ギターセッションで曲が誕生。親子や友達のような関係性

SEIJUN KATO

いつもこうして麦を手に乗せて演奏を楽しんでいる。「麦との共通のお気に入りを挙げるなら、ギターですね」。プリントが気に入って購入したTシャツはECKHAUS LATTA。

お気に入りのJACQUEMUSの中でも「ゲットするのを楽しみに待っていた」という特に好きなコレクションのシャツ。これを着てよく散歩へ。

 昨年の9月から、桜文鳥の麦を飼い始めたミュージシャンの加藤成順さん。幼少期から3匹の大型犬に囲まれて過ごしてきたため、上京してからずっと動物を飼いたいという強い思いがあった。

「生き物は基本的に好きだけれど、飼うなら責任を持たないといけない。今の自分が育てられるなかから、文鳥を選びました」

 よく訪れる動物園の帰りに、ペットを迎え入れることを決意。自分に懐くようにと、生後2週間の雛鳥を引き取った。

「飼い始めは、一日三度さし餌といって自作した餌をスポイトで口に直接与えていました。1カ月くらいは外出を最低限に抑えて、結構大変でした」と苦労を語る。そうした日課がきっかけで、麦を飼い始めてから、加藤さんの生活リズムは整っていった。

「夜は、光を遮断するためにかごに布をかけるんですけど、朝にその布をはずさないといけない。餌や水をあげることも欠かせません。絶対朝起きないといけなくなりましたね(笑)。それに、朝7〜8時にはピーピー鳴くので自然と起きてしまいます」


加藤さんの手のなかも大好きなスポット。「気持ちいいみたいで、すぐ目をつぶってしまいます」

換羽期に、少しでもストレス発散できるようにと買い与えた粟の穂をひたすらつつく。


 コロナ禍に突入した頃には、一年に一度羽根が生え変わる換羽期に。「常に、体じゅうがかゆいせいか、手を出すと噛みついたり、性格が荒くなってしまったんです。餌は散らかすし、羽根は飛び散るし、本当に壮絶でしたね(笑)」。そこで、少しでも麦を癒やすために、加藤さんは粟の穂を調達。それをつつくことでストレス発散になり、換羽期を無事終えることができ、ホッと胸をなでおろしたそう。そんな経験も相まって、思いもよりいっそう強まった。

「やっぱり忙しいと、会えないときもあるので、本来はこれくらいほぼ一日一緒にいたほうが幸せなのかなと思いますね」

 レコーディングのスケジュールが続いても、加藤さんは献身的に世話をすることが欠かせない。時に、水遊びが好きな麦のために、起床すると水が入った箱をセットしたり、餌の殻を丁寧に取り除いたり……。小さくも大切な行動ひとつひとつが、麦を飼おうと決心した際に心に刻んだ、生き物を飼うという「責任」の証しなのだろう。「当然のことですが、どのペットもちゃんと責任を持って飼わないといけないんですよ」と熱くなる。

 親子のようでありながら、麦との関係はまるで友達のよう。携帯電話に夢中になっているとつつかれるほど、麦も加藤さんと遊ぶのが大好き。

「嫉妬深いですね(笑)。一日に1〜2時間くらいはかごから出して、しっかり遊びます」。すると、加藤さんの後ろをどこへ行くにも飛んでついてくるのだそう。そんな愛すべき麦との特別なひとときについて尋ねると、顔がほころんだ。

「ギターの旋律に合わせて麦ちゃんが歌う昼下がりですね。クサいですけど、共通する宝物は、ギターかな。セッションするなかで生まれた『Afternoon in Ninh Binh』という曲もあるし、音楽を通じてつながった思い出がいっぱい詰まっています」

「Afternoon in Ninh Binh」MIZ 『Ninh Binh Brother's Homestay』収録曲

麦とのセッションから「Afternoon in Ninh Binh」が誕生。麦の鳴き声のようなさえずりを入れたいと、ベトナムの湖のほとりでフィールドレコーディングした。自然を感じるメロウな一曲。 

Profile 

加藤成順/ミュージシャン
東京都八丈島出身。MONO NO AWAREとMIZのギタリストを担当している。音楽活動だけでなく、数々のブランドのルックブックや雑誌でモデルとして登場し、写真展を開催するなどマルチに才能を発揮。

 

「僕は桜文鳥の麦。成順くんは昨年の9月から育ててくれているよ。一緒にギターに合わせて歌うのが大好き」
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