本をシェアしたり深掘りしたり。今注目のブッククラブをのぞいてみました!

ブッククラブって実際どう? 読書会に潜入して見えた、新しい本の楽しみ方

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INDEX

SPUR編集部ブッククラブ潜入リポート

【課題図書】

『一心同体だった』

『一心同体だった』山内マリコ著(集英社文庫)

山内マリコ著
集英社文庫/990円

潜入した人

ライター R

昨年、韓国人作家に取材した際、若者の間で読書会が流行していると知り、興味津々。カジュアルに参加できる場を探し中!

エディター M

本特集の企画を担当。友人と小規模な読書会を開いた経験があり、もっと世代や立場の異なる人の集まる会に行ってみたいと模索中。

迷いごと共有できる仲間とともに複雑なトピックに向き合う

SPUR編集部ブッククラブ潜入リポート

この日参加したのはSNSでつながったメンバーによる読書会「LATE CHAPTER CLUB」。課題図書は、山内マリコさんの『一心同体だった』。10歳から40歳まで、女性たちが友情のバトンをつないでいくシスターフッド小説だ。

A(30代女性):女友達の呼び方や、友達との距離の縮め方など、細部の描写がリアルだと感じました。日記風やSNS風など、章ごとに表現のフォーマットを変える工夫も秀逸でした。

B(20代男性):構成も印象的でしたよね。一章で少女Aと少女Bの関係が描かれたあと、次の章では少女Bが主人公になって別の少女Cとの関係が描かれるリレー式の連作短編なのが面白かったです。読んでいるとき、仲よかった友達のことを思い出しました。

Miwako(30代女性):視点がバトンみたいに渡っていく感じ、私も好きでした。でも、内容にはしんどさを感じることも。特に、18歳までの話は、女子同士のなれ合いを面倒くさく感じていた小中学時代を思い出してつらかった。

C(20代女性):私も学生時代の描写は、自分の記憶と重なる部分がありましたね。あの年代特有のコミュニケーションが苦手な青柳に共感しすぎて。

D(20代男性): 僕も、読んでいて苦しさを感じました。小学校の卒業式のあと、男子は全員で遊んでいたのに対して、女子はグループに分かれていたのを思い出して。最近、同窓会があったけど、参加していたのは当時同じグループにいた子たちだけで。女性同士の結びつきの強さを感じました。

SPUR編集部ブッククラブ潜入リポート

ライターR:私は20代前後の話を読んだときに、自分が周囲の目線や発言に傷ついた過去が蘇ってきましたね。でも同時に、「あのとき傷つく必要なんてなかったな」と気づくこともできた。

エディターM:私にも、この本の登場人物のように連絡が途絶えてしまった友人がいます。でも、今でもその子との忘れられない思い出が心に残っていて、それだけで十分なのかもしれない、とこの本を通して改めて感じました。

——それぞれの実体験を交えながら、自由に感想を話すメンバー。この日の選書担当Aさんがこの本を選んだ理由をきっかけに、議論は次第にジェンダーや社会構造の話題へと広がっていく。

A: 今回この本を選んだのは、suzuさんが数年前に読んだ感想で、「女の敵は女なのでは」という趣旨の内容をXに投稿されていたから。なぜそう感じたのか、ずっと気になっていて。

suzu(40代男性): 以前読んだときは、女性同士の価値観の違いや嫉妬で関係が壊れていくように見えて、そういった感想をつぶやいたんです。ただ、あれからフェミニズムを学んで、そういった仲たがいの背景には、男性からの視線や、社会に残る家父長制的な価値観があることに気づきました。でも本音を言うと、この作中の女性たちもそのことを認識できれば、関係をもっと円滑にできたのではないか……と思ってしまうところも正直ありました。

E(50代男性):気づきで言うと、僕は地方に転勤になった総合職の女性の章は、身につまされました。普段、自分は本社から地方の社員に指示を出す立場にいるので……。あと、総合職と一般職の話も印象的で。男性にはほぼ一般職という区分がない分、自分がどれほど特権的な立場にいるのかを考えさせられましたね。

——この後も対話は盛り上がり続け、メンバーは小説を通して社会課題について考えを深めていた。

潜入してみて…

ライター R

職場や学生時代のコミュニティとはまったく異なる、本を媒介に出会った人たちとの会話は、刺激に満ちている! 本を読み、感想を考え、相手の話に耳を傾ける——この一連の流れが、タイパの時代にのみ込まれ、蔑ろにしていた自分を振り返る時間になりました。

エディターM

同じ本を読んだはずなのに、性別も年齢も職業もバラバラなメンバーだと見える景色がこんなにも違うということが新鮮でとても面白かった! 周りの意見を聞いて、そういう“読み”をするか、と解釈に膝を打つことも。本の楽しみ方がぐんと広がった気がしました。

今回潜入したブッククラブはこちら!

BOOK CLUB❶ LATE CHAPTER CLUB

心理的安全性が保たれたスペースだからこそ本音で感想を語り合える

ブッククラブって実際どう? 読書会に潜入の画像_3

スタート:2025年
開催:月1回
メンバー:9人固定

プロフィール画像

suzuさんX: @nezimaki49081・MiwakoさんX: @favvy0702
「LATE CHAPTER CLUB」の共同主宰者。

「LATE CHAPTER CLUB」は、主宰者の一人suzuさんがXに「読書会がしたい」と投稿したことをきっかけに生まれた。

「コロナ禍以降、デュア・リパやナタリー・ポートマンなど海外セレブがブッククラブを立ち上げ、読書を通して他者と積極的に交流している姿を見て、ブッククラブに興味を持つようになりました。私自身、働く中で読書の機会が減っていたこともあり、本を読み、感じたことを誰かと共有する時間に豊かさを感じたんです。ただ、そのときは日本ではまだあまり根づいていない文化で、それなら自分でやってみようと思い、共同主宰者のMiwakoさんとこのブッククラブを立ち上げました」(suzuさん)

開催は月一。課題図書は、メンバーがローテーションで選んでいる。

「公平性を大切にしたかったことと、主宰者による選書の偏りを避けるため交代制に。参加者の多様なバックグラウンドもあり、これまでの課題図書を振り返ると、昭和の名作やSF小説、画家の一生を描いた作品など、ラインナップはバラエティに富んでいます」(Miwakoさん)

このクラブは固定メンバーによる、クローズドな会を保っている。

「心理的安全性を確保するために、メンバーは固定にして、積極的な発信も行なっていません。近年のSNSは多くの人の目に触れるからこそ、正直な感想が思わぬ文脈で受け取られることもあります。一方で、信頼できる人が集まるこの会では、それまでの関係性があるからこそ、たとえ意見が違っていても率直に語り合えるのが魅力です。そんなセーフスペースのようなコミュニティで今後もあり続けたいです」(suzuさん)

『すべての、白いものたちの』ハン・ガン著、斎藤真理子訳(河出文庫)

『すべての、白いものたちの』ハン・ガン著、斎藤真理子訳
河出文庫/935円

「詩的な文体で解釈の余地がある小説。美しいと感じる箇所が人それぞれに異なり、掘り下げがいのある一冊になりました」 

『ビット・プレイヤー』グレッグ・イーガン著 山岸 真訳 (早川書房)

『ビット・プレイヤー』グレッグ・イーガン著 山岸 真訳
早川書房/1,144円

SF短編集。メンバー全員が「難解」だったと吐露

『金閣寺』三島由紀夫著(新潮文庫)

『金閣寺』三島由紀夫著
新潮文庫/880円

『推し、燃ゆ』と通じる推し文学として選書。「SNSには書けない体験を交えた感想が飛び交いました」

『我が友、スミス』石田夏穂著(集英社文庫)

『我が友、スミス』石田夏穂著
集英社文庫/572円

筋トレ×フェミニズムというユニークな切り口に惹かれて課題図書に

『推し、燃ゆ』宇佐見りん著(河出書房新社)

『推し、燃ゆ』宇佐見りん著
河出書房新社/1,540円

意外にも“推し活事情”を共有する機会に

『崩れ』幸田 文著(講談社文庫)

『崩れ』幸田 文著
講談社文庫/671円

三宅唱監督のファンであるメンバーが、監督の愛読書と知り選書した幸田文の最後の長編

『少女を埋める』桜庭一樹著(文藝春秋)

『少女を埋める』桜庭一樹著
文藝春秋/1,650円

理不尽な共同体に抗う姿を真摯に描いた自伝的小説は初回の課題図書

『月と六ペンス』サマセット・モーム著 金原瑞人訳(新潮文庫)

『月と六ペンス』サマセット・モーム著 金原瑞人訳
新潮文庫/781円

手を出す機会を失いがちな海外の名作も

\参加者の声/

参加者のバックグラウンドが多様だから、紹介される本の種類も幅広く、自分にはなかった視点に出合える。

社会人になって消えていた読書習慣が復活。人と感想を共有する豊かさを実感中!

読書会に参加してから、本の選び方の軸ができた。また、語る場があることで、これまで「なんとなくよかった」で終わっていた感想を、「ここがよかった」としっかり言語化できるようになり、思考が深まった。

月1回読書会があるおかげで、忙しい日々を一度リセットできる。本を読み、じっくり感想を考えるその時間が、自分と向き合うきっかけになっている。

月1冊というノルマのおかげで読書のリズムができ、今では月3〜4冊読むように!

BOOK CLUB❷ OH! MY BOOKS

一人ひとりのペースや考えを尊重した無理なく自分と対話できる場

ブッククラブって実際どう? 読書会に潜入の画像_12

スタート:2023年
開催:月1回
メンバー:都度募集(抽選制)

福永紋那さんプロフィール画像
福永紋那さん

OH! MY BOOKSの店主。 

OH! MY BOOKS

海外ドラマでよく見る、みんなで輪になって心の内を話す場が素敵だなと思っていました。実際、お店には初対面でもパーソナルな話をしてくれる方が多くいらっしゃったので、“Reading Party”と名付け、念願だった「本を通して、自分について心置きなく語れる場」をつくることにしました。

読書会というと、物語を深く分析・考察するイメージが強いかもしれませんが、ここは違います。参加者の皆さんへの問いかけは「どの登場人物に自分を重ねた?」「好きだったシーンは?」といった、自分を語るきっかけになるものが中心です。さらに話すことも必須ではなく、人の話を聞きながら自分の中でゆっくり考えを深めるだけでも大丈夫。「これを言ったらどう思われるだろう」と考えすぎて話しづらくなることがないよう、どんな考えも否定されず、面白いと言い合える雰囲気づくりを心がけています。

課題本は毎回、私が自信を持って紹介できる一冊をセレクト。夏には特別企画として、1カ月間毎週水曜日に同じメンバーで集まる「Summer Camp」を開催していて昨夏はヴァージニア・ウルフの『月曜か火曜』を読みました。音読を取り入れるなど、いつもとは少し違うアプローチも試み、最終日には胸が熱くなる瞬間もありました。参加者から「こういう場で話していると、初めて知る自分の一面がある」と言っていただいたことが、今も印象に残っています。

普段関わらない人と話すことで見えてくる自分や、さまざまな人の感想に触れて広がる視野——それこそが、本を媒介にしたアナログな場の魅力だと思います。参加者からハワイくらいゆるいと言われる空気感なので、読書会に興味がある方はまず気軽に遊びに来ていただけたらうれしいです。

『読書と暴動 プッシー・ライオットのアクティビズム入門』ナージャ・トロコンニコワ著 野中モモ訳(SOW SWEET PUBLISHING)

『読書と暴動 プッシー・ライオットのアクティビズム入門』ナージャ・トロコンニコワ著 野中モモ訳
SOW SWEET PUBLISHING/2,860円

ロシアのフェミニスト・パンク・プロテスト・アート集団、プッシー・ライオット創立メンバーが、現代を生き抜くために必要な“実践的な知”を明かす一冊

『女友達ってむずかしい?』クレア・コーエン著 安齋奈津子訳(河出書房新社)

『女友達ってむずかしい?』クレア・コーエン著 安齋奈津子訳
河出書房新社/2,178円

「同性との友情の築き方に特化している点が興味深くて選書。参加者が、友人との喧嘩話を披露してくれました」 

『月曜か火曜』ヴァージニア・ウルフ著 ヴァネッサ・ベル画 片山亜紀訳(エトセトラブックス)

『月曜か火曜』ヴァージニア・ウルフ著 ヴァネッサ・ベル画 片山亜紀訳
エトセトラブックス/2,200円

「難しそうで先延ばしにしていた世界的作家の短編も、人と一緒ならすっと読めて、理解も深まりました」

『九月と七月の姉妹』デイジー・ジョンソン著 市田 泉訳(東京創元社)

『九月と七月の姉妹』デイジー・ジョンソン著 市田 泉訳
東京創元社/2,200円

姉妹のいびつな絆を描いた、マン・ブッカー賞史上最年少候補による長編小説

『だめをだいじょぶにしていく日々だよ』きくちゆみこ著(twililight)

『だめをだいじょぶにしていく日々だよ』きくちゆみこ著
twililight/2,090円

翻訳・文筆家のきくちゆみこの初のエッセイ集

『嵐が丘』エミリー・ブロンテ著 鴻巣友季子訳(新潮文庫)

『嵐が丘』エミリー・ブロンテ著 鴻巣友季子訳
新潮文庫/1,155円

「小説と映画の魅力や違いの話から、恋愛の話にまで発展!」

\参加者の声/

同じ作品に興味を持つ者同士だから会話が弾む。新しい視点に出合う瞬間が、何度も訪れます。

情報があふれるSNSから離れ、一冊の本を時間をかけて読む。そして、Reading Partyで、さまざまな年代の人たちと考えたことを語り合ううちに、その作品が自分の中に深く根づいていくのを感じます。

この場所でだけ顔を合わせる 関係だからこそ、気兼ねなく普段ならためらう話もできる。

BOOK CLUB❸ 書肆喫茶mori

情報が限られた海外マンガにアクセスする最短ルート

ブッククラブって実際どう? 読書会に潜入の画像_20

スタート:2025年
開催:月1回
メンバー:都度募集、オンライン参加もOK

森﨑雅世さんプロフィール画像
森﨑雅世さん

書肆喫茶moriの店主。

書肆喫茶mori

「書肆喫茶mori」は海外マンガ専門のブックカフェなのですが、海外マンガは日本ではあまり知られておらず、街の書店でも取り扱いが少なかったり、高額だったりして、手に取るまでのハードルが高いのが現状です。そこで気軽に海外マンガに出合える場としてブッククラブを立ち上げました。リアルとオンラインの両方から参加でき、国内外から集まったメンバーと、毎回テーマに沿って語り合います。海外マンガには社会や文化を知るきっかけになるテーマ性の高い作品が多く、これまで「フェミニズム」「クィア」などをテーマに開催しました。いつも冒頭で自己紹介し、おすすめの作品があれば紹介してもらいます。その後は基本的にフリートーク。3月に開催したブッククラブのテーマは「移民」で、15冊以上の物語を通して、学びを深めました。構成や作画のよさなど、海外マンガのすごみは、実際に手にしてみないとわからない部分もあります。だからこそ、リアルな場で一度触れてみてほしいです。

参加者が知っているつもりだった歴史の裏側にいる民の存在を再認識した5冊。

『マッドジャーマンズドイツ移民物語』ビルギット・ヴァイエ著 山口侑紀訳(花伝社)

『マッドジャーマンズドイツ移民物語』ビルギット・ヴァイエ著 山口侑紀訳
花伝社/1,980円

モザンビークから東ドイツへと渡った若者たちの物語

『未来のアラブ人』リアド・サトゥフ作 鵜野孝紀訳(花伝社)

『未来のアラブ人』リアド・サトゥフ作 鵜野孝紀訳
花伝社/1,980円

リビア、シリア、フランスで育った作家が、複雑な社会情勢に翻弄されながらも成長する姿を描く

『私たちにできたこと 難民になったベトナムの少女とその家族の物語』ティー・ブイ著、椎名ゆかり訳(フィルムアート社)

『私たちにできたこと 難民になったベトナムの少女とその家族の物語』ティー・ブイ著、椎名ゆかり訳
フィルムアート社/3,960円

ベトナム系アメリカ人が紡ぐ家族5世代の歴史をたどる物語

『ペルセポリスⅠイランの少女マルジ』マルジャン・サトラピ著 園田恵子訳(バジリコ)

『ペルセポリスⅠイランの少女マルジ』マルジャン・サトラピ著 園田恵子訳
バジリコ/1,540円

イラン革命を経て亡命した少女時代の記録

『〈敵〉と呼ばれても』ジョージ・タケイ著 ハーモニー・ベッカー画 青柳伸子訳(作品社)

『〈敵〉と呼ばれても』ジョージ・タケイ著 ハーモニー・ベッカー画 青柳伸子訳
作品社/2,200円

日系俳優が第二次世界大戦中に体験した、日系人強制収容所での日々を伝える

BOOK CLUB❹ Silent Book Club

開催場所はストーリーズをチェック! フラッシュモブ形式で行う黙読会

ブッククラブって実際どう? 読書会に潜入の画像_27

スタート:2024年
開催:年6回程度
メンバー:その都度募集

あかし ゆかさんプロフィール画像
あかし ゆかさん

友人とともに本企画を主宰。

2012年にサンフランシスコで始まった「Silent Book Club」。参加者がそれぞれ好きな本を持ち寄り、ただ黙々と読書を楽しむというのが特徴で、世界中に広がる読書コミュニティです。その日本支部である私たちは、「書を持って、街へ出よう」をテーマに活動しています。海外ではカフェなどで予約制で開催されることが多いですが、私たちは公園や広場など、開かれた空間で実施しています。読書とセットで、行きたかった場所に行くきっかけになればと、小田急ロマンスカーや美術館のカフェなどで開催したことも。予約不要で、開催場所は毎回インスタグラムのストーリーズで告知しています。こうしたスタイルだからこそ、気軽に参加してもらえるのが魅力。課題図書や感想の発表にハードルを感じる方はもちろん、一人だと集中力が続かない方も、街の中にふと現れる読書の風景に身を置けば、読書に没頭できるはずです。

Silent Book Club

1 新宿から箱根湯本駅へ向かう「小田急ロマンスカー」の車内で黙読会を開催。あかしさんは、物理学者・湯川秀樹の自伝『旅人 ある物理学者の回想』を持参。到着後は解散し各自で箱根観光を堪能

2・3 参加者が持ち寄る書籍は、小説やエッセイなど多彩。約1時間半の黙読のあとには希望者のみ感想を一言ずつ共有する時間も設けられている。中には意気投合して仲を深める人も

4 空港の展望デッキでも開催

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