたりの性格です。離婚の原因No.1は性格の不一致というけれど、当然価値観も考え方も合うわけなく、その結婚生活は殺伐とするほど荒れ狂うわけですね。私だったら、こんな生活、とてもじゃないけど耐えられません。でも、その思いはふたりも同じだったようで、ついに離婚を決意。ですよね、よかった。ところがです。韓国では１〜3ヶ月の熟慮期間を経ないと離婚が認められない制度なのですが、裁判所の調停で30日の熟慮期間の後の離婚が決まったものの、その帰り道に交通事故に遭い、なんとふたりとも記憶喪失に。つまり、憎しみ合った結婚生活の記憶も帳消し。ということは……？ はたしてふたりは無事（？）に離婚できるのか？ それとも焼け木杭に火がついちゃうのか？
なんとな〜く、予想がつきそうな展開ではありますが、それでも笑いながら最後までぐんぐん引き込まれてしまうのは、やっぱり主演のカン・ハヌルとチョン・ソミン。ふたりとも思いっきり振り切って演じてくれるのですね、両極端なキャラクターを。でもって、ふたりはロマンスの達人でもあるわけで、単なる振り切り演技だけでなくもちろん心の揺れも繊細に魅せてくれるわけですよ。韓国では2023年公開ラブコメ映画の興行収入No.1を記録した大ヒット。それにしてもやっぱり思うのは夫婦って、一体何なの？（さすらいのライター山崎）
ソン・ソック×チョン・ジョンソ『恋愛の抜けたロマンス』／大人のための新たなロマンス映画
なんてずるい人なんだ、ソン・ソック。今回はいわゆる草食系みたいなちょっと頼りない感じの役どころなんですが、大人の色気が隠し切れずにダダ漏れ。本作は「幸せになりたいのなら“恋愛”しなければいい」と“恋愛抜き”の快楽のみを求めるジャヨン（チョン・ジョンソ）と、成人向けコラムのためと割り切った関係になりきれないウリ（ソック）の大人の恋愛映画です。両者ともに共通しているのは“恋愛抜き”のロマンスなんて無理な人たちってところ。パンチのあるテーマ性に加えて、演技力に定評のあるふたりがキャスティングされたことで、かなりリアリティを感じられる！ 従来のアメリカラブコメみたいな雰囲気もありつつ、現代社会を映し出す韓国らしい演出がマッチしています。
恋愛したくないけど性欲は我慢できないジャヨン、29歳。恋人と別れたあともセフレ状態を続けていたものの、ついに「彼女と結婚するから」という理由であっけなくシャットアウト。しかし捨てられた元彼に未練があるのか否か、夢を見てしまうんですね。そして放った言葉が「29歳の女だって夢精する」。韓国映画でこんなキャラクターが登場することも面白いなと感じます。で、マッチングアプリに登録して、恋愛なしで割り切った関係になれる相手を探し始めるんです。そこで出会うのがウリというわけ。
ウリは出版社勤務で、成人向けコラム担当者が退職したことで否応なしに後任にされてしまいます。そして友人に唆されるままコラムのネタ探しのためにアプリに登録し、ジャヨンとマッチング。ご飯を食べて流れでホテルに向かい、そのまま出てくるふたり。ここでまた面白いポイントがあり、描写がないんですよ。つまりホテル内での様子が一切わからないということ。
ウリが執筆するコラムでも同様に描かれるため、この若干の“モヤモヤ感”がユーザーにウケたのか、コラムは大盛況。1回でやめるつもりが上司からの指示でやめられなくなり、罪悪感を抱きながらもジャヨンと会い続けてしまうんです。ただ始めたからには終わり、つまり“行為”に関して執筆しなければならない時がやってくる。ジャヨンも“恋愛抜き”ではいられなくなってきていたところに最悪の展開が到来と、バレない秘密はないんですよね……。コラムを知ったジャヨンがSNSで取る言動や、大衆の反応など、まさに現代社会だなと感じるシーンが多く、表現方法が自然でうまい。振り出しに戻ったふたりが今度どのような生き方を選択するのか、ベタすぎない終わらせ方も個人的に高ポイントでした。（エディターK）
