私たちだって語りたい!! アクションだけじゃない!どう観るか、が問われる傑作|NO.03 丸山佑香さん

コンマ何秒しか映らないところまできちんと作ってある

Ⓒ2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS(BVI)LIMITED

人生で同じ映画を3回観に行ったのは初めてですが、その理由は細部のこだわりを見たかったから。たとえば〝人食い男爵〟のカフスボタンが乳首になっていたり、ウォーボーイズもよく見ると一人ひとり個性があって、人となりがある。私も仕事では写るものに人となりが出るようにしたいと思っているので、勉強になりました。特にストーリーがあるスタイリングではその人の性格――たとえばハンカチを持つ人か、タオルを持つ人か、きちんとたたむ人か、ぽんと置く人かを考える。それで「アイロンをどのくらいかけるか」が決まってくるし、この映画もそういうコンマ何秒しか映らないところまできちんと作ってあります。とことん諦めないことって大事なんだな、と思いました。

キャラクターで印象的だったのは5人の妻たちの美しさです。彼女たちが砂漠で水浴びをするシーンがいちばん好き。彼女たちの衣装も布一枚の美しさがあって、しかもそこにワークブーツを履いていたり、スタイリングも素敵。あと、それまでばさばさの髪だったのが、後半にバイク乗りのおばあさんたちと会ったあとは髪の毛を編んでいる。たぶん三つ編みヘアのおばあさんと仲よくなって、編んでもらってるんです。何度も観るとそういう小さな変化にも気づいて、面白さがふくらみます。

SPUR2015年12月号掲載

マックスのサーマルのシャツの破れ具合、首回りの感じもいい。革ジャンにこだわるのは、輸血用チューブをつけるというストーリーとも関わっているし、ジョージ・ミラー監督自身、どんなに暑くても革ジャンを脱がない人でもあるから。ポリシーのある人がものを作るって、きっとそういうことなんだと思います。ジョージ・ミラーは70歳ですが、この映画ではビジョンを形にするのに現代の技術を使ってベストを尽くしていて、同じものづくりをしている身としては「常に勉強してるんだろうなあ」と感心しました。若い力を借りる、柔軟な心がある。続編が作られるなら、仕事をいったん休んで、製作部隊に入れてもらいたいくらい! とにかく現場を生で見てみたいです。

SPUR2015年12月号掲載

Ⓒ2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS(BVI)LIMITED

スタイリスト 丸山佑香さん

1978年生まれ。東京都出身。本誌をはじめ、数々のファッション誌、広告で活躍。アーティストの衣装も手がける。自らプロップも製作し、その独自の世界観に定評がある。

SPUR2015年12月号掲載

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